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BranCo!優勝チームのボツ案全部公開する。

tomoです。BranCo!2020で優勝しました。最近BranCo!にちょっと関わっていて、今年出るひとの参考になったら&備忘録的な意味も込めて、ブレストで出てきた案を全部公開します。メモを見返すのけっこう懐かしくて楽しかったです。ちなみに二次・決勝での案はBranCo!公式サイトから見れます。(後半は決勝での案を知ってる前提で話してるから、先に決勝の案を見ておいたほうがいいかも)


第一回会議(10/26)

第一回は自己紹介かねてみたいなかんじだったので、特にはアイデア出ていません。出てきた論点としては、

・秘密ってかわいくておしゃれなもの?それとも生生しいもの?
・検索履歴って秘密だよね
★なんで匂わせってするの?→話題の始点になるから。
・開示したい秘密と隠したい秘密がある
★ほのめかす秘密って、秘密っていうパッケージが目的になっている?秘密を手段にしている場合と、秘密であることが目的になっている場合(この際内容を本当に隠したいかはあまり関係ない?)
★なぜ隠すのか?→自分だけ、自分たちだけの世界を一面的に価値判断されたくないから→自分たちの世界を守るための「秘密」
・大人と子供の秘密。子供のころのほうがだれにも言えない秘密って多くなかった?秘密は通貨だ。
・女子トイレー化粧ー秘密
★publicとprivateの概念。「化粧=private」という規範があるから電車内の化粧は問題視されてる。private=秘密?
・内緒と秘密の違い。内緒は行為だけ。秘密は存在もさす。内証=心のうちに真理をさとるという仏教用語。秘密は秘めた恋心?
★カミングアウト=秘密。家族に言えない秘密。
・秘密によるセルフブランディング
★生理。タブーと秘密。血がタブー?

みたいなかんじです。社会科学勉強してる人が多いチームだったので、public/privateの概念についてとかを考えていました。あとは化粧とか生理とか、ジェンダーにまつわる話も多かった印象。

第二回会議(11/10)

第二回はわりとアイデア出た気がする。メモの抜粋がこちら。

見ざる言わざる聞かざるのうち、言わざるだけ秘密抱えてね?問題
★キカザルイヤホン
:イヤホンにサルをつけておくと「話しかけないでね」のマーカーになる。★スマホ指の動きわかる問題とそれを解決するためのプロダクト。
★恋人の秘密貯金箱
恥ずかしくて言えないのって秘密だね
☆秘密自己分析
:自分の抱えている秘密=アイデンティティ。秘密から自己分析してみよう。
★初めて化粧をする人のためのブランド
化粧=秘密。少女が秘密を得る瞬間=初めて化粧するタイミング。
★残り香専用香水
:香水の残り香って秘密っぽい。

化粧ブランドとか香水ブランドとか考えてたけど、調べてみたらどこかしらのブランドがすでにやってて、厳しいなと思って撤退。

出てきた案でいけそうだった二つの案をまとめたのがこちら。
一つ目。

「恋人カレンダー」
【input】
秘密って聞いて何が思い浮かんだ?
→恋人関係
恋人関係って隠したいよね!(私たちだけのprivateなものにしたい)
でも……
やっぱ幸せな様子はインスタストーリーに乗っけたい……(publicなものにしたい)
仮説:インスタグラムに恋人を乗せるかどうか(その日を秘密にしておくかどうか)は、その日の重要度に関係する。
・本当に何でもない日(家でだらだら)
・レストランに行った日
・水族館に行った日
・ディズニーに行った日
・クリスマス
・記念日
・存在
Aくん:クリスマス、誕生日、ディズニーとかはあげるけど、日常の些細なものはあげない。
Bくん:家でだらだらしてるような動画もあげる
Cさん:存在すらも隠している
→どこまでが秘密(=公に明かす)かって、人それぞれみたい
たぶんこれに正解ってない。
【concept】
なんでもなかった日から、記念日まで、いろいろな日があるなか、どこまでを自分たちだけのものにするかっていうのは人それぞれだ。
でも、そんないろいろな日々のグラデーションこそが、本当に二人だけが共有する秘密なのでは?
→「二人の秘密は二人の日々の積み重ねにある」
【output】
積み重ねるカレンダー。日めくりカレンダーみたいなかんじ。
その日がどんな日であったかを色で塗る。(なにもなかった日、喧嘩した日、ごはんを一緒に食べた日、電話した日、みたいな)
それを積み重ねることで、何か月、何年か経った後に、グラデーションを楽しめる(「今月は○○だったなあ~」「先月○○ばっかだったから、今月は××してみようよ」)
二人の思い出を切りとってpublicなものにしたとしても、二人の日々のグラデーションは二人しか知りえない、秘密です。

長い!エモいかんじのプロダクトを作りたかったけど、冷静にグラデーションみたいに綺麗にならないよねってので却下。そういえば僕たちはプロダクト縛りで考えていました。アプリってダサいし。

