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「〇〇された」と言われる仕事

病院に行ったときに、みんな
「お医者さんに診てもらって」
「治してもらった」
「悪いところを取ってもらった」
という表現をする方が多い。

それに引き換え歯医者は、
「歯を削られた」
「抜かれた」
という言い方が非常に多いと、常々思う。

病院いくために仕事は休めるけど、歯医者に行くために仕事休むのはちょっと、、、と言われる。
そういう人のために、いまの歯医者は平日夜遅くまで、土日も診療しとる。みんな優しい。


かなり昔じゃけど、ある人気芸人が、痛みが出てかかりつけじゃない歯医者に行ったら、歯を抜かれてインプラントを勧められたという話をしていた。
かかりつけの歯医者では、一本残っている乳歯は状態が悪いけど、頑張ってくれてるから残しましょうねとやってくれてたのに、さくっと抜かれてインプラント勧められて、詐欺みたいなもんだというような話。

こういう話ほんまによく聞くし、そう感じるのが仕方ないこともわかる。わかるけども。
いつも行ってる歯医者さんが、ほんとは抜かなきゃいけないような歯を騙し騙し残してたせいで、休みの日に急遽他の歯医者に行かなきゃ我慢できないくらいの痛みが出たとは思わんのんかな。

いまはネットの口コミとかで事前に調べて歯医者行く人も多いけど。
私は半分フリーランスみたいな形でたくさんの歯医者に仕事行っとったけど、歯医者から見て良い歯医者は総じてネットの口コミが思ったより低い。
逆に、歯医者からみて「やば」って思う歯医者は、口コミがめちゃくちゃ良かったりする。

この現象なんでかと言うと、多くの人にとって歯医者って嫌なことをされる場所で。
つまり、
"嫌なことをしない歯医者=良い歯医者"
となる。
でも、嫌なことをしない歯医者は、必要な治療もしてないんよ。

病院で、「癌ですね。手術で取りましょう。」と言われたら受け入れるのに、歯医者で「手遅れの虫歯ですね。抜きましょう。」と言われたら受け入れずヤブ医者認定する。

虫歯にも治せる段階の虫歯と治せない虫歯があって、治せないものをその場しのぎで痛みだけ抑えても、見えないところでどんどん骨を溶かして周りの健康な歯にまで悪影響を及ぼす。
それを放置しておくのは、患者さんにとっては「嫌がることをしない良い歯医者」かもしれんけど、数年後のことを考えるとそれこそヤブだと思ってしまう。
単純に人気取りと、あとは悪い物全部治すともう来なくなるけえ、今後も顧客を逃さないためにしとんじゃないかと思うほど。


そもそも、この令和の時代にもなお、口の中に関心がない人がとても多い。
たかが歯の話、命には関わりないと思ってるからこそだとは思うけど。

自分の歯が多く残っていてしっかり咬める人は健康に長く生きる。歯がなくなると老けて見えるし、口が汚れていると誤嚥性肺炎のリスクが高くなる。
親知らず1本で生死を彷徨うくらいの炎症を起こして気管切開までする人もいるし、歯が原因の炎症で死ぬ人もおる。

「抜きたくない」「削りたくない」を続けていて、ある日腫れて息できなくなって救急きて、顔や首を切ったりしてどうにか炎症落ち着けて、それでも「この歯は抜きたくないです」と。
そんなに抜きたくないくらい大事な歯なら、お願いだから常日頃から大事に大事に磨いてくれんかね、、、

誤嚥性肺炎で嚥下機能落ちて、口から食事も取れんくなって、退院後は自宅で家族がケアしなきゃだから感染リスクの高い歯は抜きましょう、という話になったご高齢の方も、、、
もうすでに歯の頭は虫歯でなくなっとるから見た目も食事もなにも関係ない状態じゃし、なにより本人は抜いてもいいと言ってるのに、家族が「歯を抜くのはちょっと、、、大事だし、可哀想で」「歯磨きもね、苦しいもんね」と言って、結局抜歯も歯磨き指導もしない結末になったりする。
誤嚥性肺炎で入院までしてもう口から食べられなくなってるのに、抜歯も歯磨きもしないで、それは結果的にまた誤嚥性肺炎のリスクを高めて今度こそ命に関わるということを、何度話しても「歯を抜くのはちょっと、、、」

もちろん、まだ残せる歯を口車に乗せて抜きまくってインプラント入れて、、、って悪徳なとこもよくみる。(大概、ものすごく目立つ広告を打っていたりする。)その人らが一番悪いとは思う。アフターフォローすることもあるけど、本当に本当に、ひどい。
けど、抜かなきゃ行けん歯を、優しさを装って放置する歯医者も然り。


そして、前述の芸人さんの話じゃけど。
「インプラント1本40万と言われたし他の歯医者だともっと安いとこもあった」と言っとったけど、インプラント40万は極めて標準的な価格設定じゃし、極端に安いとこはどこのかわからんようなもの使ってたりするところもある。
入れ歯やブリッジももちろん選択肢にはあるけど、取り外してのこまめな清掃が必要でしゃべるときに違和感が出やすい入れ歯や、隣の健康な歯を大幅に削って被せ物にしなきゃいけないブリッジよりも、他の歯に負担をかけず自分の歯と同じように咬めて違和感の少ないインプラントは、まだ若くて人前にでてしゃべる仕事をしている人にとっては一番いい選択であることは間違いない。

電化製品だってネームバリューある大手の、精度の高い製品はいい値段する。対してマイナーなとこからでとる廉価版は、安いけどやっぱり何かが違ったりすぐ壊れたりする。
それと同じだけど、みんな、電化製品にはお金出すのに歯には出さない。
口の中の環境を整えることで、どれだけのメリットがあって、逆にぞんざいに扱うことでどれだけのデメリットがあるか。

見た目を綺麗にするために前歯全部削って被せ物にしましたとかはよく見るけど。健康な歯削るのはものすごいリスクがあるのに、みんな一時的な「綺麗」のために何百万も払ってやってて。5年後10年後、なんのトラブルもなく経過する人が何割いるのか。
それなのに、悪い歯だけど奥歯で見えなかったら、お金かけないどころか治療もしたくない、となるんよな。
なにも悪い歯全部インプラントにしろと言うわけじゃない。
せめて、保険で受けられる治療は受けといた方がいい。麻酔は痛いけど、削るのはこわいけど、それでも、放置するともっと怖くて苦しい思いをすることになるかも。

もちろん、何の説明もなく治療すすめたり、納得できないまま言われるがままにするのは違うと思う。
不明な点はしっかり聞いて、説明を受けて、治療を受けた方がいい。
けど、「痛いのは嫌だから」「なんとなく歯を抜くのは良くない気がするし」「そんな何回も歯医者通えないし」とかで治療を受けないのだけはやめてほしい。

そして、どんなに忙しくて面倒くさくても、定期検診通ってほしい。
半年に一回歯医者に行くだけで、ものすごく口の中の環境が良くなる。
悪いところを早めに見つけてもらえる。
歯医者ほど、早期発見によって軽い治療で済むものはない。早く見つかれば見つかるほど、少しの時間と金額と侵襲で、治る。

我慢できない痛みが出てから、顔がパンパンに腫れてから、ではなくて、もっと口の中に関心を持ってもらえたらいいなと思う今日この頃。


写真は、何故かあまり共感は得られんけど、私はものすごく大好きで愛用しとる歯ブラシ。

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