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Dystopia or Dazzle  ー選択は私たちの手の中にー

「会社は株主のもの」、「株主価値を最大化するために経営をするべき」といった考え方に異を唱え、「会社はステークホルダー皆を幸せにするために存在する」、「短期的な株主価値/時価総額の最大化ではなく、長期的な価値創出のための成長を目指すべきだ」といった主張が世界中で反響を呼び、 ゼブラ企業と呼ばれるようになりました。

ゼブラ企業という言葉を生み出し、世界各地にムーブメントを広げるZebras Uniteは、自らが「協同組合(Coop)」という組織形態を取ることによって企業の新しいオーナーシップ / ガバナンスのあり方を提案しています。

今回は、5年目を終えたZebras Uniteが、Co-opを立ち上げてからの成果と学び、そして2023年に起こるであろうことを綴った記事を翻訳しました。(一部note用に改定済み)
原文はこちら


5年をふりかえって

5年前、私たちは「Zebras Fix What Unicorns Break」の中で、広告ベースのテクノロジー、搾取的な金銭的動き、そして、無限の権力を持ちつつ、責任を負わないテックリーダーたちの存在が交わってしまったことでの現在の惨状を予言しました。
シェアホルダーの利益が社会の幸福よりも優先されるとき、民主主義そのものが脅かされます。現実には、ビジネスがスケールすることで、時には破壊的な結果をもたらすことがあるのです。Zebras Uniteでは、現代における喫緊の人権運動は、ビジネスの世界を再構築することであると信じています。それが私たちの目指すべき原点です。

2020年、ちょうどパンデミックが始まった頃、私たちはどうすればいいかという分かれ道に立ち、「Pivot to People」(TZUとしても過去に翻訳)の中で2つの道を示しました。

1つは、私たちが「リアクティブ」と呼ぶ戦略です。これには、テックワーカーの権利を支援するためのポリシー改革や、テクノロジーが個人と民主主義の幸福を支援するための、テックカンパニー内部からの改革への協力などの重要な取り組みが含まれます。

私たちは思い切って、もうひとつの道、「プロアクティブ」な戦略を選びました。企業が投資家の言いなりになり、トップが権力を独占するような所有形態やガバナンスの枠組みのなかで運営されている限り、人々や地球に害を与える決定しかされないと考えたからです。

(パタゴニアをSteward-owned companyへと転換させることの複雑さを見る限りでも、まさにこの1年における歴史的な分岐点となりうる話でした。)これに対し、私たちは「プロアクティブ戦略では、創業者、企業のリーダー、そして前向きな投資家が新しい道を切り開くことに応じます。新しいものを創り、権力と利益を共有することに同意しています」と述べてました。

Zebras Uniteでは、国際的で、ハイブリッド、マルチステークホルダー主義かつ、民主的に運営される協同組合を創設しました。世界全体にとってより良いビジネスを構築する人々のためにコミュニティ、キャピタル、カルチャーを促進するために存在しています。

現在では、7カ国から15名のチームメンバーが集まり、6大陸に25の支部、約300名のメンバーオーナー、さらに9,000名のオンラインコミュニティが存在するまでに成長しました。ここに至るまでの約5年間を振り返り、私たちは、オーナーシップとガバナンスという、一見シンプルではあるけれど、驚くほど強力な2つが、より公正でインクルーシブな経済を構築する礎になると強く信じています。

もしTwitterが労働者所有であったなら、あるいは公益事業であったなら、現在と同じことが展開されていたでしょうか。FTXにガバナンスの説明責任、透明性、監視の目がもっとあれば、財政破綻は避けられたはずです。

今年を締めくくるにあたり、私たちはCo-opを立ち上げてからの成果と、私たちが学んだ重要なレッスン、そして2023年に起こるであろうことを少しばかりシェアしたいと思います。

また本日、この旅路を私たちの重要なパートナーであるOmidyar Network(※)とともに続けていくことを発表することができ、とても嬉しく思っています。次の経済のためのコミュニティ、キャピタル、カルチャーを構築するための私たちの取り組みについて、ぜひご覧ください。

※米国でeBayの創業者とその妻によって2004年に創設された団体。投資、助成、パートナーシップを通じた啓蒙活動などあらゆるアプローチで社会変革のための活動を行う。

コミュニティ

Zebas Uniteは、この5年間、創設者たち、チャプターリーダー、メンバー、スタッフに至るまで、ゼブラ企業に共感し、精神を受け継いできてくれた素晴らしく、そして、クリエイティブな人々無しには存在し得ませんでした。

