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優美堂再生プロジェクトの個人的振り返り

■優美堂から額縁を運び出す

まず驚いたのは、おびただしい量の額縁の数。運び出す作業とは聞いていたけど、これほどとは!優美堂の建物から、30人がかりで延々と額縁を運び出し続け、運び出した数はなんと3,000点。

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優美堂からトラックを使って運び出した先は、3331 Arts Chiyodaのメインギャラリースペース。広い空間が、どんどん額縁で埋まっていく。さて、これは本当に全部片づけることができるのだろうか?

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2020年の夏、元額縁屋さんの建物「優美堂」をリノベーションするプロジェクトが「優美堂再生プロジェクト」スタートしました。

■ホコリまみれの解体作業

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12月、壁や床、天井などを剥がしていく解体作業。とにかく、すごいホコリ。天井の板を剥がすと、真っ黒に積もったホコリが降り注ぐ。

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家に帰って、風呂に入る前に湯を浴びると、足元に真っ黒い水が滴る。作業中はマスクを二重にしているのに、鼻をかむとティッシュが真っ黒になります。これはすごかった。

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バールのポテンシャルに感嘆したのがこの頃。

■解体から創造へ

4月、それまで「解体する」作業ばかりだったのが、徐々に「作っていく」作業も加わってきました。

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まずは、剥がした壁の中に、防水シートと断熱材をインストールする作業。壁の高さと柱の間隔を計って、防水シートをカットして小型のステープルガンで固定していきます。その上から、ガラスウール製のフカフカの断熱材を貼る作業。

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同時進行で、補強用の柱を立てるためのモルタルの土台や、鉄骨の設置、柱材の加工などが進んでいきます。

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この頃、施工の道具を持ち歩くために、腰袋を購入しました。

■みんなで柱を立てる

5月16日、この日はみんなの力がひとつに集結。補強用の柱が立ちました。

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前日、柱の組み上げにトライしてみるものの、うまく入らず。ホゾを広げたりなど追加の加工を施したあと、この日に再チャレンジ。一階と二階を貫通する巨大な柱を道路側から一本ずつ立ち上げ、横木を組み合わせてボルトで固定、さらにフロアに固定した鉄骨にしっかりと連結していきます。

やり方の教科書や、マニュアルがあるわけではなく、少しずつ、試行錯誤をしながら進めていきます。柱を立てる作業だけでなく、優美堂をリノベーションをするというこのプロジェクト自体が、そういった試行錯誤の上に成り立っているんですよね。

少しずつですが、確実に施工作業は進んでいきましたが、この時点では「本当に完成するんだろうか?」と、参加している我々もちょっと不安になるほど。

■施工作業中に学んだこと

5月に入ってからは、ほぼ毎週末のように優美堂に来ては、何かしら施工作業をしてました。いろんな道具の使い方を教わりながら、だんだんやり方を覚えていきました。

玄翁やノコギリなどの一般的な大工道具の使い方の他、インパクトドライバー、ノミ、ホゾを切る機械、長いドリル、丸鋸、ガイドの定規、尺金などなど。効率よく墨付けをするやり方、安全に正しくカットする方法。ところどころで、ちょっとしたテクニックや裏技なども。大工の修業みたいで、面白かったですよ。

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まず、安全に作業を進めること。そのうえで、作業の質を上げつつ、さらに効率よくスピードも上げていく。青森からこの作業がきっかけで現場にいらっしゃった、施工チームのリーダーであるTanabeさんは、さすがでした。教え方もうまいし、上手に仕事を割り振ったりなど。なによりも仕事が丁寧だし早いし、さすがプロといった感じで。Tanabeさんの影響で、美術館などに作品を展示する「インストーラー」という仕事にとても興味がわきました。

■あと残り1か月!

6月に入ると、正面の外壁のところに足場が組まれ、いよいよ本格的に施工作業が進んでいきました。いろいろな作業が同時進行で、急ピッチで進んでいきます。

東京ビエンナーレが始まる7月10日は、なんとか優美堂もオープンさせなくてはなりません。はたして間に合うのか?!

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週末にみっちり優美堂で作業をすると、翌日からはしっかり筋肉痛。特に、腕や手がみるみる分厚くなってきました。平日は仕事があるので現場に行くことはできないので、夜風呂に入りながら、大工さんが配信するYouTube動画などを見て道具の使い方を復習しつつ、道具の使い方や施工の手順などをイメージトレーニングをしてました。また、ホームセンターに行くたびにちょっとした道具を買いそろえるので、だんだん僕の大工道具コレクションも増えていきました。

■ラストスパート

7月に入って、いよいよラストスパート。OJUNさんがデザインした正面の富士山のデザインも、中村さんの研究室の学生さんらによって建物の正面に塗られていきます。

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僕は、主にギャラリースペースの壁づくりをやっていました。シナベニアを丸鋸でカットしてビス留めした後、その上から石膏ボードを貼っていきます。元からある屋根の形にあわせて、板をカットしてはめ込むように貼っていくのが面白かったです。びしっとハマると、とても気持ちが良い。

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石膏ボードの張り合わせの部分にテープを貼り、隙間やネジの穴をパテで埋めます。そして、下地の塗料を塗り、さらにその上から仕上げの塗料を塗って壁は完成。ギャラリースペースの壁面も、こうやってやればDIYで自分でもつくれるってのを学びました。

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オープン4日前の7月6日、絵画作品の搬入のために仕事終わりに優美堂へ立ち寄った時は、まだまだやらなければならない作業は残っていました。夜遅く、僕は石膏ボードのビス留めと、仕上げの塗装を少し手伝ってから、帰りました。この時点でもまだ、完成が見えてこない。

オープン、間に合うのか!?

■そしてオープン

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そして、東京ビエンナーレが7月10日よりスタートし、新しい優美堂もオープンしました。まだすべてが完成したわけではなかったですが、それでも一般のお客様が入れるまでに仕上がっているのは、まるで奇跡を目の当たりにしているようでした。最後のラストスパート、すごすぎます。

そして、ここがスタート地点。
優美堂の第二の人生が始まります。


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「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。