夕日

ある日突然、未亡人。

主人が突然亡くなって、
あっという間に一ヶ月が過ぎていった。

それは余りにも突然すぎた出来事で、
まだどこかで、
ひょっこりと帰ってくるのではないかと
そんな気配を感じてしまう。

今は何かを表現できるほど、
まだ自分の中に言葉が育って来てはいない。
だが、この混沌とした心模様のまま、
うまく言葉にならないまま、
ただ思いのまま綴ってみることにした。 

残しておきたいのだ。 

目の前の当たり前の日々は、
決して当たり前ではない。

わかっている つもり だった事を、
また思い知らされた。
出会ってから25年、いつも穏やかに、
ただ私のそばにいてくれた。
こんなにも突然、その日が来るなんて。 

もっとちゃんと、話せば良かった。
もっとちゃんと、声を聞けば良かった。
もっとちゃんと、向き合えば良かった。 

もっとこうしていれば・・・。
あの時こうだったら・・・。

言い出したらとめどなく溢れてくる。

ごめんね。
ありがとう。

どうしてもっと、ちゃんと伝えなかったのだろう。

ただ不思議と、肉体はこの世から消えてしまい、
もう二度と触れることはできない今、

より一層近くに
その存在を感じ取ることができる事を知った。

声も聞こえないし、姿も見えないし、
触れることもできない。
だけどその存在を、
ものすごくハッキリと感じることができる。

どんな場所でも、どんな物からも、
その存在を見出すことができるのだと。

今ここに、見えなくなってしまった事は
とても寂しいけれど、
その存在が、消えてしまった訳ではないのだと。

寂しさをも包むような、安心感を感じたりもする。

ごめんね。
ありがとう。
私を許して下さい。
あなたを許します。

悲しいや、悔しい、寂しい、
ふとした瞬間に溢れでる涙は止められないし、
止めなくても良いのだろう。

痛みを引き受けた上で、
そこに同時に愛を見出すこともできるのだ。

矛盾したいくつもの想いを抱えたまま、
ただここに在る今を、私を、
生きることしか出来ないのだ。

それをずっと教えてくれていたのが、
彼という存在だったのだと。
そんな風に今は感じている。

いろんな想いや、
感情が私の中を通り過ぎていく中で、
出来なかった沢山の後悔や自責の念が襲いかかり
見ている世界が歪んだとしても、

本当に大切にしたいのは、
もっとあったかくて、優しさに満ちた大きな愛が
確かに存在したということであり、

いつでもそこに戻ってこれるという事を
忘れないでいよう。

彼の分まで生きる。
そんな風に背負うわけでもなく、

ただ、私を精一杯生きていく。

彼が残してくれたもの、感じた全てを糧として
矛盾だらけのカオスを抱えたまま

このままの私で
私を生きていく。

過去に囚われ、過去と向き合う時間よりも、
未来を見つめ、未来を描く時間に
心を、私を、動かしていきたいのだ。

そうやって生きたい。


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