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【Edge Rank 1024】江戸締めと3331【TOMAKI】

日曜日、近所の神社の前を通ったら、境内の方から軽快な手拍子の音が聞こえてきました。

「タンタンタン タンタンタン タンタンタン タン」

柏手を三回たたいて一拍休み。三回叩いて、また休み。さらに三回叩いて一拍休んだ後、最後に一回手を叩く。3・3・3・1のリズム。これが、江戸締めの手の叩き方。

3331と言えば、千代田区にある元中学校だった建物を再生した複合アート施設「アーツ千代田 3331(以下3331)」のことがまず頭に浮かびます。この施設名の由来となったのも、この3・3・3・1の江戸締めのリズムです。

アーツ千代田 3331

千代田区外神田の旧錬成中学校が「3331 Art Chiyoda」として立ち上がったころ、僕はそこから徒歩圏内にある神田須田町のオフィスに勤めていました。2010年頃ですね。「なにやら面白そうなアート施設ができたらしいぞ」と聞いて、会社帰りに外から眺めてみたのを覚えています。

その後、「英語でアートのブログを書く」という、一粒で三度美味しいというようなワークショップに申し込んだ際に、初めて建物の中に入りました。その時に、3331の元教室だった空間をアトリエとして活用して6か月間の滞在制作をするというプログラムのことを知ります。

応募締め切りまで、残りあと1週間程度。参加費の工面もそこそこに、さっそく飛び込んでみることにしました。

2011年11月から翌年4月にかけて、 時間を見つけては会社帰りや週末などに3331へ立ち寄り、その場で絵を描いたり、動画を配信したり、あるいは現場のショーウィンドーのあるエリアにWi-Fiにつないだプリンターを置いて外出先から写真を送信して会場でプリントアウトしたりなどという滞在型の制作・展示を行いました。ブログ記事をごっそりたくさん紙に印刷して壁一面に貼ってみたり。娘と一緒に絵を描いたり。修了展では、過去につくった1万点以上の待ち受け画像作品を紹介しつつ、それと同時に記録メディアのフロッピーディスク、ZIPディスク、microSDカードといった時代の変遷による小型化と大容量化を表現する展示も行いました。めちゃめちゃ楽しかったですよ。

6人でこの教室をシェアしてアトリエにしました
活動レポート: https://drive.google.com/file/d/19v-Y1h1iYMKhxJFber3Gz9rxtuyOZsuA/view?usp=share_link

それ以来、3331にちょくちょく顔を出すようになります。

かえっこの工作ワークショップ

6か月間の滞在制作が終わった後も、3331へはギャラリーショップへ作品を置かせてもらったり、イベントに参加したり、展示を見たりなど、頻繁に訪れていました。そんな中、2012年7月 に3331で開催される藤浩志さんの美術展にて、「かえっこバザール」の工作ワークショップの企画を募集しているのを知りました。「なにやら面白そうだぞ」と、また飛び込んでみることにしました。

ワークショップのテーマは、「フォトウォール」にしました。現場で子どもたちに写真を撮ってもらって、そのデータをその場でプリントアウトして壁に貼るというもの。最初は割とがっつりと絵柄も決めた形でしっかりと作り込んだ提案書を出したのですが、藤さんからは「もっと自由な感じで、子どもたちが伸び伸びと楽しめるような企画が良いですよ」とアドバイスをいただき、堅苦しい作法やルールはとっぱらって、誰もがその場で参加して楽しめるような企画に直しました。

撮った写真をその場で印刷してフォトウォールづくり

結果、大きいお子さんから小さな子まで、みんなが参加して自由に楽しめるワークショップを開催することができました。ある程度ゆとりをもたせて、子どもたちの創造性に任せるというのも大事だなと思いました。そしてそれは、その後のワークショップの企画にも活かされることになります。

