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【Edge Rank 1100】レコードを聴いたり【TOMAKI】

デジタルとアナログについて

なんとなく「デジタル」って聞くと、パソコンやスマートフォンなどのIT機器を駆使してインターネット経由でオンライン上の仮想空間であれこれやってるイメージ。なので「ソロバンもデジタルだよ」って言われると、「えっ、どういうこと?」となる。電子化、イコール、デジタル化っていう通念自体は大きく間違ってはいないのだけど、データをコンピュータで処理しやすいように区切って数値に落とし込むのがデジタルなわけで。コンセントにつながっていないデバイスでも、ソロバンのように数値を区切って計算する機器はデジタル計算機である。計算器が電気で動くかどうかに関わらず、計算の仕組みによってデジタルになったり、アナログになったりするというわけだ。

まぁでも、だいたいにおいて「コンピュータ=デジタル」という認識が浸透していて、電子機器を通さない現実世界がおしなべて「アナログ」であるととらえられるので、そんな感じの解釈でも良いんじゃないかなと思う。

今回のEdge Rankのテーマは、「アナログ」について。

アナログレコードを聴く

子供のころによく父親のステレオコンポでレコードを聴いていた。やけにでっかいスピーカーが左右にひとつずつあって、真ん中にはレコードラックとレコードプレーヤーの他に、ラジオやアンプ、デジタル時計などが縦に積み重なっていた。そびえ立つ、巨大な音響機器。昔からわりと音楽が好きでした。特定の音楽が好きというよりも、音楽がある空間が好きという感じで。レコードで童謡やアニソン、クラッシックなど、とりあえずそこにあるものをかけて愉しんでた。

初めて買ったレコードを覚えている。幼稚園か小学校の低学年だったと思うが、レコード屋さんでアニメソングのベスト盤を買ってもらったのだ。「銀河鉄道999」、「宇宙戦艦ヤマト」、「バトルフィーバーJ」などといったテレビアニメの主題歌が入っていたのを覚えている。そのレコードを、繰り返し大事に聴いていた。ジャケットから取り出すときは指紋がつかないようにレコードの中心と端を持ち、スーツに使うエチケットブラシのような形のレコード専用のクリーナーで埃をとってから、プレーヤーにセットしてレコードの針を静かに下す。回転するレコードを眺めているのも好きだった。目に見えないくらい細かい溝の連続が、音楽になるのが不思議だった。

時代はアナログレコードからCDやMDに移り変わり、ダウンロードやストリーミングのデータ配信になるにつけ、レコードやカセットテープで音楽を聴いていたころのことなどすっかり遠い昔の記憶になってしまっていたが。今年の5月にニューヨークの小さなレコード店に密着したドキュメンタリー映画『アザー・ミュージック』の上映会とトークイベントに参加して、再びレコードで音楽を聴くのも良いなと思うようになった。

そのイベントに登壇していたサニーデイ・サービスの曽我部恵一さんが下北沢でレコード屋さんを経営していることを聴いて、わざわざレコードを視聴するためにその店に訪れたりもした(残念ながら、この「PINK MOON RECORDS」という中古レコード屋さんは先月閉店してしまった)。

その後も、横浜のくるり工房でワークショップを開催したときに、工房に置いてあるレコードプレーヤーや年代物の蓄音機でレコードを聴かせてもらったり。東京藝術大学の藝祭で100年以上前のレコードを蓄音機で聴くというイベントがあったので参加したり。そういえば東京ビエンナーレの展示でも、レコードが聞けるコーナーがあった。DJイベントでも何度かレコードを聴いている。現在自宅にはレコードプレーヤーがないが、実はITOCHU SDGs STUDIOの『アートな青果展』でついついレコードを購入してしまった。というわけで、レコードプレーヤーを購入するのも時間の問題だろう。すでに、欲しいプレーヤーの目星もつけてある。

11月18日から19日にかけて南青山の国連大学前で「Analog Market」というイベントが開催されていて、そこで見かけたレコードプレーヤーがかっこよかった。ネットで見かけて知ってはいたのだが、実物を見たのは初めて。クリスマスプレゼントとして、サンタさんにお願いしておこう。

レコードプレーヤーを物欲しげに見つめたあと、「Analog Market」の会場をぐるりと巡っていたら雄勝で大変お世話になったMORIUMIUSさんが出店されているのを見つけた。嬉しくなって、牡蠣のカレーを2種類購入。こういった僥倖に巡り合えるのは、やっぱりオフラインの現実世界ならではの体験だなと思う。

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アナログ人間?

