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生成AIはあくまで「制作補助ツール」である

先日音楽生成AI「Suno AI」を初めて触ってみた。
印象としては「ファストフード」という感じで、簡単一瞬で80点がパッと取れるツールという印象であった。
逆に現状では80点以上は難しい。コマンドを駆使し、試行回数を増やすことでたまに85点が出るという感じである。人間が作った90~100点の芸術作品には遠く及ばない。細部のクオリティが雲泥の差である。90点には壁があるのである。

とはいえ、今までではあり得ない低コストで、誰でも80点がとれるのも確か。「80点合格」という基準で制作を行っていたクリエイターにとってAIは頭の痛い存在なのも理解できる。

ただ、もう一歩踏み込んで考えると「AIに80点を取らせて、後は自力で点数をプラスする」という使い方も見えて来る。
AIを素直に道具、「制作補助ツール」と捉えるわけである(もっともこれが当たり前の使い方なのだろうが)。
考えてみれば、絵描きの場合だと今まで紙と鉛筆と塗料だったのがデジタル環境になって大幅に制作コストが下がった背景がある訳で、AIはこのような流れの延長にも見える。

今後はAIという制作補助ツールの登場により、それぞれのクリエイターはこんな感じになっていくのではないか。

・今まで100点(あるいは120点)を取っていたトップクリエイター
すでに点数がカンストしているのでこれ以上点数は増えないにしても、アイデアをAIから得られる。
単純にAIを活用して制作コストを下げることができる。

・80点合格基準のクリエイター
AIに80点を取らせてあとは自力で点数を上乗せする。
自力で80点を取っていたため、素人よりもAIをずっとうまく使えるはず。
以前より圧倒的に少ないコストで90点以上が狙えるようになる。 

・素人
多少の勉強で簡単に80点が取れるようになる。
素人が何か創作を行っても0~50点くらいだろう。そう考えると従来ではあり得ないほど高い点数が取れる。

この度実際に生成AIを使ってみたが、生成の速度と一定の品質の物を作るという意味では凄まじい性能ではあるものの、それ以上の世界には現状踏み込んでいない。魔法っぽいものではあるが、魔法ではない。電子レンジや洗濯機などと大差はない。

AIを毛嫌いしている人も一度触ってみると良い。上記の事がよくわかると思う。

ただし、これはあくまで「制作」について考えた場合の話であり、「金儲け」を考えた場合は様子が変わるようにも思う。
トッププロはさらに素早く制作ができるようになり、生産数が増える。
AIの補助で90点以上の作品が多く登場する。要するに高レベル作品の供給が増えるわけである。レベルの高いものが多くあれば必然差別化も難しくなる。
加えて80点で十分事足りるという作品は素人でも作れてしまい、金にならない。
制作はしやすくなるが、金儲けはしにくくなるのではないだろうか(もっともここ10年くらいが異様に儲けやすかっただけにも思うが)。

逆に言うと趣味や兼業での制作は相当にやりやすくなる。
今後の制作は金儲けから切り離し、純粋な「作りたい」という動機から行っていく、2000年~2010年代のニコニコ動画のような風潮に回帰していくかもしれない。


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