読書感想#1 ラブカは静かに弓を持つ

ラブカは静かに弓を持つ の感想文です。ネタバレ箇所は小見出しとしてますが、知らぬうちに撒いた地雷にはお気をつけください

あらすじ


全日本音楽著作権連盟(以下全著連)で働く主人公の樹(いつき)。全著連は音楽教室 ミカサでの楽曲使用が無許可であるとして、正規の楽曲使用料を徴収しようとした。しかし、意義を唱える団体が全著連を提訴した。

その裁判で提示する証拠を集めるべく、樹はミカサに生徒として通うこととなる。

ミカサで出会う、講師をはじめとした人達との交流。
過去の事件をきっかけに距離を置いていたチェロに向き合う樹。
そして、教室に通うのはあくまでも潜入捜査のためであるという事実が樹の心を惑わせ、迷わせていく。

感想(ネタバレなし)


この作品はとても読みやすく感じました。始めの全著連の裁判関係の話は少し難しく、止まりながら理解しながら文字を読む進めていきました。しかし、教室に通う場面になってからは樹の過去であったり、チェロという楽器の魅力、講師の演奏の凄さと表現の美しさといったように、音楽や楽器に興味のある人なら引き込まれる書き方がされていると思いました。

序盤に音楽の楽しさに引き込んだ後、物語の奥深さを出しているのが、樹が潜入調査中という点です。音楽教室の面々と楽しく賑やかな様子が描かれた後に、樹を現実(職務の一環という事実)に引き戻す場面へと移ります。そのリアリティさと、この物語はきっと綺麗に終わることは無い、という懸念が読み手の心にざわざわと湧き上がってきます。

読み進めるのが怖い話でした。ミカサで出会った面々は、いい人達ばかりです。きっと樹はいずれ潜入捜査の事実を明かさないといけないのだろうなと読者は密やかに思っていくでしょう。「この流れ、どっちに転ぶんだ…いやしかし…』と、その時がいつ来るのかヒヤヒヤしながら読みました。

自分語りと、主人公は


 嘘をつくことに対して、私はそこまで抵抗のない人間です。大事なことは正直に話しますが。目的をもって嘘をつくのであれば、何食わぬ顔で嘘をつくことができる。それらしい態度、目線、声色、とぼけ具合などなど、少々自信があるくらいには演技で誤魔化すことができるでしょう。これまでも何度かそうしたことがありました。

 そんな私ですが、自分を守る嘘をついたときの後ろめたさは、二度と味わいたくないと常に思っています。いたたまれないというか、嘘をついた自分の存在がその場で異質になる感覚があります。後ろに下がりながらカオナシのようにスーッと消えたくなるような。あ、そんな嘘をいつもついているわけではなくてですね、怒られたくない学生のころとかあったなーとか、小さいころに親にすぐばれるような嘘をついたことを、この物語の中で思い出しました。

 冷静そうな樹はいつ、その感情と出会うのだろう。そして、どう思ってこれからを生きていくのかな、生きられるのかな、心は弱そうだけど…みたいな心配までしてしまいました。
 物語の行方はもちろん明言しませんが、彼が穏やかな夜を過ごせることを願いましょう。

印象的な文(ネタバレに近いかも)

「大抵の人間は、真剣に悩みを打ち明けたところで勝手に俺を励ましてくるんだ。_だけど、俺は心のない慰めなんかを向けられるのがこの世で一番嫌いなんだ。」(ラブカは静かに弓を持つ より)

 講師のセリフ一部抜粋ですね。この講師は樹にこの言葉を出しているのですが、「君はくだらない慰めを口にするような人間じゃない」と続けます。これまで追ってきた二人の信頼が目に見える場面でとても嬉しくなりましたね。
 過去に聞いた『頑張れという言葉は嫌いです。その人が頑張っていないかのようだからです。』という言葉が浮かびました。
 人にかける言葉に定型句はあっても、どの場面にも通用するものではない。その人が欲している言葉は、他の誰もが必要としていない言葉かもしれないし、そもそも言葉すら要らないかもしれない。軽率な慰めは、ある意味悩んでいる人を理解することを投げ出しているのだと思います。いざ誰かが私に大事な悩みを明かしてくれたときに、最善の言葉や反応を選ぶことは難しいです。考えれば考えるほど正しいのかその場ではわからなくなったりしますからね。優しく日頃から生きていきたいものです。

終わり

 2度目の投稿となりました。今回は読書の感想ということで、なるべく読みやすいように整えようと頑張りましたが、今後も努力が必要なようですね…
 自分で読み返している分には、もちろん自分から生まれた言葉なので理解しやすいのですが、うーんどうなんだろう…長さもこんなものなのかなぁ、気のすむまで書くようにしようかなー、ひとまず続けていくことを目標としているので、これからも投稿していきます。ありがとうございました。


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