海のキリン🦒

またやっちゃった。　　　　　　　　　　　　　電車のシートに腰掛けて、向かいの窓から流れる景色を見ながら、心の中で呟いた。

好きなのにな。

折角、エレベーターで一緒になっても…なんも話せない。３０だぞ。俺。だからこそか。失敗できないっていうか…。ただ単に意気地が無いだけか…。嫌われたくないだけだ。

アイツらと一緒だな。ガントリークレーン。　　ずっと海のキリンって呼んでいた海辺にある大型のクレーンの名前。キリンのように見える。可哀想なキリン。　　　　　　　　　　　

海辺まで来てるのに、顔は海につかなくて、水が飲めない。飲めたとしても海水で飲むことができない。

目の前にこんなに波なみとあるのにな。

でも…ふと…アイツらはそれでいいのかもと。

水が飲みたいじゃないか？と思っているのは、俺でアイツらはそんなことをちっとも思ってないじゃないか？　勝手に俺が思い込んでいるだけ。可哀想だって。　　　　　　　　　　　　　　　　そうだ、あの子だって。

明日は話しかけてみよう。　　　　　　　　　　海のキリンって知ってる？って。