見出し画像

プライベートバンカーが富裕層に会う前に必ず行う営業の事前準備

こんにちは、ともです。
営業歴14年、今はヤプリでマーケティングを担当しています。

私の営業人生は野村證券の新規営業からスタートし、外資系金融機関(クレディ・スイス)に転職しプライベートバンカーとして上場企業オーナーや富裕層の方々とお仕事をしてきました。

最近、営業をしている若い方から「営業トークがうまくいかない」「営業の成果が上がらない」という相談を受けました。よく話を聞いてみると相手の行動を促すためのポイントと準備が足りていないと気づいたので、私が現役のプライベートバンカー時代に行っていたことをまとめました。
今回はプライベートバンカーとが富裕層の方と会う前に必ずおこなっていた営業の事前準備についての内容です。

メリットとベネフィットの違いを理解する

営業の目的は、相手の行動を起こし売上を上げることですよね。そのためには、相手の行動を促すためにもっとも重要な要素「ベネフィット」を理解することが大事です。

メリットは聞き慣れた言葉かもしれませんが、「ベネフィット」という言葉は聞き慣れない方も多いと思います。「メリット」と「ベネフィット」は何が違うのか、まずは言葉を整理します。

メリット:商品やサービスが提供する特徴や売りの部分
ベネフィット:メリットの先にある満足感、嬉しい変化の表れ、プラスの体験

どのような違いを感じましたでしょうか?

最も大きな違いは、主語です。
「メリット」の主語は、自社→この商品の特徴は〜
「ベネフィット」の主語は、相手→この商品を手に入れることであなたは

俗に言う売れない営業トークは、「メリット」だけになっています。
自社の商品の「メリット」を上手に説明しても、相手に「ベネフィット」を提供できなければ相手の行動を促すことがはできません。

メリットとベネフィット.001

商品に特別な魅力があれば「メリット」だけで相手が動くことはありますが、商品力に頼る営業は限界も早いです。営業担当者が行うのは相手の課題を見つけ、自社の商品のメリットで解決することです。それこそが営業の介在価値です。

メリットとベネフィット.002

「ベネフィット」の重要性は、広告の世界でも重要視されています。言葉の力で相手を動かすコピーライティングにおいても「ベネフィット」はもっとも重要な項目です。

広告の中で「見出し」はもっとも重要な項目ですが、効果的な見出し3パターン
・得になること(ベネフィット)
・新情報
・好奇心
「得になること」(ベネフィット)
1番効果的な見出しは、読み手の得になることをアピールする、つまり、相手のベネフィット(ためになること)に基づく見出しだ。この見出しが読み手に伝えるのは、相手のほしがるもの、しかもそれをこちら(自社)が提供する、ということだ。
引用:ザ・コピーライティング P63 効果的な見出し3パターン

広告の中で「見出し」は最も重要

1番効果的な見出しは「相手のベネフィット」を伝える

人が介在せず言葉だけで相手を動かすことができるのが「ベネフィット」の力であり、同様に営業で相手を動かすのも「ベネフィット」です。

メリットとベネフィット.003

では、相手を動かすために必要な「ベネフィット」はどのようにして生み出すのでしょうか?
ベネフィットを導き出す方程式は、

ベネフィット=メリット+相手の課題

自社の商品のメリットは、勉強してロールプレイングをすれば身につけることができますが、「相手の課題」を引き出すために必要なことは相手を知ることになります。繰り返しになってしまいますが、「ベネフィット」の主語は相手です。

相手を知り、信頼関係を築くことが「ベネフィット」を生み出すために必要不可欠です。ここからは、私がプライベートバンカー時代に実践していた方法を紹介します。

相手を知るためには何をすればいいのか?

今回は、具体性を持たすために㈱ファーストリテイリング(UNIQLO)代表取締役会長兼社長 柳井 正さんに5分だけ時間をいただく機会をいただいたという想定にします。(※私が現役のプライベートバンカーの時にお付き合いがあったわけではなく、みなさんがご存知であるという理由での選出です。)

まず、相手の課題にたどり着くための3ステップはこちら。
1 準備
2 仮説
3 ぶつけてみる

答えは相手が持っているため、商談で相手に話をしていただいて初めて正解が分かります。営業担当者が本番までの準備をどう行うかで、相手の課題にたどり着けるかが決まります。今回は、もっとも大事な準備にフォーカスします。

営業で事前準備が大事なことは耳にタコができるくらい当たり前なことですよね。私がプライベートバンカーの時に事前に入念な準備が大事だと教えってもらったのは、富裕層の方にとって最も大事な「時間」をいただくするからです。1度目にお会いした時に「無駄な時間だったな。」と思われたら、2度目のチャンスが訪れることはありません…

これは富裕層の方に限った話ではないと思います。新規営業においては、1回目の面談でどれだけ相手の信頼を勝ち得るかが重要ですよね。そのために準備を行うことは営業を行う立場の人にとって最低限のマナーと言っても過言ではないです。

本田 圭佑選手の言葉
「準備が全てだと僕は思っているんで準備の段階で試合は始まっている。」

では営業の事前準備とは何をおこなうのか?私が実際に行っていたのは、会社について&個人についての2つです。

・会社:事業の方向性と課題
・個人:3つの顔

会社:事業の方向性と課題

上場企業の情報は、IR情報にすべて記載され、公開されています。

IR(Investor Relations:インベスター・リレーションズ)とは、
企業が株主や投資家向けに経営状態や財務状況、業績の実績・今後の見通しなどを広報するための活動を指します。
引用:SMBC日興証券 初めてでもわかりやすい用語集

