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利休にたずねよ

Title:利休にたずねよ
著者:山本兼一
出版社:PHP文芸文庫
感想を書いた日: 2024-05-15

あらすじ

女のものと思われる緑釉の香合を肌身離さず持つ男・千利休は、おのれの美学だけで時の権力者・秀吉に対峙し、天下一の茶頭へと昇り詰めていく。しかしその鋭さゆえに秀吉に疎まれ、切腹を命ぜられる。利休の研ぎ澄まされた感性、艶やかで気迫に満ちた人生を生み出した恋とは、どのようなものだったのか。思いがけない手法で、利休伝説のベールが剥がされていく長編歴史小説。第140回直木賞受賞作。
(小説裏書を引用)

感想

久しぶりに熱中できる楽しい歴史小説にのめり込んだ。確固たる独自の審美眼を持つ千利休は、同じく独特な感性を持つ時の権力者秀吉と対抗し、本当に美しいものを求め形にしていく。その美しさを表現する文章がなかなか素敵で、千利休だけではなく、その茶室、茶を経験する登場人物が発する感想がとてもわかりやすく言語化できてることに驚かされる。美術と言うものは個人の感性、美の基準があり共有化する事はなかなか難しいが、このように言語化されると何が素晴らしいのか茶道の経験がない私にもよく理解できる。侘び寂びの中に一点光る生命力や艶やかさ、これは現在に通じる美しさの表現の1つであると思われる。実は私は華道に少し興味を持っている。どのように生花を美しく見せるか、立体的に表現し、かつ色味を考える。こういった点において華道も素敵な芸術だと思っており、機会があれば基本的な考え方を学び、理解を深めたいと思っていたのですが、今回この小説を読み、ますますその意欲が高まりました。新しい知的、美的好奇心を刺激してくれてありがとうございます!

また、利休がなぜここまで茶道の美意識にこだわるのか。これは利休が若い頃に出会った高麗出身の女との恋。これがきっかけで、利休は茶道を極めることになっていく。この恋の話の見せ方も、この小説はすごい大胆な手法をとっており、クライマックスで利休に完全感情移入することが出来、とても楽しめた。解説で宮部さんが書かれていたが最も深く愛した女性はやっぱり宗恩ですねと言う解説・あとがも、個人的にはくすりとできた。後書きの中で紹介されている「火天の城」についても安土城建設に関わる歴史物らしく、ぜひ読みたいと思いました。

また、この本の中に出てくる戦国時代の登場人物、細川ガラシャ、細川忠興、黒田官兵衛、これらの人物に関する歴史物も改めて読みたいと強く感じました。

非常に沢山の刺激を受ける、学びの多い楽しい歴史小説でした。

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