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完成度 1 % 未満の LT を見せつける会というバタフライエフェクトの具現化(?)

サイボウズ株式会社 開発本部 コネクト支援チームの西原(@tomio2480)です.2021/01/29 にチーム内から沸き起こり,それ以降それなりに続いていた(今はお休み中)の謎会の話をします.
 
「完成度 1 % 未満の LT を見せつける会」の説明は以下のとおりです.

完成度が高いとハイクオリティペナルティを気分で発動させます.
参考 :: ヘボコンの「ローテクルール」「ハイテクペナルティ」 https://dailyportalz.jp/hebocon/rules

完成度が 1 % 未満なので当然マイナスも非難されるいわれはありません.

やりかたはこれから模索していくとしてとりあえずやりたいのは,
なんか気になってるネタを聞いてもらったり,聞いたりしてボルテージを上げること.

これを #7 まで,おおよそ毎月くらいの頻度で開催していました.ここまで書いてもあんまりよくわからないと思いますので,もう少し説明します. 

情報伝達の種類

自分が情報伝達について考えたときに,想像がつく範囲では,雑談,連絡,プレゼンテーションあたりが思いつきます.雑談は特に何を準備するでもなくいつでも OK ,みんな丸腰で向かう感じ.連絡はいわゆる事務連絡のような形で対象となる人や組織に必ず伝わるように,より正確に伝える努力をしたほうがよさそうです.プレゼンテーションは伝えることに加え,相手の行動を引き起こす必要があり,事実を伝える以上の何かをのっけなきゃならんのかなという認識です.
 
じゃあ一体「完成度 1 % 未満の LT を見せつける会」は何なのでしょう.
 
自分はこの会を,雑談と連絡の間にある都合のいいコミュニケーション時間と位置付けました.雑談のように相手とのキャッチボールにより成り立つ場では,いかに体系立った話でも一方的に話をするのは似つかわしくないでしょうし,連絡ほどかしこまった状況になってしまうと持っていけないものもあるでしょう.ですから,なんというか好きなことをわーっと話して聞いてもらう時間というのは,ふつうに仕事をしている上では自然発生しにくいものだと感じています.

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ワシの趣味を聞け!的な時間,ワシの悩みを受け止めてくれ!的な時間,そういうのを雑談でやろうとすると,みんなに興味を持ってもらって,こっちを向いてもらう必要があるわけですが,これをプレゼンテーションでよく用いられている半二重通信的な形に持ち込めれば,話を聞いてくれる姿勢が整った状況で言いたいことを言えるわけです.
 
まぁ,ということで雑に LT 会をすればいいってことになるワケです(?).

心の中から体の外に情報を移すハードルをとっぱらう

さて今度は,みんながそんなホイホイ LT をしてくれるかどうかが気になります.
 
概ね LT をはじめとした発表はスライドやポスター等の資料や作品,デモなどを携えて,それとセットで行われることが一般的かと思います.するとどうしても「思いついただけのこと」や「文字列化しにくい何か」などはこの資料化の壁が高く LT にさえ到達せず,それに取り組んでいるある一人(か,一集団)の中から出ていかないままに,埋もれていってしまいます.

相手に説明するために,頭の中にあることを文字列や画像にするのは非常に体力のいることです.仮に出来上がったとしても,絶え間ない "これでいいのか......?" と戦うことになるわけですから,人目に触れられるようになった思想や思考過程というのは,極めて厳しい関門をくぐり抜けてきた精鋭と言って差し支えないでしょう.このへんの話は 6 月にやった社内研修でも触れています.よろしければご覧ください( YouTube 動画もあります ).

この,発表する際に必要と思い込まれているものが本当に必要かどうか改めて考えました.すると,実は必要ない場面もたくさんあることに気がつきました.脳内で人間のコミュニケーションを大昔まで遡って,石器時代もスライドが必要だったんだよね😌 とは思えませんでした(もし石板でポンチ絵とかやってる調査結果が出てたらすいません.なんも調べてません.).
 
