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#1日3アルバム開拓 2023/7/7

お通し

今日は七夕


27. From Gagarin`s Point of View - Esbjörn Svensson Trio

 通称、E.S.T.。スウェーデンのピアノトリオ。先日、取りあげたRémi Panossian Trioが影響を受けたとされるアーティスト。1999年のアルバムながら、全く古さを感じさせない。『The Return of Mohammed』とか、今の曲って言われても絶対わからない。
 基本はピアノトリオで、そこに加えてテクスチャに対するこだわりと挑戦をする。そうした傾向をタイトル曲『From Gagarin`s Point of View』や『Subway』から感じる。その一方で、こうした楽曲はあくまでシンプルなピアノトリオをダレさせずに、聴かせるためのインタールード的なモノであって、主軸ではないのかなとも感じる。しかし、そうした楽曲以外でも、フレーズ一つや各パートの絡みなどに挑戦が確かにある。
 Rémi Panossian Trioでも感じる事だが、あえてパワーコード的な5度の響きを前面に押し出して緊張感を出すみたいなことをよくやってて、それがいい意味でトラディショナルなジャズっぽさから距離を取るのに一役買っているように感じる。『Dodge the Dodo』とかはサウンド面でのロックを始めとした他ジャンルとの接近を感じる。
 今どきのピアノトリオでもこういう手触りのアルバム多いけど、もう四半世紀近く前にこの形が確立されていたことに驚くと共に、未だにフレッシュなことにさらに驚く。直接的な言及こそなされていないと思われるが、日本の現在のインストゥルメンタルシーンに与えた影響はものすごく大きいと思われる。そして、この中の純粋なピアノトリオ成分ベースにコミカルにしたのがH ZETTRIOで、そうじゃないジャズから離れる方面の要素を、もう一段ポップに、そしてロックに振ったのがfox capture planやSANOVAあたりなのかしら…みたいな考察もできる。なんか、系統樹の見晴らしが急によくなってきた。

28. The Bad Plus - These Are The Vistas

 The Bad Plus。こちらはアメリカのバンド。現在は紆余曲折を経て、バンドの形態そのものが変わっているようだが、比較的編成が近いであろう初期の『These Are The Vistas』をチョイス。こちらも、Rémi Panossian Trioが影響を受けたとされている。多分、The Bad Plusの方が影響としては強そう。
 一曲目『Big Eater』からE.S.T.とは違うフリージャズ的な要素の強さを感じる。直接的なメロディーラインの快楽というより、構造やハーモニーやリズムで意表を突く事による快楽の比重が高い。積極的にポリリズミックな展開で進んでいくのがかなり好き。プログレっぽいリフや、超テクを見せつけるという意味では、それこそH ZETTRIOとかもここら辺の味を今やっている印象がある。『Smells Like Teen Spirit』とか『Boo-Wah』とか、特にそういう傾向が強い。
 もはや、とげとげしささえ感じるような演奏もあって、変な言い方だが「辛口なピアノトリオ」である。『Film』とかはどちらかというと繊細さが引き立つが、アルバム全体の印象としては、これでチルできる人はあんまりいないだろう。喫茶店とかでも絶対に流せない。その一方でライブやフェス映えする、他のバンドとは一味違った派手さを持っているところが、当時革新的だったのかもしれない。ちなみに私はこういうのが大好きです。劇薬クレイジートリオ。
 さて、雰囲気や構造であえて類型化してみてはいるものの、根本的にプレイヤーが違うという話は大きい。各プレイヤーが持っているフレーズの引き出しが当然違う上に、コードの展開の仕方や曲の着地の仕方は各プレイヤーの手癖によって大きく変わる。結果、曲の仕上がりが変わる。ピアノトリオの世界はやっぱり奥深い。
 その一方で、各プレイヤー皆互いのことを聴いていて、いくら「自分の引き出し」と言っても、そこから醸造されたものに過ぎないので、みんな「面影」はめちゃくちゃある。

29.biotop - jizue

 みんな大好きjizue。とは言いつつも、fox capture plan(以下fox)の方が私は聴いてきたので、意外と触れたことがない。ちなみに、かつて現foxドラマーの井上司氏が正メンバーだったよう。ここらへんのバンド、界隈が近すぎて人被ってるのおもろい。
 海外のバンドを聴いてから日本のバンドに戻ると、根本的に曲の構成が違う。どちらかというと、一つのコードでソロを回すわけでもなく、AセクションBセクション、そしてテーマとしっかり展開がある。ちゃんと段取りがあるし、曲の尺も決まっている。こういう構成になるの、ヤマハ音楽教室の教育カリキュラムが普及している事と無関係ではない気がするが、推察の域を出ないのでここではあまり触れない。
 『stain』とかは、チック・コリアの『spain』をオマージュしたフレーズが入ってておもしろい。ここまで露骨にフレーズを借りてくるのアリなんすね。『brink』とかは、よりロック色が強く出ている。ビートの取り方がでかいというか、スタジアムとかで爆音で聴きたい。ここまで来るともうかなりピアノトリオからは離れてくる。そもそも、ギターがいるので上の2バンドやfoxと決定的に違うわけだが…。今作の印象としては、ジャズというより、どっちかというとマスロックとかの要素が濃い。すごくライブ向きだと思う。
 jizue、どっちかというとおとなしいイメージがあったので、かなり印象が変わった。バンドのテンションとしてはLITEとかの方が近い。

30.ひろがるスカイ!プリキュア~Hero Girls~

 プリキュアシリーズの最新作、『ひろがるスカイ!プリキュア』のオープニング。この手のニチアサ楽曲は本当に侮れないと思っている。戦隊のOPとか普通に大好きな曲多い。純粋なロックサウンドにストリングスマシマシみたいな音が結構好きなので。
 さて、作品に関して軽く触れておくと、主人公が青系だったり、自分のことを「ヒーロー」と称していたりと、かつての「かわいいヒロイン」だけではない傾向が強まっていると聞く。何より、今年のレギュラーキャラには、男の子のプリキュアが出てきているらしく、これは結構な驚き。現実的に考えて、当然いてもおかしくないよねということでいい傾向だと思います。
 そんな本シリーズの楽曲は、例年に増してサウンドの傾向が戦隊シリーズに寄っている。ただ、それを女の子らしさだの男の子らしさだのと繋げるのはたぶん違って、普通に「ヒーローをテーマにしたから、ヒロイックなサウンドになった」ってだけな気がする。「らしさ論」と「かっこいい女の子」がいることは別でしょうし。
 ゴセイジャーのOPとか好きな私にとっては、これだよこれこれ!という感じ。ED『ヒロガリズム』のブラスのミックスがやけにリッチというか、ギラギラしてないものの前に出てくる感じで好き。小さい子も観る番組だからこそ、こうやって手を抜かないのはすごくいいこと。
 子供だましでは子供はだませない。大人が本気で良いってものを与えてあげるのが大切だと思います。

 


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