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ブログを見つけて読んで感想書いてそれを肴に交流する会を30分でやりきっています

サイボウズ株式会社 開発本部 People Experienceチーム内 コネクト支援チームの西原(@tomio2480)です.サイボウズ入社から 2 年が経過し,3 年目を迎えました.2022/02/14 から社内で毎週月曜に開催している「どっかの企業のブログを見る会」について溜まってきた知見を文字でまとめます.

簡単に要約すると,参加しても自分のレベルじゃ足引っ張るしと思っている人の心のハードルの高さ,時間がないという厳しい制約,やるならちゃんとしたものがいいという要望の高さという全ての課題を解決するインプット会の方法を考えた話です.


「どっかの企業のブログを見る会」

社内でやっている「どっかの企業のブログを見る会」の説明をここにも書いておきます.これ以外の説明は何もありません.

- 最初 8 分ちょいで記事を読んだりします
- 観点は自由です.内容でもいいし,ブログの見せ方でもいいし.
    - それぞれに学びがあることが大事なので,他の人にわかんない専門的なことでもいいです.
- 次 2 分ちょいで記事の感想をテキストに起こして kintone に残します
- あと残りでみんなの感想を聞いて回ります

サイボウズ社内 - 「どっかの企業のブログを見る会」説明文より (一部改変)

この会のために確保している予定の時間は 30 分です.自分がやるイベントですので,もちろんナンバリングはしていません.数えたところ 2022/08/08 でちょうど 20 回目の開催を迎えたようです.

ねらいを達成しつつ余白を残す

この会は「今,世に放たれているテックブログとはどのようなものなのか,そしてどのように使われているのか学習する時間が必要だ」という課題意識から沸き起こったものです.

地方 IT コミュニティ以外に何もしてこなかった自分はテックブログの定石も流行りもわかりません.まずは以下のねらいを定め,最小限の労力で達成する枠組みを考えました.(運用中の現在は参加メンバーに応じて,もう少し柔軟で範囲の広いものにしています)

【以下のインプットを中心に学びを得る】

  • 技術系の企業がどういった発信活動を行なっているのか

  • ブログその他の媒体のトレンドはどんなものなのか

  • それらは誰がどのように使っているか

  • それ以外でもなんかすごいことなんでも

【以上の学びから以下をはじめとする学びや課題を得る】

  • サイボウズの技術系情報発信のよさは何か

  • 社外の人目線で読みたい記事はどんなものか

  • その他アイディアなんでも

気を付けるべきポイントは,参加者全員に同じレベルを強要すると,継続のハードルが跳ね上がってしまうことです.シンプルな運営で自分自身のねらいを達成可能な枠組みを作り,これに従って取り組みを進めることに集中するのがコツです.そこで同じ取り組みで得られる効果をレベル別にして,やらんとしていることを整理整頓します.

自分が勝手に目指すことと,みんなで達成するレベルを分ける

自分の生活だと,コードを書いたり,何かを作ったりするときはブログのお世話になりますが,その他の機会にブログを読むことは多くありません.せいぜい Twitter に流れてきて興味がありそうなら読む,くらいのもので RSS を拾ってチェックなんてこともしていません.

ですから,ブログを 1 本読んで,感想を 1 行書くだけでも大きな進歩です.これなら誰でもできそうです.これを最低レベルのねらいとします.これは参加者にも守ってもらうようにします.ここで「どっかの企業のブログを見る会」の説明文を再掲します.

- 最初 8 分ちょいで記事を読んだりします
- 観点は自由です.内容でもいいし,ブログの見せ方でもいいし.
    - それぞれに学びがあることが大事なので,他の人にわかんない専門的なことでもいいです.
- 次 2 分ちょいで記事の感想をテキストに起こして kintone に残します
- あと残りでみんなの感想を聞いて回ります

サイボウズ社内 - 「どっかの企業のブログを見る会」説明文より (一部改変)

最初は「説明文,たったこれだけ?」と思ったかもしれませんが,おわかりのとおり,やらんとしている最低レベルの取り組みを説明するとこんなもんなのです.そして,この最低限のねらいを踏み越えて突き詰めれば,自分の達成したいことも通り抜けられます.そして,自分がねらいの向こう側まで突き詰められるということは,参加者にもその余白が与えられているということです.

機会の確保は最重要事項

スライド画像の最下部に「Lv.1 未達 → 盛り上がって時間を割いた中身に着目した別の会を作る」と書きました.実例を挙げると,ブログ改修のアイディア出しから作業までをこの時間でやってしまいたいという意見に対し,別の予定を作り,作業した例がこれにあたります.

スライドに書いたこの一文の意味するところは,この会の時間を使って別のことをやってしまうと,本来やりたかったことが達成できなくなるので,別の会に切り出しましょうという提案です.こうして時間の確保を強く主張し,当初設定したねらいを達成する機会の確保を行います.

このようにして「どっかの企業のブログを読む会」は,誰でも達成できる小さなねらいを作りつつ,参加者それぞれが会のねらいを踏み越えて突き詰められる会となりました.