もちろん,スライドやデモなどを用いて,より効果的に相手に伝える努力というのは素晴らしく,これをダメだという気はありません.デザインやプレゼンテーションの勉強をしていって,労力なく使いこなせるようになる訓練も尊いものでしょう.しかし,かけなくてもいい労力をかけているのであれば,それは省いてあげた方がいいのかなという気持ちになったのです.
 
結果,この会では「その場で自由にやってもらっていい」ということにして,口頭 + Web 検索結果の画面共有とかで準備ゼロでできる発表を基本としました.完成度が高すぎるときだけ西原の独断と偏見でペナルティーだよということにしました.いや別に何にも罰はないです.そういうの考えると完成度が 1 % 超えちゃうのでダメです(?).

こんな発表があった

大体,月一で 30 分から 1 時間程度の時間でやっています.過去の発表の一部はこんな感じです.

・届いた Web カメラをテストした
・百人一首に HP や Damage,Ability の概念を持ち込むひとりアプリ内異文化交流を達成しているという,グローバル [ 要出典 ] な話
・クラウドファウンディングは世相を反映しているので観察すると面白い
・あたらしい、あしらい。 あしらいに着目したデザインレイアウトの本
・かるかん、かすたどん情報
・フリーアクセスフロア自作
・休みの日に 500 km * 2 走り回ったはなし(燃費は 17 km/L
・文字起こし RIMO のすごい話
・QUADERNO Gen.2 と Orbital 2 の開封式
・FPGA ファーストコンタクト ~任意波形発生器の製作に向けて~

おい業務中にいいのかという感じがするでしょう.発表会として内容を見ると "いいのか......?" という気持ちにもなるでしょうが,これが雑談内容だったらどうでしょうか.これくらいあるんじゃないですか? 形式が違うとダメになるなんてこともないでしょう.これは,雑談形式ではやりにくい自己開示の時間なので,やりたいことは雑談と一緒です.あわよくばここから LT とかの発表が生まれて欲しいなと思っていますが,それを強制するとおかしなことになるのでやりません.

ほんで今

しばらく経った今,すでに手垢のついた「発表」から話以外の部分を制限すると明記して,クオリティの高さに天井をつけることがよかろうという発想は,そう外れていなかったのかなと感じています.冒頭の記載からもわかるとおり,この思想はヘボコンという素晴らしい大会の「ローテクルール」「ハイテクペナルティ」が元ネタです.これを知らなければ,この会は生まれていなかったかもしれません.

最初は LT というのを名前に入れない方がハードルが下がる,という意見も寄せられましたが,自分が初めたものなので雑に却下して,そのまま突き進むことにしました.いや,雑にとは言いましたが,こういうのは初めにやったときの勘を信じて,まずやってから考えるのがいいと思っていたので,やってもないのにああでもないこうでもないというのは無視するという自分の方針が具現化したまでです.
 
LT と入れたのは思いとして,ここでいい感じに話ができて,熱量が高まっていき,いずれどこかで LT 等の形で登壇してほしいなという,登竜門というかインキュベーション施設というか,そういう思いがあったので LT と入れてみた,という(脳内の)経緯があります.まさに,こういうことで,別に業務連絡のように仰々しく言う必要もないし,かと言って雑談でぶち上げられる軽さでもないことが共有できなかったのは,図らずも自分の中でこの会の存在意義を高めることになりました.

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気づけば, Garoon チームでも「完成度低いの歓迎 LT大会」という極めて素晴らしい会が 4 月から開かれ,その後も QA コミュニティで「QA ハードルの低い LT 会」,kintone チームで「完成度の低いきんとねLT会」,Garoon に関しては「Garoon開発 "英語の"完成度低いの歓迎 LT大会」という会まで爆誕したというではありませんか.Garoon チームに関しては,完成度が低いポイントが詳細に実況されるという,徹底された低完成度を求める会になっていて「いいな〜」と思っています(?).

いや,自分が何かしたわけでもなくって,ぶわっとそれぞれのチームで「これは使える」と取り込んで,各チームの中で上手に活用して業務にも生きる場面が出てきているようです.

