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KAWAII KABUKIに感化されたオタクの歌舞伎鑑賞レポ(前編)

この記事を読んでいる貴方は
「KAWAII KABUKI~ハローキティ一座の桃太郎~」をご存知だろうか。
ピューロランドに居ながらにして本格的な歌舞伎演出が楽しめるミュージカルである。私はこのショーに魅了されついに先日、本物の歌舞伎を見に行って来た
そこで本記事ではKAWAIIKABUKIの魅力を、後日アップ予定の後半では歌舞伎の鑑賞レポートを綴って行こうと思う。

①観覧時のポイント


本ショーは2018年に開始し、現在も見ることが出来る。公演時間は40分程で館内では最長だが飽きることなく見られるのだ。
「なるべく前のいい席で見たい!」という方は、館内で当日販売される優先入場チケット・ピューロパスを購入するか、開場時間が近くなると出来る入場待機列に並ぶのがオススメ。無課金でも見られるけど、たまに満席で見られない事があるから入場はお早めに。
さらに別売りの公式ペンライト・ミラクルハートライトを持っているとフィナーレのライブパートで使えるよ!
このペンライトは館内の様々なショー・パレードで使えるから持っておいて損はないアイテムです。館内のショップや公式オンラインショップで買えるからチェックしてみてね。


②歌舞伎初心者でも楽しめる演出


なんと本公演の制作スタッフは実際に歌舞伎に関わっている方ばかりである。
物語の重要人物・ゴロウの声優を中村獅童さん、映像出演として坂東巳之助さんを招き、脚本・演出・楽曲の作詞をスーパー歌舞伎でお馴染みの横内謙介さんが担当。
歌舞伎演技の指導は市川笑三郎さんで、音楽関係は松竹ショウビズスタジオが手掛けている。流石サンリオ、めちゃくちゃ気合の入ったキャスティングだ!凄すぎるね。


会場のメルヘンシアターに入ると、オレンジ・黒・緑の縞模様にキティちゃんのイラストが描かれた定式幕が見える。これは実際に演舞場で使われている配色と同じもので、ショーを見る前から歌舞伎要素たっぷりだから私のような歌舞伎初心者も歌舞伎オタの方も楽しめるのがポイントだ。
もちろんショーの中にも歌舞伎ならではの演出が数多く登場する。拍子木はもちろん、五・七・五のリズムで名乗りを言う「渡り台詞」、セリフを言わずにゆっくりと動く事で暗闇を表現する「だんまり」などがあげられる。
歌舞伎玄人の方は公演にどんな技法が登場するかに注目して見るのも楽しいかもしれない。

③心温まるサンリオ流「桃太郎」



舞台はハローキティ一座によるこけら落とし公演「桃太郎」で幕を開ける。ちなみに「こけら落とし」とは新設・改築された劇場で初めて行う催しの事。実はこれを見るまで知らなかった。

財宝を手に入れた鬼のボス(ばつ丸)を成敗すべくやって来た犬・猿・雉(プリン・ダニエル・シナモン)が戦いを挑む。
鬼との戦いに悪戦苦闘する三人の前に、満を持して登場したのが桃太郎を演じるキティちゃん!名乗り口上のあとに「鬼を成敗致す!…といっても乱暴はしないからね。」と言ってソロ曲を歌いながら桃の花が付いたステッキを振るい始める演出が最高なんだよな。

ステッキの力により、鬼ヶ島は美しい花畑へ生まれ変わり、鬼たちの角にも花が咲き無事和解。そう、彼女達は決して力でねじ伏せるのではなく、相手との対話で問題解決をするのだ。劇中劇であっても企業理念「みんな仲良く」の徹底ぶりに思わず脱帽。この部分だけでもサンリオエンタメの良さがしっかりと出ている。あ、このシーンで1人だけ角に花が咲かない鬼がいます。伏線だから探してみてね!

