「地方消滅」を読んで

地方消滅とは

20~39歳という子供を産む中心的な年齢の女性の人口に着目すると、896/1799の市区町村において、2010~2040年にかけて半分以下に減ることが国の調べでわかった。この896の自治体を消滅可能性都市と呼ぶ。この本は、人口減少時代を迎え、この日本で起こりつつある地方消滅という問題に対して、具体的な課題や解決策を提示している一冊である。

地方消滅の危機の実態


現状
多くの地域の経済は衰退していると本では書かれている。それに加えて人手も足りない。従来は、経済が衰退すれば人手は余るというのが経済の常識らしいが、現在の日本は急激な人口減少が進んでいる(特に生産年齢人口)ので特に若者の人材不足という未曾有の事態となっているそうだ。

解決策:雇用を作る
解決策としては、地方の企業が安定した雇用をつくることが一番大切だと言われている。地方で暮らす一人としてもそれは強く感じる。しかし、今の地方には若者が魅力的だと感じられるような仕事がそもそも少ない。国は公共投資などを行い一次的に雇用を創出してはいるが、これは長期的にはあまり助けにはならない。最近では、企業合併や企業連携などが生まれてきており、地方に戻り始めたり二拠点生活を行う若者が増えて来てはいるがまだまだ数としては少数派だ。東京に流出してしまう優秀な人材に地元に戻って来てもらうためにもこれからも様々な努力が求められるだろう。

解決策:コンパクトシティ
人口減少により、公的サービスの維持が困難となる中で、地方都市では「街中」への生活関連サービスの多機能集約化が、つまりコンパクトシティ化が必要ではないかと著者は述べている。介護、医療の観点でも公的サービスを集約化することは必要だと思う。社会福祉サービス、公的サービスの生産性を上げて、地方の若者に十分な賃金を払い、地元に残ってもらう。従来のシステムから脱却し、いまの時代に合わせたシステムを許容し変化していくマインドが地域が生き残っていく上で必要なのかもしれない。

解決策:選択と集中
経済的視点から言うと、地域は、特性を見極め、選択と集中を行っていくことが求められる。例えば、自然豊かな地域では、林業など一次産業のポテンシャルにもっと気づくべきだと本には書かれている。生産性の改善余地もあり、地元の金融機関も介入し、産業自体を育てていくべきだと。2013年に発足したA-FIVE(株式会社農林漁業成長産業化支援機構)は、一つの投資案件に対して50%を上限に投資し、残りの25%は一次産業従事者が出す、というもの。中規模以下の都市が持つ可能性はまさに一次産業にあり。


地域の事例

最後に地方消滅を免れるために全国で注目を浴びている取り組みを紹介したい。

・北海道ニセコ:観光協会を株式会社化することで、地域の旅館を等しく紹介する一律を排除し、優良な旅館のみを紹介できるようにした。

・日光鬼怒川:産業再生機構時代に整理回収機構、足利銀行と協力して再生した。鬼怒川の温泉旅館では廃業してもらうところ、縮小してもらうところ、がんばってもらうところに完全に傾斜をつけた。

・富山市:コンパクトシティの成功例。LRTの導入。

・神奈川県秦野市:市民に対し、増大する財政負担と超高齢化社会を説明した上で、「新規のハコモノは建設しない」「40年かけてハコモノを3割剤滅」などの方針を定め、昨日の分離や公民連携を進めている。

・香川県丸亀町:高松市中心部への居住の再集約化で空き家になる郊外施設を元ののうちに戻す運動を官民で協力して始めようとしている。

・福島県磐梯町:カナダのオリバー市との姉妹都市終結をきっかけに英語教育に力を入れ、それが若い夫婦に評価され、移住に結びついている。

・岡山県真庭市:藻谷浩介さんが取り上げる林業も産業振興戦略として考えれそう。中国は木材不足だから輸出できる上に、「木質バイオマス発電」などに取り組めば林業ももっと競争力が出てくる。

・浜中町:ハーゲンダッツアイスクリームの原料となる牛乳を全部作っている。金融面も含めて、各農家に最新鋭の機械を導入するサポートを行っていたりしてる。本来農協とは、農家が二次産業に搾取されないために作ったもの。



この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?