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人間が人間性を取り戻すデザイン

「TP-7」は96㎜×68㎜×16㎜のコンパクトなレコーダー。
物理的なボタン、中央の電動テープリールの再現など、2023年にリリースされたデザインとは思えないほど、アナログな作り、
そして、触覚を最大限に刺激されるガジェット。

プロダクトデザイナーのイェスパー・コーフーさん曰く、ディスプレイ中心のプロダクトデザインへの反動だという。
ディスプレイ中心のデザインは、インターフェースのデザイン思索が失われて、面白みのないデザインになると。

これからの時代、人間が使う道具は、「人間の心のため」のものになると予測する。
AIやコンピューターがもっと発達していけば、人間が道具の使い方を知る必要はなくなり、アウトプットを伝えるだけになる。
そのような世界になったとき、より多くとかより速く、といったことは当然であるから、人間は、心の問題を解決することをテクノロジーに求めるようになるということだ。

そして、人間のノスタルジックな感覚や記憶=心の安らぎ・驚きは「触覚」に直結している。TP-7はそれを叶える設計になっているのだ。



間違いなく、僕はこの感覚には共感しました。
ここ数年で、持ち物がぐんと減り、一つ一つのモノに対して、必要性があるのかを問い続けた日々。
結論、いるものは、消費的なもの(生活にどうしても必要なもの)か、浪費的なもの(心を満たしてくれるもの)になった感覚です。
特に後者は、キーワードで示すならば、「最先端」とか「最速」とかではなく、むしろ、「アナログ」「触覚」とか目に見える、触れられるものが大半だと思います。

それともう一つ大事な要素は、そのプロダクトの背景。
素材は何?どんな人が作った?デザインした?実は違う用途で使われていたものが転用した?などなど、歴史的、生産的背景を知ることができると、それは触覚を超えた第六感的な感覚まで刺激されると思います。


Takramの渡辺さんがおっしゃっている、モノづくりは、世の中をどう見るかというのが大事で、デザインされたアウトプットはその副産物に過ぎない、という考え方は、モノにあふれた現代でとても大切な感覚だと思います。

自分の身の回りや、自分が今後関わっていくプロダクト、広告、サービスなど、まず第一に世界をどう見ているのか、どういう人間性を取り戻させたいのか、
となるとどういうアウトプット、触覚、感覚が必要なのか?と問うことも、よいプロダクトを作り出すヒントなのかもしれません。

参考:AXIS 2024 4 vol.228

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