その後、現在に至るまで年に2回くらいのペースで、毎年工作ワークショップを考えて、先生役をしています。

2013年には、おもちゃに目や口の形をしたシールを貼って、顔をつくるというワークショップをやりました。

娘も一緒に
おもちゃに顔をつけるという遊び

子どもたちがつくった作品を見せてもらって、「お、目の付け所が良いねぇ」とか、「お目が高いねぇ」とかダジャレを言ってたのですが、あまり通じなかったみたい。お母さんたちだけが、愛想笑いをしてました。ダジャレはともかく、誰でも参加できる自由なワークショップということで、たくさんの子供たちが参加してくれました。

翌年の2014年には、会場にあるおもちゃの絵を丁寧に描くと、そのおもちゃがもらえるという、「絵に描いたぉもちゃ」というワークショップを開催。もちろんこのワークショップ名は「絵に描いたモチ」のパロディです。絵に描いたモチは食べることができないけど、頑張って絵に描いたおもちゃは持って帰って遊んでも良いよ、という企画。この時も、来場したたくさんの子供たちが参加してくれて、みんな一生懸命絵を描いてました。丁寧に描いた絵は会場に展示して、その代わりに絵のモチーフになったおもちゃは持って帰るという方式。

おもちゃの絵を描きます
上手に絵を描くと、そのおもちゃがもらえます

他にも、UVレジンを使っておもちゃをリメイクしてアクセサリーをつくったり、A4用紙をリサイクルして封筒や箱をつくったり、おもちゃを使ったしりとりをして遊んだりもしました。

UVレジンでおもちゃを使ったアクセサリーづくり
おもちゃでしりとり
オリジナルエコ封筒づくり、大盛況でした

2020年からはコロナ過の影響でしばらくワークショップができない状態が続いていましたが、今年は久しぶりに7月と11月にかえっこが開催され、ワークショップコーナーも復活しました。

久しぶりに子どもたちと一緒に、おもちゃ箱をつくったり、オリジナルの絵本をつくったり。やっぱり、楽しいですね。

つい最近も、11月23日に絵本づくりのワークショップをやりました。A4の紙1枚で、絵本をつくるというワークショップ。こちらに記事を書きました。

展示施工のお手伝い

3331と関連が高いのが、昨年開催された東京ビエンナーレ。3331のある千代田区だけでなく、周辺の台東区、中央区、文京区などのエリアを舞台に2年ごとに開催されるアートの展覧会プロジェクトです。本来であれば、2020年に第一回のイベントが開催されるはずでしたが、東京オリンピックと同様に開催が延期され、2021年夏の開催となりました。

この、第一回東京ビエンナーレが開催されるにあたり、3331 Arts Chiyodaの統括ディレクターを務める中村政人さんによる「優美堂再生プロジェクト」が立ち上がり、私も市民ボランティアとして参加することになりました。

リノベーション前の優美堂

神田小川町に古くからある元額縁屋さんの建物を再生し、新しいコミュニティアートスペースとしてリノベーションしようというプロジェクト。3千点を超える大量の額縁を建物から運び出し、埃と汗で真っ黒になりながら壁や床、天井を剥がしていく作業からはじまって、防水シートや断熱材を壁に貼り、シナベニアを打ち付け、その上から石膏ボードをかぶせ、ビス打ちをしたり、パテ塗りをしたり、塗料を塗ったりなど。いろんな作業を少しずつこなしていきました。インパクトドライバーや丸鋸の使い方を覚え、腰袋を買ってホームセンターで道具を揃え、差し金や墨の書き方を学んだりなど。会社の行き帰りに、大工さんや施工のプロの動画をスマホで観て「へー、こんなやり方があるのか」と感心しつつ。だんだんと「優美堂施工チーム」としてスキルと経験を身につけていきました。みんなで協力しながら、建物の補強のために大きな柱を立ち上げた時は、不思議な一体感があって面白かったですよ。

壁や床などを解体中の様子
柱を立て、だんだん綺麗になっていきます
完成した様子。コーヒーを飲みながら作品を鑑賞できます
外観も塗りなおされて、綺麗になりました

2021年7月に東京ビエンナーレがスタートした後も、ギャラリースペースに絵画を展示する「インストーラー」の仕事を学んだり、あるいは作家さんを招へいするための「キュレーター」的な役割で活動をしたり。もちろん、この場所を活用して街歩きの企画や、ちょっとした勉強会企画、あるいはみんなでホヤをさばいて食べるという企画など、いろんなイベントを開催させてもらいました。私の絵画作品も、何点かこのギャラリーで展示・販売しました。どれもこれも学びが多くて楽しい体験でした。

