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家庭料理短編「こっこちゃん、何食べたい? 第一回 煮豚じゃなくて焼き豚だよ!の巻」

これは、こっこちゃんという元気な女の子と、その保護者のおとうちゃんが、仲良くお食事をする、ただそれだけのお話です。でも、それが何よりだとも思うのです。どうぞ、気楽にお付き合いください。お料理の作り方もありますので、よかったら参考になさってください。

≪主な登場人物≫
こっこちゃん・・・小学校三年生の女の子。好物は肉と甘い物。
おとうちゃん・・・こっこちゃんの保護者。つまり、おとうちゃん。執筆業。とりあえず生活に困ってはいないけれど、余裕があるわけでもない。


こっこちゃんは小学校の帰り道に、いつも商店街を通ります。
今日も商店街を歩いていました。すると、何やら好いにおいがします。
香ばしく甘いような…。
見ると中華料理屋さんが店先でテイクアウト用のチャーシューを売っていました。その匂いだったのです。

「やぁ、こっこちゃん、小学校の帰りかい?ちゃんと勉学に励んでいるかね?」
中華料理店のおじさんが話しかけてきました。
「こんにちは、中華屋のおじちゃん!その通り、学校の帰りよ!今日も勉学に励んだよ。こっこは学業が好きなんよね!」こっこちゃんは元気に答えました。
「そうか、感心、感心!活躍を期待しているよ。はばたけ若人よ!」
「おぉ、はばたくよ、見てて!ところで中華屋のおじちゃん、そのチャーシュー良いにおいだね。それにつやつやとよい照りですねぇ…。このあいだ、うちのおとうちゃんが買ってきたラーメン屋さんのチャーシューとはだいぶ違う気がするよ!」
こっこちゃんは中華料理屋さんのチャーシューが気になります。見ていたら、よだれが出てきました。

「さすが、こっこちゃん。目の付け所が良いね!ラーメン屋さんのチャーシューは煮豚を出すお店が多いけど、中華料理屋のは焼き豚がふつうなんだよ。
加熱の温度と時間によってもお店の特色が出るんだけど…。一般に煮豚は煮込むから、柔らかくトロトロに仕上がる美味しさ。焼き豚の方はタレに漬けた肉を焼き上げるから、旨味と香りが凝縮した美味しさ。おおまかに言うとそんな特徴があるんだよ」おじさんが説明してくれました。
「ほぉ…、そういうことなのね。よくわかったよ。ありがとう、中華屋のおじちゃん!」
こっこちゃんは良いことを教えてもらって、上機嫌です。おとなの、お仕事の話が大好きなのです。

「おとうちゃん、ただいまー!」こっこちゃんが玄関で元気よく、ただいまのご挨拶です。
小学校も楽しいのですが、お家に帰ってくるとほっと一息、安心します。
安心できるお家があるって、幸せですよね。

「お帰りなさい、こっこ。今日はどうだった?」おとうちゃんがお出迎えです。
「いやいや、すごいことを知ってしまったよ、おとうちゃん!」
こっこちゃんは、帰り道での中華料理屋のおじちゃんとのお話しをしました。
チャーシューには煮豚と焼き豚があるということ、そして中華料理屋さんの焼き豚がとても美味しそうだったということを。

「そうか、じゃ夕飯は焼き豚にするか!中華屋さんへ買いに行こう!」おとうちゃんが言いました。
「おとうちゃん、気前いいなぁ!どうしたん?無理はしなくてもええんよ。」
さきほどの美味しそうな焼き豚が食べられるので、こっこちゃんはとてもうれしいです。でも、家計も少し心配です。
おとうちゃんは言いました。
「こっこはそんなこと心配しなくてもいいんだよ。焼き豚くらい、こっこの為ならエンヤコラよ!」
こっこの為なら!こっこちゃんはますます嬉しくなりました。

「おじちゃん、焼き豚ください!」
「おぉ、こっこちゃんとおとうちゃんか!毎度あり、味玉サービスしとくよ。これ食べて、はばたけ若人よ!」
「ありがとう、中華屋のおじちゃん!」
おとうちゃんは、こっこちゃんが街の人に優しくされているのを知り、とても嬉しくなりました。

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そして、夕飯です。
焼き豚を切り分けて軽く炙り、タレを少しかけ、それにネギを添えます。
中華料理屋のおじさんがサービスしてくれた味玉も盛り付けて、さあ、いただきます!
「おとうちゃん、焼き豚は美味しなぁ!」
「そうだねぇ、こっこ。中華屋のおじちゃんはさすが職人、プロの味だね。」
二人仲良く焼き豚を食べました。職人の技に大満足です。
よかったね、こっこちゃん。

プロの職人というのは、長年にわたり研鑽を積みます。また一日の大半、その仕事のことを考えています。素人には及ばない領域にいるのです。
お店の料理には、そうして培われたプロの技術という価値があるのですよね。
プロの味を楽しむのも良い経験になります。
無理のない範囲ではありますが、子どもには少しでも良き思い出をのこしたいものですね。

**焼き豚を作ろう**
プロの味は素晴らしいのですが、家庭の味もまた良いものです。
そして、家庭の味もよい思い出にはかかせません。
では、家庭での作り方をどうぞ!

≪材料≫
豚肩ロース・・・1kg(500gのブロックを2本)
醤油・・・大さじ6
砂糖・・・大さじ5
料理酒・・・大さじ4

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今回は香味づけに以下のものを使いました
ニンニク・・・1片をつぶして
生姜・・・1mmにスライスして3~4枚

※八角や五香粉はお好みで。苦手なら入れなくてもよいです。

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≪作り方≫
1.豚肩ロースをタコ糸でしばり、形を整えます。

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2.醤油、砂糖、料理酒を鍋でひと煮立ちさせます。砂糖が溶けたらよいです。
3.豚肩ロースと2.の調味液、つぶしたニンニク、ショウガのスライスをビニール袋にいれ、空気を抜いて冷蔵庫で3日~7日漬けておきます。空気を抜く時は水を張ったボウル等にいれると簡単です。

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・・・3~7日後。
4.オーブンに入れる前に豚肩ロースを室温に戻します。室温にしている間に、漬け汁を煮詰めてタレを作ります。アクを取りながら煮詰めます。
5.オーブンを200℃に予熱。オーブンが温まったら3.の豚肩ロースを入れて10分。
その後、オーブンを180℃に下げて35分。途中で10分に一回程、漬け汁を煮詰めたタレを塗りながら焼く。
串などを刺して、肉汁が透明になっていたら火が通った目安。
火が通ったら完成。

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お読みいただきありがとうございます。私のささやかな文章を見守っていただけたら嬉しいです。