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坂本城(滋賀県) 城郭訪問記#001

訪問日:2023年12月28日、2021年11月14日、2020年9月20日
滋賀県(近江国)


【城の概要】

 1572(元亀3)年、明智光秀によって築城された。織田政権下で志賀郡の統治を任された光秀の居城であった。本丸が琵琶湖に面した水城であり、当時の宣教師フロイスの記録によると、安土城に並ぶ豪壮華麗な城であったという。また、公家の吉田兼見の記録によると、大天守と小天守をもつ城であった。1582(天正10)年、本能寺の変直後の山崎の合戦で光秀が敗れると、坂本城も落城した。その後、秀吉政権下で丹羽長秀によって再建されたが、1586(天正14)年に大津城ができると、統治の拠点はそちらに移ったため、坂本城は廃城となった。

【城のみどころ】

1.湖中に眠る石垣(根石)
 この城の遺構としてもっとも有名なものは、琵琶湖の湖底に沈む石垣(根石)である。ふだんは水面下にあるために見ることはできないが、琵琶湖の水量が少なくなると水面から姿を現すことがある。この石の下には胴木が確認されたことから、今はなき坂本城のうち琵琶湖に面する部分に組まれた石垣の根石と判明した。完全に市街地化されて、跡形もないように思われた坂本城で唯一、かつての場所にそのまま残る遺構である。ただし、琵琶湖の水位によって、その見え方はまったく異なってしまうことは心しておきたい。

2020年 9月 20日撮影 根石の列の一部が水面から顔を出している程度
2021年 11月 14日撮影 横に並ぶ石列も水面から顔を出している
2023年 12月 28日撮影 湖面に面した石垣の根石が完全に水面の上に出ている
湖面最前部の石列 この下には胴木が確認できるはずだが…。(2023年 12月 28日撮影)
現地の案内板より

2.移築門
 坂本城から移築されたと伝わる門は2つある。
 1つは西教寺の総門である。西教寺では、いつの時点で移築されたのかは定かではないが、古くから坂本城の大手門を移築したものだという話が伝わっている。また、この西教寺は、明智光秀とその一族の菩提寺でもあり、境内には、明智光秀やその妻・熙子の墓所がある。
 もう一つは、聖衆来迎寺の山門である。この門は坂本城にあったどの門であったのかは判然としないが、近年の解体修理にともなう調査によって、坂本城からの移築である可能性が極めて高くなっている。
 なお、これらの門は(移築が事実だとした場合)、丹羽長秀により再建され、杉原家次、浅野長吉へと受け継がれた第二期・坂本城のものである。

西教寺 総門(2020年 9月 20日撮影)『麒麟がくる』放映年だったので賑わっていた
明智光秀とその一族の墓所 西教寺境内(2020年 9月 20日撮影)
光秀の妻・熙子の墓 西教寺境内(2020年 9月 20日撮影)
聖衆来迎寺 山門(2021年 11月 14日撮影)

3.城跡碑
 坂本城の城跡碑は2つある。
 1つは、二ノ丸跡の西南端にあたる、北国海道(旧道)沿いにある。1915(大正4)年に下阪本村によって建てられたものである。
 もう1つは、坂本城址公園の入口にあり、公園整備時に建てられたものである。この公園は、かつての坂本城内ではなかった場所にあるが、明智光秀の石像がある。また、この公園内には、列状に石を積んであるものが見られるが、これは坂本城の石垣でも遺構でもないので注意が必要である。

北国海道沿いの城跡碑 (2020年 9月 20日撮影)
坂本城址公園入口の城跡碑 (2020年 9月 20日撮影)
坂本城址公園内の明智光秀像 (2020年 9月 20日撮影)
坂本城址公園内のフェイク石積 (2020年 9月 20日撮影)

4.明智塚
 坂本城内に位置する塚。坂本城の戦いで戦死した将兵を祀った、または坂本落城時に光秀の脇差名刀・郷義弘などの宝物を埋めた、などという伝承がある。私有地ながら、地主の好意で見学が可能となっている。

明智塚 (2020年 9月 20日撮影)

【アクセス】

JR湖西線 比叡山坂本駅 下車 徒歩20分(湖中石垣まで)
 
坂本城址公園、坂本城跡碑、明智塚は、湖中石垣から徒歩数分の圏内にある。
聖衆来迎寺は、湖中石垣から徒歩25分ほど、聖衆来迎寺から西教寺へは徒歩30分ほどかかる。

県道558号線から、この看板を目印に湖畔へ向かう。『麒麟がくる』の放映時はきれいだったが、月日を感じる姿になってしまっていた。(2023年 12月 28日撮影)
当時は、湖畔に近づくとこんな看板があったが…。(2020年 9月 20日撮影)

【訪問履歴】
 ① 2020年9月20日:大河ドラマ「麒麟がくる」にあわせて訪問
 ② 2021年11月14日:琵琶湖の水位が下がったと聞いて訪問
 ③ 2023年12月28日:琵琶湖の記録的な渇水と聞いて訪問


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