どうやら,Garoon チームの「完成度低いの歓迎 LT大会」については Cybozu Advent Calendar 2021 の 6 日目で酒井さんが記事を書かれるようです.楽しみですね👀

カスタマイズできるだけの隙も大事だった

冒頭にも掲載しましたが,この会のルールはこれだけです.

完成度が高いとハイクオリティペナルティを気分で発動させます.
参考 :: ヘボコンの「ローテクルール」「ハイテクペナルティ」 https://dailyportalz.jp/hebocon/rules

完成度が 1 % 未満なので当然マイナスも非難されるいわれはありません.

やりかたはこれから模索していくとしてとりあえずやりたいのは,
なんか気になってるネタを聞いてもらったり,聞いたりしてボルテージを上げること.

お気づきになられましたか? このルール,情報量ほぼゼロです.これに沿ったかどうかなんて超主観ですし,何をやりたいかのところも,実はなんも言ってません.ボルテージをあげるって何ですか????? 事務局があるわけでもないですし,ぼくもよく知りません(それでいいのか).
 
例えば「Garoon開発 "英語の"完成度低いの歓迎 LT大会」は以下のルールが追加されています.

ルール1: 英語(だとあなたが思う言語)をしゃべってください
ルール2: 意味が分かることを言ってください。そのための手段は問いません(ルール1に反しない限り)
ルール3: 楽しくやってください

元々がルールゼロみたいなもんなので,何かを足しても複雑になりにくいんだろうなと思いました.それぞれがそれぞれの価値観で意味を見出して,それを色付けして運用できるのかもしれません.始めた当人はそこまで考えてませんでしたが,うまくいっているので何とでも言えます(それはズル).

労力をかけないことに労力をかける

ただ一点,この会に具体的な何らかの成果を求めだすと,わけわからんことになっていくんだと思います.一番大事なのはその場の体験と,その場を体験した後の気持ちです.見てくれた人数だとか,コメント数だとか,そういうよく考えて導入すべき指標を形式的に導入してしまうと,知らず知らずのうちに本質を見失う一歩を踏み出していた...... なんてこともあるでしょう.
 
「労力をかけないことに労力をかける」というのは,自分が関係している北海道旭川市の勉強会「ゆるい勉強会」が金科玉条として守るルールです.これ以外は公序良俗に反しないことくらいしか決めていません.やっていくうちにこれは,よかれと思ってやったことで滅びることを防ぐ決まりなんだと気づきました.「やった方がいいけど大変だからさ,やめとこ?」と言いづらいことに対して,ハッキリ「やらない!」と言えるルールであることが肝でした.

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例えば開催報告ブログを書く!とかって最初の何回かはいいんですけど,仕事が忙しくなったり疲れてくると辞めたくなる...... でも,"いいこと" なのでやめられない...... そうしてしばらく我慢できても,じきに当たり障りのないコメントを残してその場からフェードアウトしてしまう.まさか,開催報告が第一歩だったなんて,当時は思いもしないでしょう.傍目から見てやったらいいけどやれてないことは大体,後々自分の首を締めるのです
 
こんな会でさえ運営するだけでも大変です.しかし残念ながら,やったことのない人にはその辛さはわからないようで,アレコレ注文をつけてきたりもします.これを鋼の精神で跳ね返すのもまた,体力のいることです.完成度が低くていいから色々挑戦できるじゃん,と思うのは自由ですがこれを他人に要求するのは,過激にいうと場潰しそのものです.こういう雑な会は,言うならやる,やるなら最後まで面倒を見る,これが大事かなと思います.と,考えると先のゆるい勉強会の「労力をかけない」というルールは「ぼくが疲れるのでやりません」が最高レベルのルールに則った意見として認められるわけです.

この話は,コネクト支援チームで展開している音声コンテンツ「流氷交差点」の #2 でお話ししていますので,文字コンテンツも併せてぜひどうぞ.

みんなもやろう雑な謎会

いいですか,人を魅了するネタの多くは心の中にしまわれています.北風と太陽じゃないですが,話したくなる,話してもいいかなと思える場作りが肝要なのです.そのために必要のないものは横に置いておきましょう.ちゃんとしたのは別のところでやればいいんです.

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