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イッヌになりたい話

 ぼくたちは、意味や目的、価値をじぶんの人生のなかで見いだそうとする。

「大学で勉強をする意味とはなにか」
「お金をかせぐ目的とはなにか」
「就きたい仕事にはどんな価値があるのか」

 こうした問いを、大学生ならだれもが一度は抱いたことがあるかもしれない。そして、それらのものを見つけようとしてさまざまに試み、努力し、ときに挫折する。

 大学で勉強することの意味を、たとえば、膨大なほどの資料がおさめられている図書館を、自由に利用できることに見いだす学生は少なくない。

 お金をかせぐ目的があるとするならば、結婚をして、こどもを授かり、幸せな家庭を築くことを到達点として設定し、そこに向かうひとはどれほどいるだろうか。

 ある仕事に価値があると評価することは、人工知能によってとって代わられないと判断し、ほかのものと比べて優劣をつけることかもしれない。

 意味、目的、価値は、概念としてそれぞれ異なりながらも、どこかでつながりあっている気もする。これらは、あるものを選び、それと同時にほかのものを選ばないという選別をおこなうことでもある。

 方向性と言いかえてもいいだろう。どこかに頭を向けたら、どこかに背中を向けることになる。どちらかを向いたら、どちらかを向かないことになる。

 もちろん、イッヌもそのような身体のつくりをしていて、方向性をもった行動をとることを知っている。

 しかし、ぼくたちは、これらの方向性を大きなひとまとまりへと統合しようとする。つまり、いまこの場だけを生きる意味ではなく、じぶんの人生ぜんたいの意味とはなにかを問うことができる。

 すると、今じぶんがしていることを、最終的なゴールからみて位置づけようとする。自分が到達すべきところにどのような結びつきがあるのかを考えようとする。

 みなさんはただ「いまに在る」ことができているだろうか。