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Animation & Poetry-short short CAKEs///complete edition



Cut 1. Sand 



たぶん嘘だと思うけれど砂漠を歩いていたらケーキに乗った男がものすごいスピードで走り抜けていった。綿飴のような砂埃が舞って空中をふわふわと漂っていた。その欠片が口に入ると甘かった。どうやら綿飴のようだった。


Cut2. Blues cheese



四十年かけてミュージシャンがブルースを聴かせ続けなければそこの店のチーズはできないんだぜ。そう言いながら悪魔が四分の四拍子のリズムで踊っている。



Cut3. Cake plane



昔食べた惑星は甘かった気がするけれど、大人になってから食べるとなかなか説明できないような味がするんだよね。


Cut4. Sugar



ケーキの上で彼は彼女を待ち続けたし彼女も彼を待ち続けた。二人はお互いに砂糖でできている事を知らない。


Cut5. Are you happy?



酸っぱいストロベリーソースをかける事で絶望も希望も少し収まる。


Cut6. Look for



大体の星は自分が見つかるのをずっと待っている。もちろん見つかった時にはもう自分はいないとしても。



Cut7. On the cake



ケーキの上でずっと誕生日を待っている。彼はみんなの誕生日を知っているが自分の誕生日を知らない。


Cut8. Room



その部屋に住むショートケーキはいつも宇宙の話をしている。結局宇宙っていうのは全部嘘なんだと彼女が言う。


Cut9. Millefeuille city



毎年シュガーバードがチョコレート大陸から渡ってくると街にココアパウダースノーが降り始める。ミルフィーユの街は途端にカカオの匂いが立ち込めていく。


Cut10. mountain



ある日ある惑星でホールケーキマウンテンが突然出現した。錬金術師は有給をとって盗賊は甘党になった。


Cut11. Smoking bird



スモーキングバードは大陸を移動していた。タバコが吸いたくなったがライターをどこかへ落としてしまった。大きなホールケーキがあった。その中心には蝋燭に火がついていたのでタバコに火をつけて息を吐くと蝋燭の火が消えた。今日はスモーキングバードの誕生日だった。


Cut12. Big strawberry city



その街には年に一度巨大なイチゴが落ちてくる。それを受け止めるために巨大なスポンジケーキを作っている。


Cut13. Night pool



そのブルーベリーケーキは夜の間だけプールになる。夜空がプールの水面に映っている。プールに飛び込むと夜の中を泳いでいるみたいだった。


Cut14. Dice



サイコロの出た目によってそのケーキは味を変える。サイコロごと食べてしまったので今はみんな同じ味になってしまってる。



Cut15. Cut into pieces



彼女たちはケーキを切り分ける様にその街を作っていった。そもそもその材料がどこから来たのかは誰も知らない。


Cut16. Candy



電波塔の展望室で雨模様を眺めていると隣にいた男が言った。「これは雨じゃない!飴だ!」


Cut17. Cinematic



ネジを巻いてレモンミルクケーキが深海を探索していると世界で初めて魚類の映画館を発見した。映画館のネジを巻くと音が鳴り始めた。映画館から人が出てきて目が合った。お互い何も言わずに見ていたが向こうは首を振って路地へと消えていった。


Cut18. Works



次の誕生日まで火を絶やさずに次の街にあるケーキの上の蝋燭に火をつけるのが彼の仕事だった。


Cut19. Sleeping



真夜中の3時に食べたケーキの味が思い出せない。なぜなら夜の昼寝をしていたからだ。眠っている間に食べたケーキの味なんて覚えているわけないだろ?


