佐藤優の集中講義 民族問題 (文春新書)
元外務省主任分析官の佐藤優さんが民族問題について分析した本。同志社大学で行った10回の講義を下敷きにしている。
日本人は民族問題が分からない、と言われている。理由は、同質性が高いため、民族を意識することが少ないからである。自分としても民族問題を理解したいと思い、購入読了。
本書では、スターリンは民族問題の専門家であり、民族を分断・統治し、それ故にソ連をうまく統治できたが、ゴルバチョフは民族を理解していなかったので、ペレストロイカで自滅した、と分析している。ロシア革命も民族の力をうまく利用していると解説している。たしかに言われてみれば、「万国の労働者よ、団結せよ。万国の被差別民族よ、団結せよ」となっていた。
また、ベネディクト・アンダーソンの「想像の共同体」を民族を道具として表面的にしか捉えており理解出来ていないとし、アーネスト・ゲルナーに依拠して民族を解説している。
ゲルナーは、産業社会になり、均質化することによって、民族は生まれた、と分析している。均質な労働力を生むために、均質な教育が施され、それが政治単位と結びつくことにより、民族意識が芽生え民族が出来た、と考えた。
ウクライナの問題も沖縄の問題もスコットランドの問題も、本書を読むまでの理解は非常に浅かった、と反省した。グローバル化が進めば進むほど、局所的には民族主義的な動きが強まっていく、ということが分かった。