そんなことをしているうちに、優美堂の施工作業をけん引してきたリーダーが3331の施工チームとしていろいろな展示・施工の作業を担当することになり、必然的に優美堂施工チームがそちらをお手伝いする機会も出てきました。展示の準備のためにギャラリーに棚や壁をつくったり、石膏ボードを貼ってパテ塗りをし、塗料を塗っていったりなど。優美堂で学んだスキルが役立ちました。普段はパソコンの前に座ってばかりの仕事なので、こういう風に体や手を動かしながらみんなで作っていくという作業が楽しくて仕方ない。本当に、どれもこれも貴重な体験です。

優美堂から派生して、東京ビエンナーレの天馬船プロジェクトのサポート、東京Z学研究所の撤収と解体、kaekko Expo.の設営。3331での小池一子展の設営、平田哲朗展の設営と撤収、さらに3331 Art Fairのブース設営と、作品の販売など。そしてもちろん、これまでのかえっこのワークショップや、次の東京ビエンナーレに向けた設営や展示のサポートなど。最近では、来年開催される東京ビエンナーレのプレイベントとして、寛永寺の展示設営をちょこっとお手伝いしたり、大手町で開催されたSlow Art Collectiveの竹と紐を使った会場設営などをお手伝いしました。

昨年の東京ビエンナーレ。神田川に屋形船から1万艘の「天馬船」を流すお手伝いをしました
「小池一子展」の設営。何もないところに部屋ができるのがすごかった
3331の体育館に、藤さん一家と一緒におもちゃを並べました
10月に開催された「平田哲朗展」の展示設営と撤収のお手伝い
大手町のオフィス街に現れたSlow Art Collectiveのプロジェクト。設営のお手伝いをしました

この一年半の間に、3331や東京ビエンナーレをきっかけに、いろいろなところに飛び込んでいってたくさん面白い体験をさせてもらいました。

これからもこんな風に、いろんなアートプロジェクトや作品展などに関わっていこうと思います。

2023年3月に幕を閉じる3331

いろんな個人的な思い出が詰まった3331ですが、残念ながら来年の3月をもっていったん契約満了となります。大規模改修工事が始まるということで、いったんテナントも含めて全員が施設から出なければいけない、と。今後の方針や計画については、まだ確定してないとのことで。さて、どうなるんでしょうね。

それでもまぁ、東京ビエンナーレのプレイベントはあちこちでスタートしていますし、優美堂の活動も引き続きあるので、またいろんなところに飛び込んでいければと思っています。

というわけで引き続き、「日曜アーティスト」としてあちこち飛び込んで体験しながら学びつつ、いろんなつながりやきっかけを大事にして、もっともっと楽しんでいきたいと思います。

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今月のEdge Rank共通テーマは 「締め」 です。12月は締めの月です。終わりの締めかもしれませんし、お勘定を合計する締めかもしれないし、紐をぎゅっとする締めかもしれないし。
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編集後記

先月、神奈川県藤沢市片瀬町の「東リ町アートフェス」に参加した流れで、今月は週末に埼玉県小川町でちょっとした滞在制作をしてきました。「小川まちやどツキ」というゲストハウスをみんなで貸し切りにして、そこでちょっとした滞在型の作品制作をするという。私が参加したのは土曜の午後だけですが、そこでオールドレンズで写真を撮り、パソコンとスマホで加工してネガをつくり、近所のコンビニでプリントアウトしたものを使って、卓上プレス機で小さな版画作品をつくってきました。機材一式をバックパックに詰めて、ちょっとした滞在制作をするのはアーティスト・イン・レジデンスのようで楽しかったですよ。

滞在制作の様子はこちらに。

今回も、お読みいただきありがとうございました。
次号は、「東京散歩ぽ」の中川マナブさんです!

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「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。