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KAWAII KABUKIに感化されたオタクの歌舞伎鑑賞レポ(後編)

前回は歌舞伎鑑賞のきっかけとなった「KAWAII KABUKI」について紹介したが読んでくれただろうか。今回は実際に歌舞伎演目・流白浪燦星るぱんさんせいを見た感想を書いていこう。
まず本題に入る前に、劇場に来た感想から入る興味がない方は飛ばしてOK。

劇場についての感想

公演自体はもちろん楽しみだが、会場で食べるグルメも楽しみだった。幕の内弁当とかお蕎麦屋さんが館内にあるって聞いてワクワクしてたね。

列に並んでいる時や座席に着いてから思ったが、年齢層はやはり高め。
普段はピューロランドやシアターGロッソ等、家族連れやキャピキャピした若者が多い場所に行くからちょっと新鮮。
あと着物を来た方がチラホラいて素敵だった。行事でしか着物を着ない私としては、普段着として着こなしている方にとても憧れてる。粋だね。

今回は初心者お助けアイテムとして事前にイヤホンガイドを予約しといた。
イヤホンガイドとは演目の進行に合わせて、物語の流れ・時代背景・出演役者などをリアルタイムで解説してくれるサービスのこと。
小型のラジオみたいな機械からコードが繋がっていて、片耳イヤホンで聞くスタイルだ。「解説してくれる」といってもずっと喋っている訳ではない。注目して欲しい部分は静かになるので邪魔にならず、ノンストレス。
歌舞伎は現代社会で使わない様な言い回しが度々出てくるので、私のような知識が少ない人間にとっては非常にありがたいサービスである。

開場時間になり、いざ入ってみるとロビーが大混雑してびっくり。さらにレストランでの食事は完全予約制の為、人混みをかき分けなんとか予約。「かべす」というお蕎麦屋さんで食べたが、出汁が出てて美味しかった~!また機会があれば食べに行きたいね。
座席では休憩時間のみ飲食可能なのでお弁当を買う人もいるらしい。

私がいた座席は2階席だったのだが、舞台全体が見渡せたので思ってたよりいい席だった。花道は若干見切れたけど、両サイドに花道を映したモニター画面があったからちゃんと見れたしね。
関係ないが、客席にいるとスマホが圏外になった。夏に「かげきしょうじょ!」の公演を見に行った時もそうだったから、劇場側があえて携帯の電波が届かない様にしているのかもしれないね。
最初パンフレットは買わないつもりだったが、悩んだ末に30分幕間に結局買った。めちゃくちゃ良かったです。



見どころ1 本家リスペクトと上手いオリジナル設定

舞台は石川五右衛門が実在した安土桃山時代
ルパン&次元は封印された国宝級のお宝「卑弥呼の金印」を狙っており、封印を解くためには
雄龍丸おりゅうまる雌龍丸めりゅうまるが必要なのだ。しかし雌龍丸は五右衛門の手の中で…。という場面からスタートする。

冒頭の戦闘シーンBGMは和風アレンジされたルパン三世のテーマで、定式幕に映されたタイトルは本編同様にタイプライターの打ち込むような演出とお決まりの効果音である。
もうリスペクトが凄い。さらに演目内ではアニメに出てきたセリフ盛り込まれているのも注目だ。
例えば、ルパンが変装して至る所に潜り混んだり、峰不二子の名言「裏切りはこの身を飾る宝石だ」などがあげられる。
次元の銃の音はつけでしっかりと再現。ここに様々なオリジナル要素を追加されるがこれがまたいい。

個人的に良かったシーンはルパンVS五右衛門の決闘シーン
本物の水を使った「本水」という演出がなされ、水飛沫をあげながら互いに一歩も譲らぬ真剣勝負は遠くの席でもかなり見ごたえあり。ちなみに舞台に近い座席では、水濡れ防止のビニールシートが準備してあるんだとか。ちょっと羨ましい。
あと花魁衣装の不二子も綺麗だった!彼女の持つ妖艶な魅力がしっかりと出ていて演者さんには感激。女性役でも演者は男性だからね…。凄すぎる。



