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12月、雨上がりの館山を歩いたときの話。

2年以上前のテキスト原稿が見つかりました。いくつかの写真とともに掲載してみたいと思います。※文章を一部修正
ご笑覧いただければ幸いです。(トミウラ)

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千葉、内房の富浦という町が好きで、時々出掛けている。JR内房線で館山のちょっと東京寄り。もともとは安房郡富浦町であったが、いわゆる平成の大合併で富浦町を含む7町村の合併により「南房総市」の一部となった。
合併の結果、この南房総市は外房側にかけて房総半島を輪切りにする市域となり、西南端の館山市を包囲するような形となっている。ただし、言うまでもなく、このあたりで一番大きな町は館山であり、館山を中心とした経済圏を形成している。
富浦自体は里見氏ゆかりの城址、海水浴、魚、ビワ、花き園芸などで知られる小さな町だ。どうでもよいことだが、僕の筆名はこの富浦からとっている。

2年以上前、2021年12月中旬のことになるが、この富浦に向かう際、時間に余裕があったので、内房線ではなく外房線回りで行った。天気はあいにくの雨。勝浦、小湊、鴨川…、どこかで途中下車でも、などと考えつつも、そんな気も起きないまま、電車は内房線に入り、館山まで来てしまった。とりあえず、電車を降り、改札を出る。

館山駅にて。乗ってきた電車(上総一ノ宮発木更津行き)を見送る。

雨はまだ降っている。12月の冷たい雨だ。だが、空が明るくなりつつある。富浦では一泊予定なので、夕方までに着けばよい。現在、午後1時。雨が止むのを待って、ここから富浦まで歩こう。こういう気儘さはひとり旅ならではだ。

雨は止みつつある…。
虹も出た。

青空が見え、雨が止み、虹も出た。早速歩き出し海岸に出る。このまま富浦までほぼ海岸沿いを歩くことになる。濡れた路面に日光が反射する。気分は良いがやはり12月、日差しは弱く、肌寒い。

海岸沿いを歩いていると、かなり大きなショッピングセンター(SC)がある。ここの風景は印象深い。鄙びた海岸があり、反対側を振り返るとSCの喧噪なのだ。旅行者の視点というのはわがままなもので、人によっては旅先でこの種の店に出会うと興ざめすることもあろう。

この海岸の、道路を挟んだ反対側に…。
このショッピングセンター。

しかし僕は、旅先で大手流通系のSCや家電量販店、紳士服店、ドラッグストア、コンビニなどに出くわすことに、ほとんど抵抗のないタイプである。いやむしろ、旅先で、たまたまこの種の店に出くわして、ちょっと入店してみたりするときに旅情を感じることすらある。

もうひとつ。
「〇〇(土地の名前)に来たのだから、△△(その土地の名物料理)を食べよう!」
僕自身もこのように考えて旅に出ることは多い。しかし、結局、現地でたまたま出くわしたSCの中のフードコートなどでカレーや焼きそばを食べて満足し、結果的に名物料理は食べずじまい、などということも多々ある。まあ、このあたりも、ひとり旅ならではの気儘さなのだろう。
そもそも、いまどきどこへ行ってもSCのひとつくらいあるし、そこに暮らす人がいる以上、それは当然のことだ。

さらに海岸沿いを歩く。館山から富浦あたりまでの海岸沿い全般にいえることだが、大学の寮、合宿所が目に付く。

那古船形駅。なかなか趣深い造り。

内房線、那古船形駅に辿り着いた。
この駅名、正しく読めるだろうか? 
簡単じゃないか、どこが難読なんだ? と言われそうだが、「なこふなかた」「なこふなた」「なふなかた」「なふなた」と、少なくとも4つの読み方ができる。正しくは、なこふなかた。濁点はいっさい付かない。
那古観音、崖観音といった寺院がある那古と、千葉県有数の漁港を擁する船形、2つの地区から採った複合駅名である。複合駅名としては古い部類だろう。

時計を見る。午後3時半。富浦まで歩くつもりだったが、那古船形から電車に乗ることにしよう。富浦までは一駅だ。こういういい加減も、ひとり旅ならではの気儘さだ。

この電車は、僕が乗るものではなく逆方向の上総一ノ宮行き。

作品をご覧いただきありがとうございます。コメントなどもお気軽にお寄せいただけましたら嬉しく存じます。(トミウラ)