Cut20. Timeless



大丈夫、時間なんてそもそも存在しないから。
私たちは同時に存在しているだけだから。
ミルフィーユの薄い層に挟まれて身動きが取れないとか思っているだけだから。



Cut21.Balance



世界について考えている。
世界は言う。
世界にはバランスが必要だ。
私は毎日知らない人たちのためにケーキを焼いている。
でもレシピ通りなんかじゃない。
毎回違う分量の砂糖や薄力粉やバターや生クリームを入れているし結構な頻度で卵の黄身が二個入っていたりする。バランスなんていらない。


Cut22.Meets



甘い電波にのった甘い宇宙の物語の中で俺や僕や私は出会う。偶然と必然の黄金比が寓話を作る。


Cut23.Cranberry Chiffon Cake



世界が終わった。それは嘘だった。青かった地球は何かがぶつかって砕けて色を失った。でもどういうわけか私は死んでない。宇宙も死んでない。ただ宇宙空間を漂っている。どこまでも暗い。それから10万年くらい経った。もっとかもしれないけれどよくわからない。赤くてふわふわした星が見えた。口の中にクランベリーシフォンケーキが入り込んだ。



Cut24.end roll



私はいつも同じ映画のラストシーンで泣いてしまう。厳密に言えばエンドロールとそこでかかる音楽を聴いて泣いてしまう。隣に座る彼は私が泣いていることに毎回気がついているけれど毎回気がついてないフリをしてくれる。私は涙をそのまま垂れ流している。頬を伝ってしょっぱい海水が口の中へ入っていく。海に浮かぶテーブルの上に本日のケーキとダージリンティーが乗っている。




Cut25.Liar



錆びついた嘘によってこねてこねて作られたチョコレートケーキによって私も彼も夢の中で再会できたのよ。




Cut26.inventor



発明家の母は電気信号によって甘さを操作できるケーキを発明した。それは甘い生活を忘れてしまった発明家の父に対するちょっとした反抗だった。



Cut27.vacance



太陽光発電を応用してバカンスを生成するケーキ




Cut28.Time loop



彼女は誕生日が来ない事を祈っている。
なぜなら彼女は29歳の誕生日をタイムループしているからだ。



Cut29.no-bake cheese cake



レアチーズケーキだけが知っている事がある。
それは世界が思っている以上に寂しがり屋だということだ。

Cut30.Gravitation



本当に美味しいケーキは重力を忘れさせるものよ。



Cut31.pastry chef



ある日ふわふわなケーキたちは重力を忘れてケーキの上に乗っていたイチゴは勝手に歩き出した。パティシエとしてのわたしの最初の仕事はそれらを捕まえることだった。



Cut32.Sense of touch



みんな世界に甘やかされてる。
肌で感じる全てが甘くて優しい。
そうやって君たちはケーキになっていく。



Cut33.Memory



ある夜、
隣で眠っていた彼女が突然起き出して話し出した。
私は昔誰かのバースデイケーキだったの。
どういうこと?
どうということでもないわ。言ったままの意味よ。
とにかく彼女の話を聞いてみることにした。



Cut34.ghost



ストロベリーソースとクリームの香りに惹き寄せられて甘党のゴーストを捕まえる。



Cut35.Olympic



オリンピックの新種目



Cut36.revolution



革命的なストロベリーケーキは太平洋を渡る準備をしている。それはいいけれど、うちのプールでやるのは勘弁してほしい。



Cut37.Black Hole



チョコレートケーキの上で踊る星は周りの星から見ると止まって見える。チョコレートケーキの上の重力がブラックホールと同じだからだろう。



Cut38.cake port



街を出るには週末に街にやってくる巨大な空飛ぶケーキに乗っていくしかない。



Cut39.once a year



一年に一度巨大なフォークとスプーンは踊りながらやってきて家をケーキのように掬ってどこかへ行ってしまう。何度説明を受けてもそれがどうして起こることなのかわからない。面倒な手続きをすれば家の補修費は助成されるけれど、これが本当に面倒なんだよな。



Cut40.park



公園の滑る台を降りると公園全体が大きな音を出して空中に浮かび上がった。ここは公園だと思っていたけれど要塞だった。まぁそれだけの話だな。



Cut41.sign



そのケーキを食べるために標識に従って進んでいたが一向に食べることができない。そういう種類のケーキもあるってことだ。



Cut42.chocolate stardust



ガトーオペラを歌うためには、まずチョコレートスターダストを集めなければいけないんだと探検家は教えられたがいまいち納得がいってないのは否めない。



Cut43.strawberry sauce



巨大なケーキ工場で作られているケーキが入っている箱のパッケージデザインの暗号を解いて南極まで来ると氷山にストロベリーソースをかけるための装置があった。結局これが何のために誰が作ったのかはわからないままだ。