こちらが㈱ファーストリテイリングのIRページです。

クリックしていただいた方は膨大な情報量に驚いたかもしれません。もちろんすべてを見ることは難しいので、絶対に抑えるポイント2点はこちらです。

・有価証券報告書
・決算説明会

有価証券報告書の見るポイント

有価証券報告書とは、
企業の概況/事業内容/設備状況/営業状況/財務諸表が記載されています。証券取引所に上場している企業には事業年度が終わるごとに提出が義務付けられています。
引用:コトバンク ASCII.jpデジタル用語辞典の解説

中を見ると100ページを超える膨大な内容なのですが、見るべきポイントは以下の2点です。

第2 【事業の状況】
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】
2【事業等のリスク】

例:㈱ファーストリテイリング 2019年8月期 有価証券報告書より抜粋

スクリーンショット 2020-09-27 21.34.50

スクリーンショット 2020-09-27 21.34.59

この2ページだけでも㈱ファーストリテイリングが何を目指し、何がリスクなのを把握することができますね。

有価証券報告書の重要性は以前に書いたアポイント取得の方法のnoteにも記載していますので、ご参考までに。

決算説明会の見るポイント

決算説明会(けっさんせつめいかい)とは、
上場企業が主にアナリストや機関投資家に対して企業の業績や計画、戦略などを説明する会。年に2 - 4回行われる。企業のトップが説明することが通常。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)

先程の有価証券報告書の中から特に重要な戦略を企業のトップや役員の方が自ら説明します。アナリストや記者に説明するので、資料も先程よりも断然分かりやすいです。

例)
2020年8月期の第2四半期の決算説明会「ファーストリテイリング今度の展望」2019年8月期の期末の決算発表会「ECを本業に

ここまで調べて見ると、

・さらなる出店/経営のグローバル化を促進
・店舗とECの融合
・「情報製造小売業」への変革:お客様の声をすぐに商品化/情報発信の強化
・サステイナブルなモノづくり
・柳井さんが多くの意思決定をしている経営体制
など

他にもたくさんありますが㈱ファーストリテイリングが会社として何を課題に感じ、何を目指しているかの方向性を掴むことができました。

今回は上場企業のケースで紹介させていただきましが、未上場企業の場合でも一部情報が公開されています。
以下の情報媒体は私がプライベートバンカー時代に重宝していたものです。

ここまでの準備で、相手の会社の目指す方向性と課題が見えてきました。大まかな会社の方向性が見えた次は、個人について調べていきます。

相手がサラリーマンの場合や相手が複数になる法人営業の場合、ここまでの準備でも十分です。相手が経営者や創業者、それに順ずる役員の場合はさらに深堀りする必要があります。

私がプライベートバンカー時代に教わったのが、経営者が持つ「3つの顔」です。

3つの顔とは、

私たちがサラリーマン/プライベートの顔持つように、経営者は「3つの顔」を持っています。

①会社での顔:会社における役割。例「代表取締役社長」 
②プライベートの顔:家族における役割。例「父親/母親」
③資本家の顔:会社を所有する株主としての立場。

メリットとベネフィット.001

この3つは切り離して別々のものではなく、重なり合います。そして重なる部分が経営者特有であり、もっとも頭を悩ます問題を抱えています。


①会社&②家族「子供に会社を継がせるか?/社内から登用するか?」
①会社&③株主「会社を拡大/縮小していくのか?外部資本を入れるか?」
②家族&③株主「株式を家族に相続するか?外部や社内の役員に譲渡するか?」

これらの悩みは、身近にいる家族や会社の従業員にも話せる内容ではありません。ごく一部の信用できる人にだけ打ち明ける内容です。なので、この点について調べておくことで、相手の核心に近づくことができるのです。

例)㈱ファーストリテイリング 代表取締役会長兼社長 柳井 正さん

①会社での顔:代表取締役会長兼社長

スクリーンショット 2020-09-27 21.32.33

②プライベートの顔:奥様と息子様が2人。息子様は2人とも会社の取締役。

スクリーンショット 2020-09-27 21.32.49

スクリーンショット 2020-09-27 21.33.01

③資本家の顔:筆頭株主

スクリーンショット 2020-09-27 21.28.42

ここまでをまとめると、
①代表取締役会長兼社長
②妻と息子様2人/息子様は取締役
③個人で21.59%/家族や資産管理会社を含めると約46%を保有

株式ファーストリテイリングは世界を代表する大企業ですが、日本で最大の同族会社ということが分かります。

ーーーーーー✂ーーーーーー

会社:事業の方向性と課題/個人:3つの顔について調べてきました。
ここまで読んでいただいた方は、㈱ファーストリテイリングならびに代表取締役会長兼社長 柳井 正さんについて詳しくなったと感じているのではないでしょうか。

この材料を元に自分なりの仮説を立てて5分の面談に挑む営業担当者と何も調べない営業担当者のどちらが良い結果を手に入れるかは、一目瞭然ですよね。

では、最後にまとめます。

まとめ

・相手が行動を起こすのは「ベネフィット」を感じた時
・ベネフィット=自社のメリット+相手の課題
・事前準備で相手を調べることで営業の勝敗は決まる

・相手を知るには、会社/個人の両方の側面からリサーチ
・会社は、事業の方向性と課題
・個人は、3つの顔(会社での役割/プライベート/資本家)

最後の方はマニアックな内容になりましたが、参考になれば幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

Twitterをメインに発信していますので、フォローお願いします。




新しい本を買ってまたnote書きます!