見どころ2 遊び心溢れる役者方

前編でも述べたが、何となく格式ばったお堅いイメージがあった。
しかし、実際に行くと演者さん達の遊び心も満載で初心者でも取っ付きやすい雰囲気だった。

特に次元役・市川 笑三郎さんが印象的で、茶屋での食事シーンでは「近頃流行りの物価高だな」と言ったり、投獄された五右衛門を助けるために看守として潜入したところ「さっきまでの看守は残業時間が行き過ぎたので代わりに来た」と言い訳するなど終始和やかなムード。
ラストでは次のお宝は草薙の剣と聞いて息巻く五右衛門に対して「刀に目がない刀剣男士だ」ともあった。もともとお茶目な方なのかな?

ここで忘れてはいけないのが2幕目スタートに登場したマモーさん。
この方は「ルパンVS複製人間」で出てきたキャラらしく、2幕目が開く前の解説役として来てくれた。
私はあまりよく知らないキャラだが「大丈夫ですよ。怖くないですよ~」と穏やかな口調だった。さらに「複製人間ではなく、宇宙にも逃げない」と元ネタにも触れてなかなか好印象で素敵な方。
マモーさんの解説副音声付き配信とかないですかね。それくらい個人的には好き。

他には柳町の花道で、 ルパン役・片岡愛之助さんが出演した舞台「最遊記」の宣伝をさりげなく挟み、次元に「贔屓の役者は?」と尋ねると「片岡愛之助だ」と答える相方愛も良かった!
歌舞伎をあまり知らない層でも楽しめるような和気あいあいとした構成で初心者としてはありがたい限りです。



見どころ3 五右衛門×糸星の悲恋

本演目の重要ポイントなのだが、ぶっちゃけこの要素が一番刺さった。元々セラムンのオタクなので過酷な運命にある純愛カプに弱く、見事にハマりました。最高~!!

封印を解くキーパーソンである糸星は当初、雌龍丸を手にするために五右衛門を利用していただけだった。だが交流を続ける中で彼の心の深さに惹かれ、全てを打ち明けたのである。
五右衛門はすんなりと受け入れ「糸星のために協力する」と誓う。五右衛門が金印を狙っていた真の目的は愛する恋人のためなのだ。糸星自身も、長年生きて初めての事で心底メロメロに。
五右衛門、いい男すぎる。武士道精神に溢れた紳士じゃん!!
この後、ルパンの援助によりなんとか五右衛門と再会した糸星が、駆け寄って嬉し泣きするシーンがあるんだけどめっちゃ好き。本当に愛し合ってるのが伝わってくるよね。

しかしそんな幸せも束の間、敵に糸星の素性がバレ、洗脳されて自我を失ってしまう。そして 伊都之大王いとのおおきみという怪物に変えられてしまった。
糸星を正気に戻そうと五右衛門が尺八を吹くと、僅かに残る糸星の心が抗って見事復活!「私はあなたを忘れたことはない」という糸星の台詞がまた最高なんだよね。
このまま相思相愛ハッピーエンドかと思いきや「人の心を保てるのもあとわずか。呪われた運命は抗えず、人として居られるうちに五右衛門に切って欲しい」と懇願する。

五右衛門は、愛する恋人を切るなんて出来ないと険しい顔。
そんな彼に「最後は人として生きていたい。どうか自分を五右衛門の心に残して欲しい。」と強く望む糸星にやっと決意を固め、「そなたの赤い瞳を消して忘れない」と宣言。

そして2人は「いつか遠い未来で出逢おう」とぎゅっと抱き合い、糸星を手にかけた。
ここのシーンは本当に切なすぎて胸が締め付けられる…。
最後は雄龍丸・雌龍丸を糸星の亡骸ともに託し、安らかな死を願い、最終決戦へと挑んだのだった。
愛し合っていたが故だとしても辛すぎる最期だったね。でもこういうの大好き

歌舞伎ってバトルとか友情・親子愛が中心で、恋愛要素は少ない物が多いと思っていたが、こんないい物が見られたとは感激です!!
ルパンも歌舞伎もほぼミリしらだががめちゃくちゃ面白かった。
機会があれば他の演目も見てみようかな。とりあえずルパン歌舞伎、最高だったので円盤出して欲しい。出たら買うから!!!

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