読書「赤と青とエスキース」
Audibleで聴いた。一日あれば聴き終えられるくらいの分量だった。
エスキースとは絵の構想を練るために描かれる下絵のことで、色を塗る前の下書きとも異なる、最も初期の段階に描く絵のことを指す。本書はとあるエスキースにまつわる物語をオムニバス形式で書いている。
叙述トリックと伏線の回収が凄まじい一冊だった。各章には「赤」と「青」の象徴が登場するのだが、題名に書いてあることなので読んでいてもなるほどな、赤と青がキーワードなんだな、と深く考えない。ところが最後の最後にもう一つの「赤」と「青」の正体を教えてくれる。文字通り最終章の最後の段落で、これまで敷き詰められてきた伏線が一気に回収されるのだ。
本書を読み終わった後に北村薫の「盤上の敵」を思い出した。こちらも叙述トリックと伏線回収が見事な一冊である。ただ最後はハッピーエンドという感じではない。
それと比べると本書は物語の描写が綺麗で、その内容は白のレースカーテンとでもいうような心地がある。登場人物の心理描写も繊細で、ラストまで読み終わった時の気分は清々しい。
ミステリ好きならきっと楽しめると思う。
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