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「先住民の日」 マーチ〜植民地主義はまだ続いている!?

 こんにちは。ボストンは先週から急に少し肌寒くなってきました。

 さて、今回は、10月11日の「先住民の日」に先駆けて行われたデモの様子を紹介します。

「先住民の日」とは?

 実は「先住民の日」はこれまでずっと「コロンブスの日」として全国で祝日として指定されてきた。イタリア系アメリカ人がイタリア出身のコロンブスの上陸と自分たちのアイデンティティを祝う祝祭として19世紀半ばに始まった。しかし、90年代以降、「コロンブスの日」を廃止しようという動きが強まり、ボストン市は昨年「コロンブスの日」の名称を「先住民の日」に変えたのだ。

 そもそも、コロンブスは1492年にアメリカ大陸を「発見」したとされることで、多くの人に英雄視されてきた。コロンブスを祝う記念碑やコロンブスの名前に由来する土地、建物や道路はアメリカ全土にある。コロンビア大学やワシントンD.Cなどはまさにその象徴だ。ボストンにも昨年までコロンブスの銅像がChristopher Columbus Waterfront Parkという公園の真ん中に建てられていた。

 しかし、実際、金銀を求めてバハマに上陸したコロンブスらは北米大陸にヨーロッパの疫病を持ち込み、奴隷として働かない先住民の人々を大量に虐殺した。先住民を虐殺し、奴隷制を導入したアメリカ入植型植民地主義(Settler colonialism)の象徴であるからこそ、コロンブスを賛美する動きはネイティブアメリカンの強い抵抗にずっと会ってきた。

 このように、土地を収奪し、彼ら・彼女らの抹殺を図る入植型植民地主義とその美化に対抗する動きの先頭にネイティブ・アメリカンはずっと立ってきたが、近年ではBlack Lives Matter運動を始めとして、世界中に反植民地主義の流れが広まっている。例えば、昨年、私の地元の英国・ブリストルでは奴隷商人・エドワード・コルストンの銅像が引き下ろされ、港に投げ捨てられた。

 実際、昨年、ボストンでもコロンブスの銅像の頭部が再び切断されたが、市はそれまでのように立て直すのではなく、強い反植民地主義の動きを受け、ついに銅像を撤去せざるを得なかった。また、それまでは銅像の維持を求めてきたボストンのイタリア系コミュニティもコロンブスを賞賛する動きを批判せざるを得なかった。

 それでは「先住民の日」が認められ、コロンブスの銅像が撤去された以上、なぜデモをするのか、と疑問に思う方もいるかもしれない。もちろん、ネイティブの人々が集まり、「先住民の日」を祝う祝祭としての性格もあるが、それ以上に、ネイティブの人々が直面する構造的な差別を問題化し、それへの抵抗を示すためだ。

 ネイティブ・アメリカンの人々は現在、何に対して抵抗しているのか。ネイティブ・アメリカンの主催者によるスピーチと運動の要求を紹介したい。

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スピーチの内容

  ネイティブ・アメリカンの主催者はまず、ICE (入管)のRaidをやめること、そしてICEを廃止することを掲げている。メキシコとの国境は先住民の人々の土地を横断し、分断している。そして、国境沿いにおいてはICE職員によってネイティブ・アメリカンの人々が「不法移民」としてレイシャルプロファイルされ、収容されることもある。そして、これに関連し、現在、国境で収容され、強制送還されている「ハイチの兄弟」との連帯も強調された。

 また、許可なく先住民の土地で開発プロジェクトを進めるのを阻止することも重要な目標だ。先住民の土地を通り天然ガスを運ぶLine 3 パイプラインなどはもちろん、マサチューセッツ州プリマスのWeymouth project(天然ガス圧縮施設)をシャットダウンすることも要求の一つだ。これらのプロジェクトの建設・運用を阻止する動きの多くにおいてはネイティブ・アメリカンの人々がその先頭に立っている。

 そして、それだけではなく、ネイティブ・アメリカンの女性への性暴力も問題とされている。ネイティブ女性の半数ほどが過去に深刻な性暴力被害を受けたことがあり、ネイティブ女性が殺害され、行方不明になるケースは人口比と比べて不釣り合いに多い。

世界的な先住民の連帯

 「ネイティブ」という言葉では、米国の先住民とその他の国の先住民を分けて考えがちだが、このデモでは現在の国境を越えた先住民の間の連帯が強調された。もちろん、具体的な植民地主義の影響や先住民部族それぞれの経験は異なるが、植民地主義の影響を受け、土地を収奪され、社会から抹消されてきた歴史は共通している。それだけではなく、北米の先住民の土地がパイプラインの建設や「開発」のために収奪され続けているように、ブラジルなどでも先住民の土地は収奪され、アマゾンは大規模農場建設のために破壊され続けている。そして多国籍企業や政府によって土地から奪われてきた人は難民と化す。二人目のスピーカーもアメリカに移住したメキシコの先住民の方だったが、メキシコから移住してきた先住民なども米国では「ラテン系」とレッテルを貼られ、その存在が抹消されると語っていた。

 集会の最後に読み上げられたスピーチをここに紹介しておく。これはメキシコの最南部を支配してる先住民が先頭に立っている運動、サパティスタの先住民代表から頂いたメッセージだという。

"We resist to be objectified in your museums
We resist to be in your decoration in your clothing
We resist to be your 'exotic' faces as sold in TV and the media
We resist to your terrorizing of our education and our language
We resist to be categorized by your academic standard
We resist to being discriminated against
We resist to being displaced from out territories
We resist to be murdered for taking care of mother earth our forests and water
We resist to being your servants or slaves
We resist to being your folklore
We resist to being your "indigenous" person
It is the struggle of our people, our grandparents grandmothers and ancestors
After 500 years, the original peoples will live and continue to live in resistance. linguistics, culturally, territory and political. 
Taino ti!"


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fin. 



【参考】

・スピーチの動画
https://www.facebook.com/masspeaceaction/videos/412163840316905

 https://www.wbur.org/news/2020/06/17/italian-americans-say-goodbye-columbus

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