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​​ZEBRAS UNITE大解剖特集!

Tokyo Zebras Uniteの田淵さんが2022年6月に米国Zebras Uniteの役員になり11/5、11/6にサンフランシスコエリアにて行われたZUのボードミーティング/リトリートに参加してきました。

そこで第25回目のZebras Cafeでは、田淵さんがアメリカ西海岸で見てきたZebras Uniteがどのような組織でこれからどんな方向性を目指しているのか、日本での活動にどんな影響を与えるのか、ゼブラ経営の理論化の状況などについてお話を伺いました。(肩書は2022年11月当時)ぜひご覧ください。

*本記事は2022年11月24日に実施された、第25回Zebras Cafe「Zebras Unite大解剖特集!」を読みやすい形に再編集したものです。発言内容はその当時のものである旨、ご承知おきください。


Zebras Uniteとは

(田淵)
みなさん改めまして、Tokyo Zebras Unite代表の田淵です。11月にZebras Uniteのアメリカのボードリトリート(ボードミーティングとリトリートを合わせた会合)がカリフォルニアで開催されました。今日はその時に議論されたことをシェアできたらなと思います。

はじめにZebras Uniteと我々TZUとの関連性をまずお話したいと思います。
そもそもゼブラ企業というコンセプトを作ったのが、女性の共同創業者4人が作ったZebras Uniteという組織です。「ユニコーン」という幻想的で羽が生えて飛んでいく様な動物ではなく、現実の動物で群れをなし、経済性と社会性(白と黒のストライプ)を通して社会にインパクトを生み出します。そして必ずしも全ての起業が指数関数的に3-5年で上場するわけでなく、目的に応じて成長の仕方が違うという考えをもとに出来たのが、Zebras(ゼブラ企業)というコンセプトです。Tokyo Zebras Uniteはこのコンセプトを作ったZebras Uniteの支部 (Chapter) という位置付けになります。東京チャプターの他にも、サンフランシスコやベルリンなど世界の様々な都市にチャプターがあり、それぞれが活動しています。

Zebras Uniteの構造について

(田淵)
話を進めるにあたり、Zebras Uniteの構造を説明しましょう。
Zebras Uniteの構造は比較的新しく、日本語の「協同組合」のような形式をとっています。そしてそこに株主のような意味合いで組合員がいます。この組合は4種類のタイプに別れていて、
1つ目はChapter(例TZU)というGenral members(一般組合員)として入っているタイプ
2つ目は創業者クラスで、創業者の4人個別の組合委員となっています
3つ目はインベスタークラスと言ってZebras Uniteに投資をしてくれる人
4つ目はNPOクラス(ZU.org )といい、業界でいう黄金株を持っていて、特定の事項に対して拒否権を持っています。

この拒否権はゼブラ企業のミッションを守るために非常に重要であります。そのため、法人は本体のZebras UniteとNPOと2つあり、どちらも理事がいて運営がなされています。ちなみに、今回のボードリトリートでは両方の理事が集まりました。


https://www.zebrasunite.org/leadership 

本体の協同組合側ですと、ボードメンバーで男性なのは私だけです。Zebras UniteのNPOのボードメンバーは、Allie Burns(Villedge Capitalというアメリカのインパクト投資のCEO)、Janine Firpo(元World Bank勤務)、Nathan Scheneider(コロラド大学助教授)Astrid Scholz(創業者)、Keith Porcaro、Nakeema Stefflbauer(FrauenLoopのCEO)の合計6人です。

Zebras Uniteの3つのアプローチ

(阿座上)
リトリートではどの様な話がされていましたか?

(田淵)
ボードミーティングということもあり、今後の方向性や主戦略の話をしていました。具体的には、改めてボードメンバーの役割、そして2つの法人(組合とNPO)の役割の明確化、またコアヴァリューとは何か、そしてそれに対してボードメンバーはどのように貢献できるのかという話もしました。全体的に細かな中長期的な話をしていました。ZUが取っている体制についての詳しい記事はこちら

(田淵)
実はZUは色々な側面からアプローチをしているのですが、3つのテーマを決めまして
1つ目が「キャピタル
2つ目が「コミュニティ
3つ目が「カルチャー」です。
お金だけではなく、コミュニティ形成などを含め、新しいカルチャー作りを行うなど3つに対してアプローチをすることがZUとしての特色であることを確認し、これを軸に中長期的なお話をしていました。


(阿座上)
コミュニティーとカルチャーが成す側面は似ていると思うのですが、どのような区別をされているのでしょうか。

(田淵)
まさに同じ質問がボードミーティングで出ました。
コミュニティはどのようにムーブメントを作り、ゼブラ的コンセプトを広めていくのか、そしてカルチャーはどのようにゼブラ企業を支援していくのか。つまり前者は人が中心で、後者は人から生み出されるものになります。

