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夜はいつでも回転している

82夜 泥棒


今日は仕事を休みにして久しぶりに飲みにいった。店を出ると雨が降っていたが傘を持っていないのでそのまま濡れて帰った。昔から傘を差すのが苦手だった。酔いも醒めて帰宅すると部屋の物が綺麗になくなっていた。泥棒が泥棒に入られるとはね。部屋にあったのは盗んできた物ばかりだった。もうどこで盗んできたのか思い出せない。押し入れを開けるとひとつだけ盗まれていない物が残っていた。懐かしいラジオだった。これは盗んだ物じゃない。盗みを始める前に持っていた物だった。もう随分前に処分した筈だ。なのになんでここにあるんだろう?まぁいいか。しかし盗んだ物は盗まれて自分の物は盗まれないなんて皮肉というか奇妙なこともあるもんだ。ラジオのスイッチを入れるとまだ電源が入った。ラジオから誰かが話している。時間の進む速度が速くなっているらしい。宇宙規模での重力の異常が発生しただとか、それは極小のブラックホールが原因だとか、通常のエントロピーの増大とは異なっているだとか科学者たちがあれこれ好き勝手な事を言っている。どうせ全部間違っている。外ではゆっくりと雨が降り続けている。俺はなんで泥棒なんかになったんだっけ?思い出そうとしてもうまく思い出せなかった。たぶんもうここは過去とも未来とも繋がっていない。この雨が宇宙をゆっくりと腐らせていった。


End 

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