突然ショートショート「お隣さんの車」
アパートに車で帰ると、駐車場に停めてあるお隣さんの車の様子が変だ。
味気ない白色だったはずなのに、見たことのないステッカーが貼ってある。
近寄ってみると、それはアニメキャラクターのイラストだった。
お隣さんの車が痛車になってしまった。
頭の処理が追い付かない。
別に否定はしない。お隣さんの自由だから。しかし、お隣さんは確か軽貨物のドライバーをしていると言っていた。
ということは、この状態で仕事に出たりするのだろうか。
その姿を想像してしまうともう止まらない。
訊いてみる訳にもいかない。それは余計な干渉だ。
いつか出会った時にさらっと訊いてみることにして、その日は寝た。
しかし、次の日の朝のことだった。職場に、お隣さんの車がやって来たのだ。
出てるじゃん、仕事に。私の固定観念が崩れた瞬間だった。
もう敢えて訊くのはやめた。
痛車だろうと仕事には影響がないというのがわかったから。
よし。俺も愛車のワンボックスを痛車にしよう。これで電気工事に行けば皆、さぞ驚くだろうな。
(終)(424文字)