韓国の街中にアダルトショップが増えたのはなぜ?~変わりゆく男女観
※この記事は韓国の社会意識についてお伝えするものであり、成人向けのコンテンツではありません。
最近、韓国の繁華街を歩いていると、ひときわ目立つ店が目にとまる。おもにピンクや赤の系統の外観で、一見するとインスタ映えカフェやコスメショップのようにも見えるお店だ。
何かと思ってそのお店に近づくいてみると、立て看板にはハングルで「成人用品(성인용품)」などと書かれていたりする。そう、これは大人のおもちゃのお店。アダルトショップなのだ。
外観がピンクとは言っても、卑猥さは全くと言ってもよいほど感じられない。路上から店内が見えるのだが、並べられている商品はそれほど多くないようで、それぞれのグッズがすっきりと陳列されている。日本にあるショップのような雑然とした感じはしない(入ったことはないが...)。
最近ではこのようなショップが韓国の繁華街に堂々と並んでいるのだ。筆者がこのような店を初めて見かけて驚いたのは、昨年(2018年)のこと。ソウル・延南洞(연남동)のお店であった。
筆者がなぜこのような店に驚いたかといえば、韓国では儒教の影響により、性的なことに関しては、目に見えるところから隠される傾向にあったからだ。
実際にテレビでは視聴年齢の等級が定められており、画面の右上には12歳、15歳、19歳など推奨年齢が表示される。番組でアイドルがセクシーなダンスをしようものなら「煽情的(선정적)」という烙印を押され、しばしば議論の的になるようなお国柄だからである。
しかし今やアダルトショップは、ソウルはもちろん、大邱の東城路、釜山の西面といった地方の繁華街のなかでも人通りの多い場所に、コスメショップとさほど変わらない外観で、堂々とお店を構えているのである。
たしかにこれまでも成人用品、アダルトグッズを販売する店は存在した。お店の看板こそ目立っていたかもしれないが、店舗自体は雑居ビルのワンフロアにあるようなイメージで、通りから店内が見えるようなことはなかったと思う。そういった商品を実際に購入するにしても、ネット通販を利用していた人が多いはずだ。
釜山・西面(서면)にあるアダルトショップは大通りに面していたが、その隣にはコスメショップがあり、完全に街に溶け込んでいた。筆者はお店の前で足を止めて外観写真を撮っていると、20代前半とみられる若い男女が手を繋いでお店に入っていく。それも1組、2組とわずかな時間のあいだに。
この店ではどんなものが売られているのだろうかと気になり、人生で初めてアダルトショップのなかに入ってみた。
そこで売られていた商品は、日本のメーカーが販売するTENGA(テンガ)という手淫用のグッズをはじめ、男性器を模したバイブレーションが陳列されているほか、行為の際に女性が着るためのセクシーなコスチュームなどがハンガーにかけられていた。
レジには白衣を着た男女の店員がいて、その前の棚には男性用コンドームだけでなく女性用のコンドームも販売されていた。店内には日本から輸入されたとみられる商品が多かった。
●性に関する意識が大きく変わった韓国
町に溶け込むアダルトショップを数か所で見るや、「韓国は性に関する意識がかなり開放的になった…。」と感じるようになった。そう思っていた矢先のこと、昨日(2019年4月30日)の朝鮮日報で「日本発アダルトグッズTENGA、韓国で売り上げ急増」という記事が公開されていた。韓国ではTENGAの売り上げが前年比185%増になったのだという。
記事では売り上げ増の理由について、関係者のコメントが以下のように記されていた。
同社関係者は「韓国でも性が表で論じられるようになり、誰でも楽しむことができるものへと認識が変化していることを感じる」と指摘した。引用元:日本発アダルトグッズTENGA、韓国で売り上げ急増-Chosun online 朝鮮日報
このような状況を見ると、韓国では男女観が大きく変化しているように思う。先日筆者は「海外ZINE」というWebにて、韓国の結婚事情に関する記事を寄稿した。
男女の恋愛はかなりオープンになっているのにも関わらず、経済的な事情もあってか、未婚・晩婚化は日本よりも深刻な状態であり、2018年の出生率はついに1倍を割るような状況になった。
詳しいことは上の記事を読んで頂けたらと思うが、儒教では「男女有別」という考え方があり、男女関係は厳格であった。伝統家屋の韓屋では、男女が過ごす空間が別けられていた。
現代の恋愛でも、今の40代以上(?)の人たちは、おそらく人目のつく場所でキスをすることも避けてきたのではないかと思う。男女が集まる場で性的な話、いわゆる「下ネタ」を話すことは、基本的にはあり得ないことであった。
近年は男女交際もかなりオープンなものになり、街中でベタベタしたり、電車のなかでキスをする若者を目撃することもかなり増えてきました。(中略)性に関することや男女関係に関しては、少し前までかなり保守的なものがあり、時代の流れとともに変化しています。引用元:厳格な男女関係も今は昔…なのに未婚化が止まらない! 韓国の結婚事情 - 海外ZINE
しかし最近、公共の場所でキスをする若者を日本以上によく見かけるようになり、男女の結びつきはかつてより堂々としているように見える。若いカップルが人目を気にすることなく、二人で一緒にアダルトショップへと入っていくような時代へと変わっているのである。
こんなところからも、男女関係に関する儒教的価値観が薄れていることがわかる。変化の速い韓国では価値観が変わる速度も速いようだ。「性が表で論じられる」ようになるスピードは、日本をしのぐ勢いで進んでいくことだろう。
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