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今日、実家を出た

今日、実家を出た。よく晴れた朝だった。

昨夜深夜2時まで弟に手伝ってもらいながら荷づくりをして、9時に引っ越し業者のお兄さんが2人きて、お昼にはすべての私の荷物が引っ越し先に移動された。

引っ越し先は実家からはそう遠くはないし、一人暮らしは留学の時にしたし、そんなには寂しくはないかな、と思っていた。

甘かった。

家を後にしたとき、「そっか、四人での暮らしは終わってしまったのか」と、はたと実感が湧いてきて、涙があふれだしてきた。一度目からこぼれた涙は止まらなくなってしまって、でも両手は荷物でふさがっていたから、流れる涙はそのままに歩くしかなかった。

それぞれがそれぞれの形ではなむけをしてくれた。

「じゃあ、部屋が綺麗になったら呼んでね」と、父
「またすぐ会えるっしょ」といって、布団から起きてこなかった、弟
「大冒険の始まりだ!」と、母

もう、母が急に部屋に入ってくることもないし、父にお風呂が長いと文句を言われることもないし、弟が夜中にゲームをする音で目覚めることもないし、嬉しいこと、のはずなのに。

もうきっと、四人で暮らすことはないのだろうな、と思うと、堪らなく寂しい、かなしい。私は、四人での暮らしが、好きだった。

家を出て歩き出した時、最初に思い浮かんだのは「楽しかったな」という言葉だった。
本当に、おかげで楽しい二十数年だった。辛いことがあった時も、嬉しいことがあった時も、家に帰れば三人がいた。冗談を言って一緒にふざけたり、真面目に話を聞いてもらったり、時に、聞いたり。それらのやりとりに、暮らしに私がどれだけ救われていたことか。計り知れない。

いい家族に恵まれた。家族に関しては、私は本当に何の文句もない。彼らの元に生まれ落ちて幸運だと、心の底から思う。

昨日までは、居間からいろんな人の声が聞こえてきていたのに、いまは、静かな部屋に一人。

春の夜風が、ひんやりと部屋に入ってきている。家族三人は今頃どうしてるだろうか、と思う。寂しい。

元気で、やっていくからね。

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