Cut44.orange cake



このケーキの中身がどんな味なのかを想像する好奇心によって発電された電気でこの店の電気は賄われている。



Cut45.night radio waves



夜の電波を流すとスピーカーの上のストロベリーが甘くなっていく。


Cut46.universe



彼はコーヒーをかき混ぜながら宇宙について考えていたということだけしか覚えていなかった。



Cut47.Discotique



家に帰るとまだ家族は誰もいなかった。冷蔵庫を開けると近所のケーキ屋の箱が入っていた。それをそっと取り出してテーブルの上に置いた。箱の中から微かに音が鳴っている。音を立てない様にゆっくりと時間をかけて中を覗き込む。ケーキの上でチョコレートでできた星が踊っている。おそらく宇宙で一番小さなディスコだろう。



Cut48.Ruins



古代都市があった遺跡の中央には誰も開けることのできないケーキがあった。ある日空から鍵が降ってきてそのケーキの鍵穴に差し込まれた。その瞬間にケーキは急激に腐り始めてあっという間に土と見分けがつかなくなった。



Cut49.Tower



あなたの街に遊びにきた時に地面が突然隆起して巨大な塔が出来上がった。それに巻き込まれてあなたの家が塔に引っ付いてしまった。あなたは塔をよじ登りながら叫んだ。「これはでかいケーキだぞ!」
だからなんだ?とぼくは思った。



Cut50.Candle



巨大なロウソクに火をつけた。その火はゆらゆらと揺れてケーキの蜃気楼を見せた。その現象をティラミスと言う。



Cut51.glasses



右目がレアチーズケーキで左目がラズベリーケーキでとにかく何も見えなくなるけれど、そもそも僕たちは何でもかんでも見えてると思いすぎてるのでたまにはこう言うのも悪くない。




Cut52.Garage



よくあることだけれど、ティラミスだと思っていたらそれはガレージだった。ガラガラとガレージのシャッターが開いて赤い車でそのまま入ると中は思っている以上に広かった。しばらく進むと高速の料金所があった。料金所の窓が開いて男が顔を出した。名札には「ガトー」とあった。「ここは何ですか?」そう聞くと男は退屈そうに口を開いた。「ケーキはどれだけ細かくカットしてもケーキのままで素粒子まで分解してももちろんケーキのままのはずでつまり宇宙はケーキでできている」それだけ言って窓を閉めた。料金所のバーが上がる。男の姿は暗闇に溶けて見えなくなった。ゆっくりと車を走らせていくが先が全く見えなかった。




Cut53.Dream



いつの間にかケーキの上で眠っていた。ケーキベッドの上で眠っているととても甘い夢を見ることができるらしい。ケーキベッドにはいろいろなタイプが用意されていた。ビターチョコもあれば生クリームたっぷりのものもある。僕は赤いケーキベッドを選んで眠ってみた。ストロベリーケーキだと思ったら違うようだ。甘酸っぱいラズベリーを使った冷凍レアチーズケーキだった。それはほとんど現実のような夢だった。




Cut54.Happy Birthday



誕生日の人しか入れない街があるらしい。その街を冒険家が探していた。冒険家は自分の誕生日がいつなのかわからなかった。ある日何気なく降り立った街で見知らぬ女から「ハッピーバースデイ!」と言われた。もしかしてここが探していた街なのか?女に手を引かれてカフェの中へ入るとロウソクが一本だけ刺さったバースデイケーキが目の前に置かれた。促されるままにロウソクの火を吹き消した。クラッカーの音があちこちからして「ハッピーバースデイ!」と言う声が聞こえた。女にここが誕生日しか入れない街なのかと聞く。「いいえ、この街に入った日がその人の誕生日になる街よ」


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