イントロ
みなさん、こんにちは。
米国株式市場は週の後半にかけてやや落ち着きを見せ始めているようです。
私も恐る恐るではありますが、いくつかの個別株を買い始めましたがいまだ慎重な見方は緩めていません。
そんな中、Tom Leeのここ2週間の振り返りと、来週何を見るべきか、そしてFedへの期待(もしくは注文)について最新のインタビューから紹介したいと思います。
最悪期
司会者「あなたの最新の投資家向けノートを見ました。そこで最悪期は脱したと書かれていますよね。何を根拠としているのですか?」
和訳(意訳含む)「我々が注視しているのは二つです。まずはVIXです。これは月曜日に過去3番目に高い60まで急上昇しました。次にVIX先物のカーブも非常に速いスピードで逆転しました。このどちらも正常化に向かい始めています。VIXの方はおそらく20を下回るレベルですし、VIX先物カーブも再反転しています。つまり、パニックの最悪期は脱したと思います。ただし、これは今後の連鎖的な反応がないとは言い切れません。今回の急落局面で売り逃げできなかった強気派が存在しますし、中東イラン周辺の状況も緊張状態が続いています。円キャリートレードが今後どれほど巻き戻されなければならないかも分かりませんが、そうはいっても強烈な売り圧力の時期は過ぎたと思います。」
VIXとVIX先物カーブについては、私もここ数回の投稿でVIX_3month/VIX比として提示しました。通常は将来のVIX数値の方が現物よりも高いのですが、今回のような予測不能な極端なパニックが市場を襲った場合には、短期(=現物)と先物のVIXカーブが反転します。
確かに、8/5の急激な反転から4日を経過してVIXに関しては先々週のレベルに回復しているようです。過去の動向については以下に紹介しています。
Jobless Claims - 新規失業保険申請件数
次に、今回の調整が単なる成長への不安に起因するのか、より本格的な下落につながるのかについて意見を聞かれたTom Leeは次のように答えています。
和訳(意訳含む)「今回の調整が成長への不安によるものだと考えている投資家は毎週発表される新規失業保険申請数をチェックしています。木曜日のJobless Claimsは予想以上に良い結果で、これは過去数週間で観測されているテキサス州の失業保険申請数の大きな減少が要因として挙げられます。そして木曜のJobless Claimsの発表後にマーケットが反応したという事実が短期的な成長不安を持った投資家がマーケットを支配していることを裏付けています。来週木曜日に次のJobless Claimsが発表されますので、もし来週も申請数が減少、もしくは安定していれば、人々の(短期的な調整からの回復というシナリオへの)確信度はより高まるはずです。」
昨年から今年にかけては、多くの投資家がCPIやPCEなどのインフレ指標に注目していましたが、今後は雇用データの方が市場に与える影響が深まりそうだと指摘しているわけです。
円キャリートレードの行方
最後に円キャリートレードの巻き戻しは終わったのかという質問に対してはTom Leeは以下のように回答しています。
和訳(意訳含む)「そうですね。正直にいって誰にも円キャリートレードがどれほど巨大に膨らんでいたのかは分かりません。先週、保険業界の経営層に話を聞いてきたのですが、はっきりしたのは多くの金融機関がこの取引に関わっているということです。実際には円キャリートレードの巻き戻しが通常のスピードでおこる場合はそれほど破壊的な影響はないと見られています。ですが先週末や月曜日のような非常に無秩序な出来事が発生すると、保険会社はヘッジを解消する必要があり、突然ヘッジのかかっていないキャリートレードを抱えるためとても高額な損失を抱えます。」
和訳(意訳含む)「通貨ヘッジが混乱している一因は、これらの通貨ヘッジは通常1パーセンタイルのイベント、99パーセンタイルの標準偏差に対応するように構築されているからです。つまり想定以上の変動が起こるとヘッジが解消されるようになっています。個人的には、各国の中央銀行は自国通貨の変動を1シグマ(標準偏差)内に収めることができると考えていますし、その状況では円キャリートレードの正常化は整然と進むはずです。その他の要因として不透明な中東情勢もありますが、マーケットは不安の壁を乗り越えています。」
さっそく、ドル円価格と20日平均線を基にしたボリンジャーバンドを計算してみました。ボリンジャーバンドはその範囲が99パーセンタイルになるように20日分の標準偏差から算出しました。このように図示してみると、確かにTom Leeが指摘するように8月2日と8月5日で下値が99パーセンタイル外に抜けていることが確認できます。
また、下落幅はそれほどではないものの7月24日と7月25日の下値もボリンジャーバンドから外れていたようです。付け加えると、これらの日々のS&P500は下落幅が大きいことも興味深い発見でした。
最後に
来週はPPIとCPIの発表がありますが、今回は加えて新規失業保険申請件数にも注目しておく必要がありそうです。
また、ドル円価格の動き、とくに急激な下落に対しては非常に神経を研ぎ澄ませておかなければなりませんね。
それでは。