もうすぐ50に手が届く我々世代が小さい頃は、身の回りにパソコンはなく、「デジタル」という概念がなかった。したがって、現実社会が「アナログ」であるという認識もなく、森羅万象はすべてありのままにそこにあった。オンラインがないから、当然オフラインもない。

私が初めてコンピュータを手にしたのは、中学生のころ。誕生日に、ナショナル製のマイコンを買ってもらったのだ。なんと、そのコンピュータには、メモリはあったがハードディスクがなかった。つまり、電源をオンにしている間はプログラミングしたものを保存しておけるが、電源を切るとつくったものがすべて消えるという。ちなみに、別売りでカセットテープにデータが記録できるデバイスが売っていたが、高価なので買えなかった。何時間もかけてポチポチと入力したピンポンゲームが、プレイしている途中に電源が切れて消えてしまった時は、泣きそうになったよね。

大学では、人類学を学ぶ予定がふとしたきっかけでアート学部に転部。陶芸彫刻をメインに、油絵、写真、彫刻、版画など片っ端からいろいろなアートのクラスを取りまくっていたが、唯一在学中に受講できなかったのが「デジタルメディア」のクラス。アート学部棟の中で、唯一入ったことがなかったのが、デジタルアートを制作するための機材が置いてあるコンピュータラボだった。ネバダ州のリノの大学を卒業して、1年間の就労ビザを申請し、それが届くまでの間少し期間があったので、夏の間だけ「Wall Works」というギャラリーインスタレーションの実践的なアートのクラスを受講した。その時の先生がたまたまデジタルメディアも教えている方だったので、夏の間だけラボの機材を使わせてもらうことになり、その時に初めてPhotoshopを触った。バージョンがたしか3.0とかの時代。まさかそれが、ロサンゼルスでの写真の仕事につながり、その後も日本に帰国してからウェブ制作の道へと進むきっかけになるとは。人生のご縁って不思議だ。

ここから、どっぷりとパソコンとインターネットの世界にのめりこんでいく。平日はひたすらずっとパソコンの前に座ってウェブデザイナーとして外資系企業のウェブサイトをつくりつつ、週末はカメラを片手に散歩しながら写真を撮ったり、それをまた自分のサイトやブログにアップするということを続けていた。趣味でガラケーの待ち受け画像をひたすら作り続けていたこともある。なんだかんだで1万種類くらいつくり、150誌以上の雑誌や書籍で作品が紹介された。

そんな感じでひたすらパソコンで創作活動をしつつ、一方でもっと手を動かして作品をつくりたいという願いから「日曜アーティスト」を名乗って趣味の創作活動をするようになったのが2000年頃。依頼、気の向くままにいろんなものを作り続けている。

先月まで、東京ビエンナーレのいくつかのプロジェクトの施工や、ボランティアサポート、グッズづくりなどをお手伝いしつつ、工作ワークショップの先生役などをしていた。同じく先月は、横浜にあるアップサイクルをテーマにした工房スペース「くるり工房」で、手製本の本づくりワークショップを開催。昨日は、SHUTLで開催された「カプセル声ちゃんのカプセルタワービルデイズ展」の搬出作業をお手伝いしていた。そして、23日からは銀座の奥野ビル306号室で開催される「銀座たてもの新聞展」にまた小さな版画作品を展示販売させてもらうので、残り二日間で全部つくる。

プロジェクト管理やコミュニケーション、制作の一部は積極的にパソコンやスマートフォン、インターネットなどを活用ているが、やっぱり最終的にはリアルな場でいろいろな人と会って、交流して、いろんなきっかけをいただいてそれが広がっていくのが「日曜アーティスト」としての醍醐味。日曜日にいかに作品をつくるかというのも大事だが、そもそも日曜日をどうやって有意義に楽しく過ごせるかを考えて実行するのも大事なわけで。オンライン/オフラインに関わらずいろいろなツールを使い、知識や技術を身につけながら、テクノロジーとクリエイティビティを組み合わせて思いっきり遊ぶ。こんな感じで、一生ずっと学びながらつくり続けるっていうのが、私の人生の目標。

編集後記

今月のテーマが「アナログ」だったので、最後にもうひとつだけ。現在劇場公開されている、ビートたけしさん原作の『アナログ』という映画にエキストラとしてちらっと出演しています。もともと、昨年の夏に「映画に出てみたいな」と思ってエキストラをやり始め、これまでにテレビ番組やミュージックビデオなどにちらっと出演してきました。そして今回、ようやく夢がかなって劇場の大きなスクリーンに、小さくちらっと登場となりました。嬉しいです。

今回もお読みいただきありがとうございました。
次号は、「東京散歩ぽ」の中川マナブさんです!

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「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。