(阿座上)
もう1つ。元々NPO法人から始まったZebras Uniteですが、どのような経緯で今の形(NPOとCoopの2つの体制)となったのかお聞きしたいです

(田淵)
ゼブラムーブメントのきっかけは、1つのブログ記事がバズったことだったのもあり、NPOを作る前から任意団体でブログを書いたりスピーチを行ったりしていました。なので最初は法人格を持つことを目的とし、おそらく活動の趣旨を考えたら株式会社よりもNPOの方があっているという感覚のもと、NPOが設立されました。その後、「ゼブラ企業に適した形とは何なのか」という問いのもと、インパクト投資やアドボカシー的な社会活動を行っているOmidyar Networkというアメリカで有名な組織から資金支援を受けました。そこでゼブラ企業へのリサーチを行う中で、協同組合という形が適していると結論付きました。では協同組合の形ならではのミッションはどのようにするのか。そこで1番適した構造が「協同組合」、いわゆる大株主が決定権を持つのではなく、関わっている人たちが1票ずつ権利を持ってガバナンスを行い、生まれる経済的なメリットを平等に分配して行くという考え方へ変化していきました。

サークル

(菜)
ずっと気になっていたのですが、サークルとチャプターはどのように違うのでしょうか。

(田淵)
これがまた説明が難しいんですね。コミュニティマネジメントのSassyがサークルという概念を持ってきました。ZUの場合は比較的世の中に知られている組織に近いコンセプトで、ヒエラルキーというよりかは比較的フラットな関係でガバナンスをしています。サークルは会社でいう部署に近いです。各サークルにテーマが決まっていて、リーダーが1〜2人います。自分の興味あるサークルにメンバーとして入り、活動やディスカッションを行っています。

例えばキャピタルサークルは資本をどう動かしていくのか、ゼブラ的投資の仕方はどのようなものが適しているのかなどをディスカッションをしたりしています。その中で、ZUは、アメリカのGates Foundationをはじめとした組織とコラボレーションをしつつ、ゼブラ的な、ある種の投資商品のプロトタイプを作っていたりもします。

まとめると、チャプターはZUの本体があり、その本体の支部的に活動するところ、一方サークルはZUの本体の中で部署的に作られている組織です。

(阿座上)
ZUの運営メンバーの規模や構成はどのようなものでしょうか。

(田淵)
構造的には私がちゃんと理解していれば今回私が参加していた理事会があり、その先にはいわゆるCEO的な人たちから成る経営執行チームがいます。ダズルディストリクト、いわゆる本部には、11人の本部メンバーがいて、基本には運営に関わるところ全部を見ています。サークルはその下にある形です。

(阿座上)
11人がどれかのサークルに属していて組合員が入りたいところに入っているということですか?

(田淵)
そうですね。本部メンバーは必ずどこかに入っていますね。

(阿座上)
ティールっぽいですね。

(田淵)
そうそう。ティールが言う組織階層に近いと思います。ゼブラではティールという言葉はあまり使わないけどコンセプト的には似ているのかと。

アメリカ社会とゼブラ的コンセプト

(菜)
この理事会で定まったことが、TZUに今後影響するようなことは何かあるのでしょうか。

(田淵)
ありますね。中長期的な戦略を決めているので間接的には関係することがたくさんあるのかと思います。
直接的に関係することとしては、Zebras Unite自体、アメリカ中心ではなく、今よりもさらにグローバルな組織になろうとしています。元々アメリカから始まっている組織でありますが、グローバル的に対等な関係でいたいという思いが強くあります。そういった意味でアプローチ方法含め、ヨーロッパ、日本、アメリカなど地域問わず平等にしていこうと言う念頭があったりしました。

グローバル組織でありたいという考えの1つの背景ではありますが、個人的な意見として今回アメリカに行き、「分断」をすごく感じました。アメリカは政治として非常に2極化してきています。現状況として過激な思考の人たちがトップに上がれる形態になっています。私の知っているアメリカは、政治的に民主党か共和党どちらかなので意見が分かれることはありますが、最後は「THE US」「アメリカナンバーワン」みたいな団結があり、国としてパワーがあるように感じていました。しかし、これに良い悪いがあるわけではないですが、今は両極端になり、あまり相容れなくなってきている感覚を生身で感じました。
このような背景もあり国際性を高めていこうということになっているのではないでしょうか。ボードミーティングも今回はカリフォルニアでしたが、今後は別の場所で集まれるようにしようかと話しています。

