イントロ
みなさん、こんにちは。
先週のFOMCにおいて、遂にFFレートの利下げが決定されました。その後の株価の挙動は50bptという利下げ幅にもかかわらず、案外と統制の取れた流れとなったのではないでしょうか。
本日はFOMC決定会合の翌日に電話インタビューに答えたTom Leeの発言を取り上げていきたいと思います。
慎重姿勢を維持
和訳(意訳含む)「おはようございます。Fedの金融スタンスの再調整が行われる今、投資家たちも投資行動を再調整する必要があると思います。これまで非常に多くの人々がハードランディングシナリオやFedの利下げが遅れてしまう局面を織り込んでいました。実際には利下げサイクルが開始したことで、今後1か月から3か月間は株式市場にとても強い追い風が吹くはずですが、一方でこれから大統領選挙日までは視界不良の状況が続くとも想定されます。ですから、投資家の皆さんに現在の状況で買いに入るように勧めることには慎重です。ただ、もしこのような状況でも買いポジションをアドバイスするとすれば、それは景気循環株、つまり製造業、金融そして小型株銘柄になります。」
下図は各セクター別の平均株価のパフォーマンスを直近一週間、一か月、一四半期そして一年間で比較したグラフとなります。
FOMC会合での利下げ決定日を含む直近一週間の成績でいえば、ディフェンシブ、ヘルスケアそして不動産セクター以外の幅広い分野で株価上昇がみられます。
Magnificent7 or 小型株?
和訳(意訳含む)「Tech株やMag7はまだ株式全体の上昇についてきていると思います。すでにこれらの株を保有している人にとっては、利益を確定させてキャピタルゲイン税の支払いを受け入れる必要性はないと思います。しかし、これまでずっとディフェンシブなポジションを取っていて、Fedの利下げが遅れ、株式相場が下がることを予想していた人々は景気循環株、とくに小型株に投資するべきです。なぜなら小型株は利下げに敏感ですし、景気循環ブースト、つまり住宅ローン、自動車ローン、クレジットカードローンの低下や、潜在的なM&Aの増加などの恩恵を受けるはずです。」
今年前半までの大幅な株式上昇を経験したテクノロジー関連株を利確してまで小型株に乗り換える必要はないものの、新たにポジションを組む場合には景気循環を意識した配分とすべきなのかもしれません。
インフレ再燃には懐疑的
Fedの大幅な利下げに伴う、インフレ再燃に関する懸念には以下のように述べています。
和訳(意訳含む)「GDP成長はインフレ圧力になるわけではないことを認識する必要があります。インフレ圧力は本質的に需要と供給のミスマッチにより引き起こされます。例えば、住宅の供給が増える可能性など、過剰供給が今後多く発生すると考えています。過去8四半期にわたるインフレ動向を見返せば、家賃そして自動車ローンの二つが全体のインフレを引っ張ってきましたが、住宅部門は供給が改善します。そして自動車ローンですが、こちらは自動車保険の加入者数が減少する状況に至り(?)、これ以上の保険料の上昇はないと思います。つまり、CPIバスケットの他の要因のインフレが加速しない限り、インフレは急速に収まっていくとみています。」
現在の住宅ローンは今年の5月を最後のピークとして急速に下落していますが、いまだに過去10年間の平均よりは高いレベルにあります。一部には住宅ローンが5%台に下落すれば、ローンのリファイナンスも活発化するという意見もあります。並行して住宅市場に十分な供給力が回復してくれば、住宅市場の流動性も改善して、住宅価格の下落も期待できるでしょう。
今後の雇用状況
今回のFedの利下げは、雇用環境のこれ以上の悪化を防ぐためと説明されました。そこで、番組アンカーとTomLeeの間で、次のような意見交換が行われました。
番組アンカー「雇用に関しては、今後11月のFOMCミーティングまでに二度の失業率データが発表されます。市場のハト派は、雇用の悪化がFedにより速い利下げペースを求めると考えています。過去の歴史を振り返ると、Fedの金融緩和が実際に雇用に影響を与え始めるのに4四半期はかかっており、その効果がピークを迎えるのは8四半期以内ではないといわれています。同意しますか?」
和訳(意訳含む)「過去の雇用市場のデータを見ることに異論はありません。周知のとおり、雇用が減速するとそのサイクルは加速するからです。ただし、ひとつ留意するべきなのは、企業経営者はFedのこれまでの金融引き締め姿勢に対して、過去2年半の間ずっと雇用に慎重な姿勢を保ってきたことです。ですから、今回の利下げと金融緩和サイクルのスタートは企業が雇用を拡大する後押しをすることになります。私は雇用市場とFedはここ数か月の雇用指標には精神的に打ち勝てると思いますし、雇用市場が今後力強く回復するための追い風は吹いています。」
最後に
今回紹介したTom Leeのインタビューは、Fedの50bptという大幅利下げが発表された翌日に行われたものです。つまり、この日は米国株式市場のほとんどすべての分野で大幅な株価上昇を見せていたわけですが、そんな状況においてもTom Leeは最近の慎重姿勢を崩していません。
しかし、今年1年を俯瞰してみた場合、これまでの状況は今年前半にTom Leeが予想していた通りの動きとなっているようにも感じます。個人的には以下の3月の記事にも書いた通り、今後数か月は慎重に銘柄選定を進め、大統領選挙後の株式上昇局面に備えたいと思います。
それでは。