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私のダンナが辞めるまで(26)

祝杯

数日後、営業部の役員が私たち、課長、夫の背中を押してくれた同僚、協力会社の先輩を集めて、お祝いの会を開いてくれた。

「改めておめでとう。もしも彼女を泣かせたら、ここにいる全員であなたを殴りにいきます。だから頼む、いつも笑顔にしてやってくれ。」

夫は「はいっ!」と珍しくシャキッと答えた。
私はほとんど泣き笑いだった。

それから和やかな時が流れ、宴も終盤に差し掛かった頃、協力会社の先輩が言った。

「すまん!新規事業、延期になった。」

えええええーーーーー!!!
そこにいる全員が同じ顔をしていた。

「大丈夫。予定通り3月から雇うから。ただ、しばらく空港で働いてくれる?俺も時々フォローするから。」

いや、大丈夫ではない。夫は英語アレルギーだ。英語の入社試験を白紙で出し、人事から"前代未聞"と言われた男なのだ。

「でさ、朝早いシフトになると思うから、新居は空港の近くでよろしく。」

(いや、よろしくじゃないから!)

衝突

期限付きだが、空港職員になることが決まった夫。

すぐに子供が欲しかった私たちは、新居を私の実家近くで考えていた。
実家と空港は、私たちが住む県の両端に位置しており、夫も私も私の両親親戚も、空港側は土地勘がない。その上、空港付近は治安面の不安もあった。

一番反対したのは、私の両親だった。
「考え直しなさい!親戚の皆も心配してるわ。貴女が妊娠したら、あの距離を電車で通うのよ?分かってるの?旦那さんは車なんだから頑張って通ってもらいなさい。」
確かに空港付近に住めば、今の会社まで2時間かかる。しかし実家付近に住めば、夫が朝6時出勤のため、3時に家を出発することになる。

私たちは散々迷った末、空港から少し離れた、現在開発が進んでいる地域を探すことにした。
そこならば空港職員か、県外から越してきた人が多く、治安も比較的良さそうだったからだ。

新居探しは思いの外、難航した。2人とも働きながら、結婚式の準備をし、知らない土地で家を探す。どちらも期限が決まっている。
しかし夫は指示があるまで動かない。
必然的に喧嘩も増えた。

そんなある日、事件は起こった。

つづく…



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