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屋上の中心で、生を叫ばれる。

ふと、マンションの屋上に

おととい、ふと自分の住んでいるマンションの屋上に行った。

安心してほしい。決して不穏なことをするつもりはない。

ただ、なぜ屋上に行ったのかはわからない。

外の空気を吸いたかったのかもしれない。
身体を動かしたかったのかもしれない。
陽の光を浴びたかったのかもしれない。

階段で7階まで上る。未知のフロアへと導く階段が続く。

何の躊躇もなく上り始める。

陽の温かさと風の冷たさが、空間の変わり目を告げる。

目の前には鍵の掛かった背の低い扉。左隣は高い壁、右隣は低い壁。

やる気と生気のない扉と壁をよじ登る。

着いた。ここが屋上。

広かった。白かった。死んでいた。

遠くの「生」

好奇心で地上をのぞきたくなる。幸運にも柵はない。

あのやる気のない扉が柵だったのか。

覗き込もうとした屋上の縁に、1匹の虫。

小さかった。赤かった。生きていた。

確かに、自分も今、生きている。

(再度強調しておくが、今を終わらせるつもりも全くない。)

だが、自分はこの虫とは違った。

身体は大きい(痩せないと)。
自分に色はあるのか?
「生きている」と言えるのか?

自分は屋上かな。

広かった。白かった。死んでいた。

360度見回す。

ここに住んで3年間、気付かなかった。

遠くに、山が。右も左も、前も後ろも。

心の穴にあたたかいスープがしみわたる。

”ふくい”はそうだった。

どこを見渡しても山。360度山。

それが普通だった。

そんな普通を忘れていた。

普通がどれほどありがたいか。

普通がどれほどあたたかいか。

つくづく、自分は山の人間なんだと実感。

近くの「生」

夕方。陽の光が部屋を黄色く照らす。

なんとなく、緑地公園まで自転車で行こう。

家から4キロぐらい。坂が多い。いい運動だ。

真っ赤なシューズを履いて、出発。

ものすごいスピードで進む。

上り坂で死にそうになる。

やっと到着。

まずは公園の中の山の奥の方に行く。

上り坂、自転車を立ちこぎ。

やめよう。

上り坂、ゆっくり歩く。

竹、草、虫、鳥。

青い。

「青いねえ、若いねえ。」

そうだ、青くて何が悪いんだ。

色がくすむぐらいなら、青く生きてやる。

「青」と「黄色」

上り坂を越え、ゆるやかな下りに。

自転車で風を感じる。

花壇の広場をぐるっとまわる。

犬がボールを追いかける。ボールだけを見つめている。

飼い主同士は世間話。相手の性格、家庭環境、人間関係を気にしながら。

どちらも生きている。

噴水の広場に。

バレーボールが横から転がってくる。

自転車に乗っていて、ボールは自分の後ろを通っていく。

「ごめんなさい!ボールとれんかった~!」

「いえいえ~!こちらこそすいませ~ん!」

ボールを走って取りに行くお母さんは、楽しそうだった。

それを待つ娘さんも、生き生きしていた。

見つけたベンチに腰掛ける。

遠くにバレーをする親子が見える。

打って、拾って、上げて。

リズムが心地よい。

なにより、ボールが愛を載せて2人の頭上を舞う。

青と黄色のボールには、生と愛が詰まっていた。

その場で、Amazonを開いた。

今度は、自分が、生と愛を詰める番だ。

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