場面は公演終了後の舞台裏へと移り変わるが、突如として停電してしまい辺りは暗闇になってしまう。ようやく電気が復旧すると目の前には、一座の誰も見知らぬ役者が…。果たしてその正体と目的は?キティちゃん達はそれを踏まえてどうするのか?乞うご期待!!


ここからストーリーのネタバレがあります。
マジで全部書いてあるので初見で楽しみたい方はブラウザバック推奨。



なんと彼の正体は、本物の鬼・ゴロウだった。
一同はとても動揺し追い払おうと試みる。そしてその様子を目の当たりにしたゴロウは、「人々を笑顔に出来るキティ一座に憧れていたが、自分がいると周りを怖がらせてしまう。だからきっと居ない方がいい。」と失意のままその場を後にする。
この場面で、ゴロウのソロ歌唱があるがこれが凄い。歌唱力が非常に高くてビブラートが効いた美しい歌声なのだ。あれかな、歌舞伎役者だから声が通るようになってるのかな。何度聞いても圧倒される。

そしてキティちゃん達は、「ゴロウを仲間に加え、もっと頑張ろう!」と彼を追って鬼ヶ島へ向かうのだった。
この様子が、ドラ○エ風ドット絵となってスクリーンに映し出される。BGMもレトロゲームっぽい音楽になるが、この為だけに作られたと思うと感動するね…。決して妥協しない、それがサンリオクオリティだ!


一方、鬼ヶ島ではゴロウの激しく複雑な心境をアグレッシブなダンスで表現。鬼たちのダンスはかなりキレッキレで迫力満点!
自暴自棄になったごろうは、「こんな角さえ生えていなければ…」と角を切り落とそうとする。他の鬼たちは夢を諦めきれず悲しみにくれる彼を嘲笑っていた。そんなさなかに背後から一筋の光と優しい声が聞こえてくる。キティちゃんが来てくれたのだ!!

ちなみに光の演出はオタクの誇張表現では無く、ガチで後光が指してる。
これはゴロウにとってキティちゃんは救いの女神であると同意義だろう。
まず彼女達は「本物の鬼に会うのが初めてで、見た目だけで怖がってしまった」と謝罪。そして勇気を出して来てくれたことに感謝し、「その角は個性だ」と言って手を差し伸べる。こういった事は大人でも中々難しい。キティちゃん達の真っ直ぐさと純粋さが伺える名シーンである。

ここで「心の繋がり」という劇中歌が始まるが、これがめちゃくちゃ良い。一部歌詞を抜粋して紹介しよう。まずは歌いだしから

私たちなら変えてゆける 乗り越えてゆける

まるでゴロウに語りかける様に温かみのある歌声で始まるこの歌。
そしてどんな状況でも自分と相手を信じて進む強さが込められている。続いてサビの部分。

世界が笑顔で包まれる 明日を創ろう
夢見る心 ひとつに重ねて つなぐ愛のリボンを
今 結ぼう!

まさに「みんななかよく」を表した歌詞である。
リボンを結ぶように、鬼たちとも心をつなげたいという彼女達の願いが込められているね。
さらに歌の間、注目して欲しいのがキティちゃんやダニエルがずっとゴロウに寄り添っている所。
彼の抱える苦しみ・悲しみに真っ向から向き合う姿勢は、マイナス感情にも目を向けて寄り添えるサンリオだからこそ出来る演出だと私は思う。この演目の最も好きなシーンで、見るたびに泣いている。最後は改めてゴロウを仲間に引き入れ、鬼たちとも手を取り合いながら終幕。ラストのライブパートではハローキティ一座のメンバーとしてパフォーマンスを披露したのだ。

最後に

以上が「KAWAII KABUKI~ハローキティ一座の桃太郎」の魅力ポイントでした!
このショーは「歌舞伎が気になるが、何となく敷居が高そう…。」という方に是非見て欲しい。私はこれをきっかけに歌舞伎への抵抗感が薄れて演舞場での鑑賞を決めた。逆に「歌舞伎は大好きだけどサンリオはよく知らない」という方はこの機会にピューロランドへ足を運んでみてはいかがだろうか。

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