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家業を継いで10年経ちました

私は2011年2月に、実家の家業である和装履物店「辻屋本店」を継ぎました。

https://getaya.jp/president/

今年でちょうど10年。
大正元年創業、100年を超えるいわゆる老舗で、外から見たら何の苦労もなく引き継いだように見えるかもしれません。

主婦から社長へ

会社の経営などまるで素人で、専門的な勉強もしてこなかった私が四代目社長になろうと思ったのは、先代の伯父が「廃業する」と言い出したからです。
和装業界はバブル崩壊後、急速に縮小しつつあり、和装履物関係はさらに厳しく、小売店や問屋が次々と廃業していました。さらにリーマンショックの影響で辻屋本店の経営状況も悪くなる一方でした。
私自身はそれまで夫の仕事の関係で、10年ほど東京を離れておりましたが、主婦業をしながら2004年に辻屋本店のホームページを立ち上げ、運営・管理をしながら、毎月イベントを企画していました。
伯父から廃業すると聞いて、せっかく100年も続いているのに!という悔しい気持ちと共に、数年前に亡くなった母の一所懸命に働く姿が思い出され、なんとか続けたいと伝えて、当時暮らしていた福岡から急遽、戻って来ることにしたのです。

どん底からスタート

引き継いでみたら負債がかなり大きく、思った以上に経営状況が悪いことがわかりました。
また相続の問題で、それまで100年商売を続けていた場所から出なければならなくなりました。
資金繰り、移転先探し、取引先の廃業など、簡単には書き尽くせないほど、どん底からのスタートでした。
それでも妹と二人で少しずつ改善してゆき、またたくさんの方々にお世話になり、助けていただいたおかげで、現在の伝法院通りに移転、新店舗をオープンしたのが今から7年前。
返済も先が見え、なんとか軌道に乗り始めたとホッとしたところでのコロナ禍…。

和装履物の面白さを伝えたい

noteを始めるに当たって、こちらで書き綴っていきたいのは、和装履物の面白さについて。
下駄や草履など伝統的な和装履物は、何百年も昔から基本的な構造(鼻緒が付いていて左右がない)は変わっていません。
台と鼻緒を好きなように組み合わせることができて、挿げ職人が足に合わせて鼻緒を付ける、いわばセミオーダーメイド。
材料は植物や革など自然素材です。
最近、市場に出回っているのはほとんど大量生産の履物ですが、昔ながらの和装履物が見直されるべき点はいくつもあり、多くの人が勘違いしているあんなこと、こんなことも書いていきたいと思います。

それでも浅草での小商いは楽しい

もう一つは、苦労は多いが自分のお店を持つのは楽しいということ。
この10年、心休まる時はまったくなかったし、ろくに休みもとれませんでした。社長といっても自分に払えるお給料は悲しいくらい少ない。

店を継いだ10年前に比べると、和装履物の商売自体さらに厳しくなり、追い打ちをかけるようにコロナで外出自粛になって当然、履物屋はますます大変です。
でも、生まれ育った浅草で家業を継いだのは、いろいろ大変な面を差し引いても悔いはない。
有名な観光地でもある浅草の街、ここで生きる人々のことなども、書き綴ってゆきたいなと思います。

https://www.instagram.com/rie_tsujiya/



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