二つ目。

「聞かざるイヤホン」
【input】
秘密って何が思い浮かぶ?
A.化粧、女子トイレ
→秘密ってプライベートのことなのでは?
たしかに、秘密とは自己と他者の間に線を引くこと
public/privateの関係ってたぶん人によって違う。
・電車で化粧する人を不快に思う
・人前で下ネタ話してるやつらを不快に思う
↑これは人のprivateをpublicに持ち込まれた、public/privateの境界が揺るがれたから起こる問題なのでは?
【concept】
人に秘密を開示されることは、private/publicの境界を揺るがされるということ=不快
これに対抗するには……
→現代の見ざる/聞かざる/言わざる
口と瞼は閉じれるけど、耳は閉じれない。
そのために使われる、イヤホン。
でもはたから見たらプライベートのアピールなのか、単に音楽きいてるのかがわからない→人のprivate/publicを気遣えるブランド
【output】
きかざるイヤホン。耳に装着するサル型のケース
それをつけている=私は今プライベートです、のマーク
他人はそれを見て、その人がprivateなのかそうじゃないのかわかる→気遣える世界へ

「耳からサルをぶら下げている=プライベートだから話けないでください」のマークにしよう!というアイデア。現状のイヤホンで行われるそれとの差別化が微妙ということで却下。

第三回会議(11/14)←書類選考

ここで第一回で出てきた生理の話を思い出す。生理の話はソーシャルグッドに繋げられそうだし(一歩間違えたら大炎上だけど)、アリかなということで考える。書類選考直前だったので、これでいこうということで提出。出したエントリーシートがこれ。

無題

生理を可視化して家族・パートナーと共有しましょう的なアイデア。七段階に分かれて~みたいなのは「学び」のときの優勝案「nml」の影響をめっちゃ受けてます。

第四回会議(11/30)

無事書類通過したということで(ちなみに一次も二次も決勝も全部一位だったので、書類も一位通過だと勝手に思ってます)、上記の生理案の問題点を考えました。具体的には、
・家族、パートナーならすでに共有できているのでは?
・生理を可視化したいか?その必要性が本当にあるか?
・そもそも七段階ってきっぱり分けちゃうのよくないでしょ(とはいえ七段階っていうギミックをなくすとプロダクトとしての面白さが一気になくなってしまう)
などですね。ただ「なんとなくいい案」感はあったので、保留にしつつ新しくいい案があればそちらを採用、という風に考えていました。このときは一次予選のスライド締め切り直前まで迷うことになるとは知らずに……。

第五回会議(12/7)

この日のブレストの内容としては、夢って秘密だよね、っていう話とか、親が子供に隠している秘密vs子供が親に隠している秘密、とか、「隠したいもののためにウソがある」とか。そしてこの日に初めて「逆秘密」という存在が出てきます。「自分すら知りえない秘密」みたいなキーワードが出てきて、そこから「それは顔だ!」というところまで出てきました。優勝案の半分くらいは出来ちゃってますね。

第六回会議(12/12)←一次予選直前

逆秘密案にするか、生理案にするかめっちゃ迷ってました。逆秘密案は、inputでの概念導入が強いかわりに、アウトプットが定まっていない。生理案はぱっと見の完成度は高いけど、inputではそこまで面白いことは言っていないし、荒も見える。いろんな人に相談したけど意見が分かれて、締め切りの二日前くらいまで悩んでいました。結局、「一次予選では完成度よりもポテンシャルをみる」という先輩の言葉を信じて、逆秘密案でいくことに。

スライド公開するのは恥ずかしいので、スライド作る前のメモを。

【input】
秘密って線を引くようなものだよね。僕は知っている。外の人は知らない。
→ここで思いました。この逆ってあるのだろうか?
つまり、僕は知らない。他の人は知っている。という秘密。
→これを逆秘密と名付けた
顔って自分で自分の顔を生で見ることは絶対にできない
=「顔は逆秘密だ」
生活者の声「人に可愛いと言われると自信になる」
これは顔が自分で見えないからこそ、他人の評価(褒め言葉)ってなんじゃないか
Q. どんな他者評価が嬉しいだろうか?→ここでも「秘密」概念が使えるのでは?
仮説:褒め言葉、パブリックで言われるよりも、秘密に言われるほうが嬉しいのでは?
検証結果:正しそう
【concept】
発見:秘密とは傘では?
傘の内側に書かれているものは、自分以外見れない(=秘密)
外側に書かれているものは、自分には見えない(=逆秘密)
コンセプト:傘の外側である顔を、傘の内側で解決しよう!
【output】
生活していくなかで、顔に自信持てない日ってどんな日だ?
→雨の日。メイクもノリがわるい。髪もうまくいかない。すぐ落ちちゃう。雨の日は自信を失ってしまいがち。そんな雨の日に、秘密の褒め言葉を。
プロダクト名:HIMEKOTO(仮)
傘のブランド。外から見ると一見普通の傘。でも、傘の内側にメッセージを書くスペースがある。
ターゲット:20代から30代の女性とその友達、パートナー、家族がメイン
---ユーザーフロー-----
友達、パートナーがHIMEKOTOを購入。内側に「かわいいよ」とか書いてターゲットにプレゼント。
ターゲットは傘をもらう。やった〜
雨の日。なんか今日憂鬱だな。ってときに
外出して傘をひらく
かわいいねって書いてある。
憂鬱だった日に、ささやかな喜びと自信を。

