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私のダンナが辞めるまで(14)

向き不向き

その日の仕事終わり、協力会社に転職した先輩と会うことになった。
自称名探偵のせいで私たちの結婚が広まったこと、チャラ人事野郎による嫌がらせ、ジュニアの協力と、私が辞めない方法を考えるようにアドバイスがあったことなど、全てを話した。

「確かに、男が転職する方が簡単だし、2人が長く働き続けるにはいい考えだと思う。
でも、1つ問題がある。
あいつ(夫)が転職活動出来ると思わない。」

先輩の言う通りだった。
人見知り、自己アピール苦手、気の合う人としか話さない。全く面接向きではない。
誠実で器用なため、期待以上の出来栄えの仕事をして、後から評価が上がるタイプなのだ。
今の会社には作業員のアルバイトとして入り、社員になった。

「お前、ウチくるか?社長喜ぶぞ」

先輩それ、夫に言ってください!
私はお願いした。
「無理。社長が納得しないよ」
先輩は即答する。私は泣きたい気分だった。

社長

金曜日、協力会社の社長がお祝いをしてくれた。
1軒目は思い出話と夫との馴れ初めを話した。社長は嬉しそうに聞いていた。
2軒目で、社長の会社について聞いた。
先輩は新規事業の営業責任者で、毎日飛び回っているらしい。
新規事業…!!!
私はその事業について詳しく聞いた。
正に夫がやりたかった、現場の仕事だった。
私は姿勢を正し、社長を見つめた。

無礼を承知でお願いします。
社長の会社で夫を雇って頂けませんか?
責任感を持ってコツコツと仕事をこなす、現場に必要な人材です。
今の会社では、やりたくない営業をしながら燻っています。
新規事業、夫に任せて頂けないでしょうか?

「うーん…貴女じゃダメなの?」

いえ、私には現場経験がなく、十分にお役に立てません。その点、夫は即戦力です。
社長、私たち夫婦を助けてください!

私は頭を下げた。
社長はしばらく黙っていた。

つづく…



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