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アジアの隼 Kindle版

本書は、商社で東南アジアの赴任が決まると、先輩から読んでおくべき推薦書として挙げられているようだ。東南アジアのビジネス慣行、人間模様が描かれていて、赴任前の事前の学習には必読だと思う。

舞台はドイモイ政策(ベトナムの改革・開放路線)による外資の投資ブームに沸く1990年代のベトナムである。主人公は、邦銀(おそらく破綻前の日本長期信用銀行)の銀行員で、ベトナムに駐在拠点をつくり、ビジネスを拡大するように、本社から送り込まれる。

アジアの隼と呼ばれた香港の投資銀行が現地で急速にビジネスを拡大していく中、落ちる邦銀に働く主人公は劣勢になりながらも、懸命にプロジェクトファイナンスの獲得(シンジケートローンの拡大)に走っていく。

一方で、アジアビジネス特有の腐敗も描かれている。欧米のビジネスの常識からは考えられない賄賂が横行しており、政府職員の腐敗が相当程度進んでいる、と描かれている。共産主義と賄賂は切っても切り離せない関係にあるようだ。

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最終的には、バブルの不動産融資の焦げ付きによる本社の体力の低下とアジアの通貨危機による現地経済の崩壊により、ベトナムから日本へ帰ることになる。しかし、日本に帰ったあとも、主人公はアジアにあって日本にないもの(希望をもって強く生きる)を懐かしく思い出す。

1990年代から20年以上経過しているので、ベトナムもだいぶ豊かになっているはずだけれど、まだ賄賂がビジネスに横行しているのだろうか。小説で描かれているベトナム人は非常にやさしく、ケチで、人間らしかった。日本人でベトナムが好きで永住してしまう人がいる理由が良く分かった。また、商社の人が駐在前に本書を勧める理由が良く分かった。分厚い本だけれど、あっという間に読み切ってしまった。

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アジアのビジネス慣行を理解したいのであれば、絶対に読んでおくべきだと思う。


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