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私は結婚できない

私は結婚できない。

多分、できない。
ていうかしない。しない、し、できない。するには国を乗り換えなきゃいけない。

時々、結婚式場でアルバイトをする。

祝福される二人の男女
お父さんが真ん中で、その脇にお母さんが並ぶ両家代表謝辞
ドレスとタキシードの可動域の差
贈り物みたいに飾られた花嫁や
似たような格好の男女、男女、男女、お姉さん一家の子どもと遊ぶ弟のお嫁さん。
眩暈がするほど端から端までヘテロの渦、かき混ぜられる家父長制、幸せを煮詰めたなにか。
焦がしすぎたカラメルみたいなそれを口に詰め込まれるのがファーストバイトか。
「ここから逃げません、従順でいます。」と誓うようで気味が悪い。

そんなことを式場の隅で考えてる私はスパイみたいだ。
しんどい時は地方にしては高めの時給のことを考えてやり過ごす。
別に私だって幸せの渦中にいる人間を祝福する心がない訳ではない。
ただこの人たちが、自分が今噛み締めている幸せを国家によって阻まれている人がいる事を知っているかといったら否だろう。

Twitterで性的マイノリティの人が「結婚式には自分の居場所がないと感じる」と投稿したところ、そんな事まで気を遣わないといけないのかとかわがままだとか主役はお前じゃないとかそんな言葉がリプ欄に連なったらしい。(らしいというのは、投稿の数日後にまとめられた記事で知ったから。)
この投稿をした人が抱える生きづらさがそのまま表出したような地獄絵図だと思った。

出る杭は打っておきたい人の無自覚な悪意はそこら中にあって、冷水を浴びせられた気分になるなんて日常茶飯事だ。
この間も友人たちと話していた時、一人が「自分は差別しているつもりないのに、差別とか言われるとムカつく」と言った。
何も知らないのだな、と思った。
腹が立つというより呆れた。
正直何と言えばその人に伝わるかわからなくて困った。宇宙規模のはてなマークが出た。
その時思いつく言葉で説明したけど、伝わっているのかわからない。
いっそブチギレた方が良かったのかもしれない。(それはそれで意味がないからしなかったけど)
もうあの人とは関わりたくない。疲れた。
自分の無知さで人を傷つけると知らない人とは一緒にいられない。私も気をつけなければ。

また結婚式のアルバイトのことを思い出す。
大多数の人間は、権利を制限されている誰かのことなんて考えない。
式場にいたかもしれないその人を思う。
どんな気分だった?素直に祝福できなくても私は仕方ないと思うよ。
そんな自分に失望しないで、悲しいね。
悲しみは怒りに変えて、伝えていこうね。
大丈夫。大丈夫。

ムカつく、といった人のことを思い出す。
幼すぎる自分の言動に早く気づいてくれ。
私はもう言ったよ。
自分が何も知らないことに早く気づいてくれ。
気を付けるだけで防げる痛みがあることを知ってくれ。

お友達も難しい。

私は結婚できない。今はまだできない。
だから私にも選択肢ができますように、と祈る。
きっと叶う。


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