とりあえずこれで,参加さえしてもらえれば,何かを得て帰ってもらえる会になりそうです.次なる課題は「時間」です.

会の時間内にやることを全て収める

先に記載したとおり,自分も用があるときしかブログを読みません.従って,このブログを読む時間は,今までの業務や生活にないことをするため,どんなに短く設定しても他の何かを圧迫します.そして,これは同じ課題を持つ参加者にとっても同様の悩みです.

いかに忙しい人の時間を奪わずに効果を発揮するか

ここでのポイントは,時間外に活動を要求しないことです.例えば読書会の形式の一つに,事前に本を読み,当日感想を持ち寄るものがあります.これはインプットのための時間を別に確保する必要があります.

「どっかの企業のブログを見る会」は 8 分間でブログを見つけ,読み,8 分経過後の 2 分間で感想を書き,残りの 20 分間で交流します.つまり,リサーチとインプットが会のスケジュールに組み込まれています.これによって,普段インプットできないという人も参加しやすくなりました.

もちろん,本格的な学習や研究にあたっては,このスタンスでは延々と低いレベルのままで,評価に値しないこともあるでしょう.しかし,たったこれだけのことでも,何もしないことに比べれば十二分に状況はよくなるはずです.ここでは,その引き上げをねらっています.

これで,会のねらいの達成しやすさと,時間確保のしやすさを工夫できました.次なる課題は「取り組みの質」です.

質を一次書き込みに期待しない

今の会の設計では,取り組みの質が犠牲になる可能性があります.達成したいねらいは簡単で,時間も限られている状況です.エンジンがかかる前に,テキストでのアウトプットを要求されるこの形では,一見大したことないアウトプットが続いているように見えがちです.

いろいろ考えが浮かんできても,綺麗にまとめる余裕はない

もしここで,書き込みの質を上げるよう働きかけてしまうと,ふわっと沸いて出た直感について,コメントを書きにくくなってしまいます.これはあくまでもアイディアの種であるとして,簡単な感想も大事にすることを確認する必要があります

しかし一方で,せっかく割いた時間でやっていることの程度が低いと感じてしまうと,次参加しようという気持ちにはなりにくいものです.いくら自分自身でねらいを高く設定できるとしても,会の設計上,そこまでのことがやりにくいとなると話は別です.

ブログを見つけて読むのに 8 分,感想を書くのに 2 分とここまで極端に短くしているのは,この後の時間に,充実させるための工夫を込めたからです.

簡単でも意見交換を行う

読む時間と書く時間はともかく,この交流時間だけは長くとることが重要です.ねらいの崇高さ,かける時間の長さ,感想テキストの質の高さという 3 つの犠牲を払って生み出した,交流時間の長さがあるからこそ,会としてのバランスを保つことができています

交流する時間を長くとることで会の充実度を上げていく

わざわざ時間を割いて来ている人たちが,時間同期して集まっている状況を生かさない手はありません.20 分でみっちり意見交換を行います.この時間で一次書き込みの質の低さをカバーできるようになっています

ポイントは発言を多く引き出すことです.音声に限らず,テキストが得意な人がいるなら,テキストで多くのコメントを引き出します.話すのが得意な人が話した内容をテキスト化するのもいい取り組みです.でも,無理は禁物です.できる範囲で,得意な形でやります.学んだことについて考える余裕を持つためです.作業に脳内を圧迫されてはいけません

小さなインプットの繰り返しが伸びの実感を作る

こうして,参加さえすればねらいが達成でき,時間も圧迫されず,気軽に学び得たことについて交流できる 30 分を作れています.今のところ順調で,チーム内に知見が溜まっていると感じています.

技術系の活動をしないメンバーでも,最近の流行りはこれっぽいとか,ブログにはこういうリンクを置くのが多いんだねとか,ブログを見ないとわからないことがわかるようになったのは大きな進歩です

また,何回か言い出しっぺ西原不在の日もありましたが,ありがたいことにチームメンバーが地道に開催してくれていました.誰が音頭をとっても開催できる形式の強みを実感しました

初社内開催から半年が経ったので,社外イベントでもやってみることにしました.この枠組みを用いて,社外の人たちとも交流すれば,もっとたくさんの知見が集まるのではないかという思惑がありました.

初回はいきなり西原がイベント公開を忘れていたため,当日公開になってしまいました.参加者は 2 名と少なかったですが,参加メンバーが変わると時間をかけて話すポイントも変わるため,これはこれで新鮮でした

この社外版ブログを読む会は,西原が空いている月曜夜に開催予定です.本当は毎週やりたいですが,予定が入っているため 8/15 と 8/22 を飛ばし 8/29 に実施する予定です.気になる方は以下の公開されている connpass のイベントページからお申し込みください.

そのうちここで得た知見を完成度 1 % 未満の LT を見せつける会として,ゆるく発表とかできたらいいなと思います.俺たちの戦いはこれからだ!

【追記】やり始めて一年経った後日談

「30分でブログを見つけて読んで感想を書いて発表する会約一周年記念」として「えびてく #1 - IT 系の勉強会を江別でやる」にて発表してきました.


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