(菜)
私もこの5月までアメリカいたこともあり、そんなに分断が存在していたのかなと思ったのですが、私が4年間見てきたものはすでに分断された社会であったのだと思いました。元々政治の話も相容れないし、2020年の選挙の時は共和党の投稿をした人は友達ではない(民主派が)と言う極端の世界だったので、改めて2極化された世界になっていると実感しました。

(田淵)
そうですね。菜さんがいっているのは最近の話ですし、あとはどのような人と会うかにもよりますよね。

(阿座上)
そのような時代の中でゼブラ企業はどのように見られているのでしょうか。格差を助長するのがテックカンパニーであり、どちらかというとよりよく関係性を作っていこうとしているのがゼブラなのかなと思うのですが、そこまで全国的な風潮にはなっていないということなのでしょうか。

(田淵)
そうですね。考える角度がいくつかあります。
阿座上さんがおっしゃったような格差是正はゼブラ企業の意識の中にあると思います。マーラが日本でスピーチした時に話していたのですが、元々テックカンパニーが作ってきた「経済的な格差」と「権力的な格差」の2つの格差を是正したいというのが、共同創業者4人の根本にある考え方の1つだと思います。そのため、協同組合で経済的にもなるべく平等に分配し、組織をコントロールする議決権を通して、今まで権力をあまり持てなかった人たちにエンパワーしていくことを目指しているのではないでしょうか。
一方、このコンセプトを使って政治的なアプローチをしようという話にはまだ至っていないです。

(阿座上)
そうなんですね。
また違う質問で構造に関してですが、4つの理事グループがあり、創業者以外が組織を運用していくと起源となった理念を失ってしまうという点でNPO法人があると思うのですが、その役割に置いて創業者クラスが存在するならNPOと被ってしまいしまいそうなところをなぜあえて分けたのでしょうか。

(田淵)
いくつかあると思いますが、1つは私が尊敬するところなのですが、ある種の英語でいうdelegation (譲り渡す)の心を彼女たちは持っています。共同創業者の1人であるMaraは私(田淵)みたいな人が出てきてくれて嬉しいと言っていました。
創業者だからずっと権利を持っているという概念ではなく、むしろ自分たちが作ったムーブメントが広まり、それを担う人が出てくることを期待している。そう言った意味での譲り渡しが1つあると思います。これは最初から定款に入れ込んでいて、何年経った時点で選挙にかけるということがあるので、立派だなと思います。
(Zebras Uniteの運営方法の詳細はこちらの記事に書かれています。)

あとはミッションに関してで、創業者の思いだけというよりもミッション化し、組織のものとして中立性を高めることで、拒否権も出せるようにしたいという思いもあると思います。

Canva

(阿座上)
先ほどにもあった、権力の分配が土台にあり、創業者とNPOの間である程度の緊張関係を持たせているのもかもしれないですね。

(田淵)
それもありますね。創業者自身も譲り渡しているけど、全然離れているわけではなく、毎週4人で電話会議したり十分関わりを持ち続けてバランスをとっていると思います。

最後に

(菜)
ZUは様々な活動をしているのはわかりつつもクリアではなかったので、今回のサークルがどこに位置するのか、2つの法人の関係など、Zebras Uniteの実態がどのようなものかより明確に理解するすることができた会でした。

(阿座上)
Maraの話を聞いていていつも面白いなと思う点として、現状を疑い、改善できるように仕組みを理解して、理念を作り組み立て直すプロセスを丁寧に行っているということです。このZebras Cafeを通して、改めてやはりこの点、うまくできていると感じました。時間の経過に伴った人の心の変化を、想像の範囲内で組み込んでいるように思ったので、これからも田淵さんが色々聞いてきてくれると我々も学びが深まると思います。

(田淵)
今阿座上さんが言ってくれたたように、Zebras Uniteとの関係性はやはり自身が理事になったことで近くなったことは感じていて、自分にとっても日本にとってもいいことだと思っています。

ボードリトリートでは、中長期的な話をしながら、どうやって理事として関わっていくか、また2つの法人(NPOと協同組合)の理事がどのように協力して進んでいくのか深く議論が交わさていました。今後、合同のボードミーティングを行うことも予定されています。一方で、求められることや責任も強くなるので、しっかりと、緊張感を持ちながら貢献していきたいと思います。

最後に、Zebras Unite自体もそうですし、アメリカ自体を俯瞰してみたりすると面白いのかなと思いました。実はアメリカはESG投資の危機に面していて、共和党の州派がメインでESG投資を禁止していて、これに対する反発もすごく、政治側と企業側での対立も起きています。ボードメンバーの中でもESG投資が潰されるような波が来ることを非常に心配している人もいました。あまりこのような情報は日本では知られていなかったりするので、生の情報を知れたのも良かったと思います。
ありがとうございました。


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