アウトプットは完全にやっつけで作りました。「逆秘密」という概念提案のインパクトに賭けて、一位通過か予選敗退のどっちかだなと思いながら、提出しました。ちなみにプレゼンでは5分中4分くらいまでコンセプトで、アウトプットの説明は超やっつけでした。

結果としては一位通過でした。アウトプットの完成度が高い案は他にいくらでもあったけど、インプットで強い概念提案をしてきたのは僕たちだけだったので、それが評価されたのだと思います。「まあ、僕はいらないけど」「生理的に受け付けない」とか言いつつも一位に入れてくれた審査員に感謝!

第七回会議(1/15)

さて、予選一位通過したのでこれは順当に決勝行きたいぞという雰囲気になりました。僕はめっちゃプレッシャーでおなかが痛かったです。

逆秘密っていう概念と顔の話はめっちゃウケたので続行したいけど、肝心のアウトプットをどうしようという流れ。ここで「カメラ向けられると構えちゃって自然な顔できないよね」みたいな話に。実は「ハイチーズ」よりもその三秒後のほうがいい顔してる、っていうファクトをどこかで見つける。これはいけるぞ、「シャッター押した三秒後に切られるカメラ」で優勝や!って思ったところで、iPhoneのタイムラプスがまさにその機能だったことに気づき萎える。「カメラ向けられると自然な顔できないよね」インサイトから生まれた企画がこちら。

【input】
自分の顔を見たくなるとき、それは不安なとき。そう、人は常に自分の顔が「良く見えている」かどうか不安に思っている。
それでは、「良い顔」のときってどんなときだろう?
→顔に関して忘れるくらい何かに熱中しているとき(カメラの例:カメラ向けられると顔がこわばってしまうが、シャッターきったあとが一番解放感でいい顔してる)
→顔を気にしていないときこそ、人は一番いい顔をしている。
(そしてそれを自覚できない。なぜなら気にしてないから)
【concept】
一番いい顔をしている瞬間を、人は自覚できていない。(逆秘密)
ふとしたときに、これをあとから気づかせてあげれば、wellbingなのでは?
コンセプト:「逆秘密を暴け!」
【output】
何かに熱中しているとき。
それは、人と会って話をしてるとき
そういうときに、いい顔をしている。これを撮りたいね。
でも隠し撮りはハードルが高い。理由:
1)スマホ向けられたら気にしてしまっていい顔じゃなくなる
2)自分の写真がカメラロールに残ってるのはやだ
→これを解決するカメラをつくろう!
指輪型の隠しカメラ(もっとナイスなのがあればそれにしたい)
撮った写真は指輪についたモニターに三秒間映し出される
ーーーユーザーフローーーー
Aさん(指輪持ち):Bさんがちょっといい顔してるなって気づく。指輪カメラで撮影する。三秒以内に見せる。
Bさん:自分が気づかないうちにいい顔してたことに気づく、自信がつく
ーーーーーーーーーーーーーーー
逆秘密だからこそ、不安に思ってしまう自分の顔。これを、逆秘密(自分ってこんないい顔するんだ、知らなかった)、で気づかせて自信をつけさせたい。的なコピー

問題点としては、
・いい顔って主観的なものだから「いやいや」ってなりそう
・初見以外通じなくね?
・なんかダサい
などでした。一つ目の「いい顔って主観的なもの」という問題点は、そのまま決勝案でのインサイトにつながります。

第八回会議(1/19)

引き続き、「逆秘密=顔」をどうアウトプットに落とし込むかの戦い。「かわいい」という言葉がコミュニケーションツールになってるよね、みたいな話もここで出てくる。メモに「アドベント金平糖」ってあるけどさっぱり思い出せない。

第九回会議(1/21)←完成

迫る締め切り。なかなか決まらない案。これまでずっと「どんなイかした仕組みで、逆秘密を自覚させるか」ということを考えていました。「三秒後にシャッターが切られるカメラ」とかそういうギミックのあるプロダクトが好きなので、どうしてもそういうものを作りたくなってしまっていました。

ただふと立ち返ったときに、「いい顔は主観的」ならば、それをそのまま愚直に話し合わせちゃえばいいんじゃないかなと思いました。「私にとってのいい顔」と「○○にとってのいい顔」を向き合って話し合う機会を与えるブランドは、プロダクトとしてかっこよくはないけど一番課題を解決しているのではないか。そんなわけで、決勝案「Face Poker」が生まれました。

プロダクトとしてかっこいいわけではないので、プレゼンでいかにインパクトを与えるかが重要だと思い、僕の顔面写真を54枚並べたりとかしました。決勝で調子にのって顔写真カードを配りまくった結果、知らない人がめっちゃ僕の顔面をインスタとかTwitterに載せてて笑いました。後日社員から「君の顔写真オフィスで飾ってるよ!」って報告がきました。

おわりに

以上、ボツ案とブレストメモでした。ボツ案の中では「聞かざるイヤホン」が好きです。