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家庭料理短編「こっこちゃん、何食べたい? 第三回 ステーキ!ステーキ!素敵!の巻」

これは、こっこちゃんという元気な女の子と、その保護者のおとうちゃんが、仲良くお食事をする、ただそれだけのお話です。でも、それが何よりだとも思うのです。どうぞ、気楽にお付き合いください。お料理の作り方もありますので、よかったら参考になさってください。

≪主な登場人物≫
こっこちゃん・・・小学校三年生の女の子。好物は肉と甘い物。
おとうちゃん・・・こっこちゃんの保護者。つまり、おとうちゃん。執筆業。とりあえず生活に困ってはいないけれど、余裕があるわけでもない。


ある日のこと、おとうちゃんが書斎で仕事をしていると、こっこちゃんがやってきて言いました。
「おとうちゃん、ステーキ・パーティしようや!ステパじゃ!」
こっこちゃんの眼はガチでした。よだれは垂れる寸前…。
「こっこ、急にどうしたんだい?」
おとうちゃんは動揺しました。

こっこちゃんはお肉が大好きです。
お肉のこととなると目の色が変わります。ギラギラしています…。
これには訳があります。こっこちゃんが生れたお家は、今のおとうちゃんの家ではありません。実はこっこちゃん、いわゆる里子なのです。

生まれたお家では、誤った健康観を盾に子どもの食費をケチり、滅多にお肉を食べさせてくれませんでした。
おまけに大豆などの植物性のタンパク質も極端に不足していました。
肉食には賛否両論あり、考え方も色々ですから、肉が無いことが必ずしも悪いとは言えません。しかし、子どもには体の成長の為にタンパク質が必要です。それが不足していたのです。
そのため、前のお家ではこっこちゃんは栄養失調で、貧血気味。いつも病気がちでした。
しかし、実のパパとママは「お前は体が弱い!」とコッコちゃんを責めるのでした。ストレスがあると、たんぱく質は余計に大事になるという悪循環…。
もはや残酷物語です。

しかし諸般の事情で、アレコレあり、赤の他人のおとうちゃんが里親になり、栄養事情は良くなりました。
おとうちゃんはごく普通の家庭で育ちましたので、お肉が食卓に並ぶのも珍しくはありません。普通の食習慣です。

ある日のこと、夕飯に牛肉のステーキを出しました。こっこちゃんは興奮しました。
「これがビフテキいうやつかぁ、美味しなぁ!」
お肉料理でも、特に牛肉のステーキが気に入りました。
そして「月に一度はステーキを食べさせること」という約束を結ぶことになったのです…。

そう、こっこちゃんの眼がガチだったのは「おとうちゃんよぉ、そろそろ今月も約束のステーキ、食べさせてやぁ…」という催促だったのです。

こっこちゃんは牛肩ロースの厚切りが好きです。
サーロインとか、ヒレじゃないのです。
一度、こっこちゃんのお誕生日にサーロインを買ってきたことがあるのですが、「とても美味しいけど、なんだか食感が単調だね。いつものが良いかな…」と遠慮がちに言いました。
それ以来、ビフテキは肩ロース一択になりました。
肩ロースは肉質が均一でなく、スジもあります。
でも、その分、食感にバリエーションがあるとも言えます。
安いからと言って、バカに出来ない利点もあるのですね。
大人はどうしても、価格や希少価値、美食家の意見に左右されてしまいます。
「肩ロースが美味しい!」子どもながらの、先入観のない好みです。
他人の言葉に左右されない、自分だけの物差しを持っていたいものですね。

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さて、肉を焼くだけの料理であるステーキは焼き方が何よりです。
「肉は室温に」というのは常識ですが、帰宅後すぐに調理かからないと、こっこちゃんが回りながら急き立てます。そして眼はガチです。

室温に戻す時間を省いて、焼き方に入るにはどうしたらよいか?
おとうちゃんは一つの答えを見つけ出したのです。それは魚焼きグリルで焼くということ。

ピータールーガーとか、ウルフギャングなどの米国一流ステーキハウスにヒントを得た方法です。いろいろ試しましたが、家庭でも確実に美味しく作れる方法です。さあ、焼きましょう!

1. 肉に重量の1%強の塩を振る。好みで胡椒、ガーリックパウダーも。
2.魚焼きグリルの網にアルミホイルを敷き、肉をのせる。弱火にかけ、肉を温めるように火をいれる。

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3. 強火で焦げ目をつける。ひっくり返して両面焼き、焦げ目がついたら火を止め、肉を皿に取り出して休ませる。肉を休ませている間に、ソースを作る。

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4. フライパンにバターと、グリル網に敷いていたアルミホイルに残った肉汁、醤油、みりん、塩・胡椒等で味を調えます。※溶かしバターだけでも美味しいです。
5. 休ませていたステーキを切り分け、お湯で温めた皿に盛り付け、ソースをかけて出来上がりです。※皿は必ず温めておきましょう。

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「こっこ、ステーキが出来たよ。さあ、召し上がれ!」
「あぁ、美味しなぁ。ステは最高よぉ。おとうちゃん、いつもありがとな。来月もヨロシク頼むわ」こっこちゃんは親分のような目でそう言いました。

食べ終わるとすっかり満足し、お部屋で寝てしまいました。
今月も約束を果たせて、おとうちゃんも安心です。

肉の食べ過ぎは良くありませんが、こどもの成長には良質のタンパク質が欠かせないということは覚えておきたいものです。とても大事な知識です。


お読みいただきありがとうございます。私のささやかな文章を見守っていただけたら嬉しいです。