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丁寧に大切に、慈しみながら終わりに向かう日々を過ごしていく

電子カルテを導入して一週間が経ちました。

まだ新しいことへの混乱が続いていますが、みんな少しずつ慣れて、これが当たり前の日々となる時が近いうちにくるでしょう。

そしてこの電子カルテの導入は「終わりの始まり」でもあります。

今まで当院では「患者さんは断らない」という院長の方針で、人数を制限したことはありませんでした。
「お世話になった先輩の先生から、来てくれる患者は絶対に断るなと言われたから」
と院長がいつも言っていました。
そのため冬の忙しい時期は20時過ぎまでかかったり、土曜日は午前中のみの診療ですが休憩なしで15時過ぎまで、なんてことも当たり前でした。

大変でしたが、共に頑張ってくれたスタッフに支えられ、来てくださる子供たちの笑顔や成長していく姿、親御さんからの暖かな言葉に大きな力をもらって頑張ってこれたのだなぁとしみじみとありがたく思います。

しかし、コロナ禍の忙しさなかで初めて院長が「もう歳だし疲れちゃったから、人数を制限させてもらうことにするよ」と言いました。
今まで一度も言われたことがなかったその言葉に驚いたのと同時に、だいぶ疲れていそうだなと前から感じていたので、そうだよなぁと納得もしました。
今までの信念を変え、自分の身体の変化を受け入れて決断したことはきっと容易なことではなかったはずです。
その思いを私もそのまま受けとめました。

院長は見た目が若いので気付いていませんでしたが、会社であれば定年退職している年齢です。
一昨年くらいからこれからのクリニックをどうしていくのかを話すようになり、進んだり戻ったりしながらも、少しずつですが着実に前へと進みつつありました。

人数を制限したこともその一環となり、また一歩前へ進めていくことになっていくだろうと私の心の中で静かに受けとめていました。

そして電子カルテの導入は、今後の継承がスムーズにいくためのもので、一気に動きが加速された感じがして、もう止められないところまできた覚悟ができました。

そんななか、当院をずっと支えて下さっている会社の方がみえて、患者さんを増やすためにイベントをやりませんか、と提案されました。

その方に今の状況をお伝えしたところ、しばらくの沈黙が続いた後で
「もう拡大していく時期ではなくなったと言うことですね。」
と息を吐きながら静かに小さな声で仰いました。
その沈黙と静かな言葉にはその方から私たちへの労りの思いや、共に今の状況を受けとめ覚悟してくれた思いがじんわりと、でも確実に伝わってきました。

そしてその静かな言葉が私の心の中にゆっくりと拡がっていき「終わりの始まりが、始まったのだ」と深く実感しました。

終わりの始まりへ、寂しさもあるけれども今まで充分に仕事をやりきってきたと感じているので、私がこの時がここでの最後だと思う時まで、今までのように私は私なりに全力を尽くして目の前の仕事へ取り組んでいくでしょう。

仕事帰りに見た夕日がとてもキレイで、1日の終わりの美しさがクリニックの終わりに重なり、あぁ最後をこんなふうに美しく輝きを放ちながら終われたら良いなと心から思いました。


そして夕焼けの後には夜になり月と星が輝き、また朝日が昇り新しい1日が始まります。
わたしの人生も、看護師という一つの役割、仕事を終えるだけで、わたしそのものが終わるわけではなく、また新しい人生が新たな輝きとともに始まっていくことでしょう。

終わりの始まり

新たに始まっていくこと。

どちらも今の私にはとても大切で。

だからこの時期を丁寧に大切に、慈しみながら過ごしていきたいなぁと思うのです。



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