この国際的で多様なコミュニティの強さのおかげで、Zebras Uniteを協同組合として構築することができました。相利共生という協同組合におかれた価値観とともに将来にわたって繁栄するよう、常に努力していきます。

また、私たちは、誰もが平等に未来を想像し、創造する権利を持っていると信じています。
協同組合が成長し、進化するにつれ、共に想像し、創造する方法はさまざまな形となって現れてきます。Zebras Uniteがどう刺激的なゼブラ企業のコミュニティを育み、サポートし、拡大するために努力しているかご覧ください。

多様性に富み、分散型の、世界に通用するチームを作るにはどうしたらよいのでしょうか。私たちのチームには多くの新しい顔ぶれが加わり、それぞれが並外れた知識と経験を持っています。私たちは組織として成熟しつつあり、ダズルディストリクトと組合員には、このムーブメントをめくるめく高みへと成長させていこうと積極的に活動してくれる本当に素晴らしい人たちが集まっています。

どのようにして、国際的で多岐の分野が合わさった分散型協同組合を作ることができるのでしょうか?- その答えは、連帯を伴ったパートナーシップです。

パートナーシップ

既存の枠組みの外のオファーを求めるゼブラ企業の教育および資本の需要を満たすために、デルタ航空、Greaterthan、nRhthym、Seedrs、UpEffect、Lift Economy、AusserGewöhnlich Berlin、The Sociocracy Consulting Group、Hyloなど、40以上のパートナーを迎えています。カルチャー、コミュニティ、キャピタルを通じてビジネスの世界を再構築することを考えているのであれば、パートナーとして是非参加してください。日本語での問い合わせは東京チャプター(tokyo@zebrasunite.com)までどうぞ。

Zebra Solidarity Fund

Zebras Unite Co-opは、ザカート(富を再分配し、貧困を撲滅するために、ため込むことを禁じる道徳的義務のあるイスラム教の慣習)にインスパイアされ、Zebra Solidarity Fundを立ち上げました。経済的正義を中心とした組合員主導のプロジェクト、奨学金の引き受け、連帯経済(社会連帯を基盤とする経済活動)に関する社会実験などに、Zebras Unite Co-opの収入の2.5%を積み立てています。6月から8月にかけて、ゼブラ企業を広げていく組合員に4つの助成金を授与し、これまでに8つのファイナンシャルエイドパッケージを必要としている人に提供することで、多様な声を協同組合に取り入れることを可能にしました。

チャプタープログラム

東京チャプターが定期的に開催しているZebras Cafeのような簡単な交流会から、ワークショップ、研究活動、国際会議まで、バーチャル、リアルを問わず、世界25のチャプターが昨年1年間に60以上のイベントや活動を開催しました。彼らの努力は、Zebras Uniteとして世界規模でのゼブラなエコシステムを描くために、今後の課題や機会に関する貴重な知識を収集するのに役立っています。また、世界中でのZebraビジネスディレクトリーの構築や、ゼブラ企業というコンセプトを啓蒙するためのブックツアー、ハッカソン、ピクニックのようなコミュニティにおける活動にも繋がっています。参加する準備はできましたか?オンラインコミュニティに参加するには、こちらをご覧ください。また、メンバーとして参加するための詳細については、membership@zebrasunite.com までご連絡ください。

キャピタル

"資本システムのせいで社会が堕落しているのは、ゼブラ企業のような、肌触りがあって、意味のある問題を解決し、その過程で既存の社会システムを修復する、収益性のあるビジネスを衰退させているからでもある"

— “Zebras Fix What Unicorns Break”より

私たちは当初から、ゼブラ企業の起業や、その成功を阻む最大の障壁は資本へのアクセスであると認識していました。この問題は、私たちの調査でも、また、Kauffman Foundationの友人たちによっても徹底的に立証されています。より多くの資金を、多様なゼブラ起業家に提供するためには3つの主要な要素を備えなくてはいけません。

起業家・投資家両方に対して、さまざまなお金の色に対する理解を深める啓蒙・教育

それは、起業家と投資家の双方がそれぞれの目標を達成し、長期的に持続可能な企業を成長させ、それぞれが取るリスクに見合った報酬を得られるよう、さまざまな種類の資本と条件について理解することです。 

 Zebras Unite Co-opでは、起業家と投資家が互いにナビゲートし合えるようなツールやサービスを構築しています。これまでに30億ドル以上のZebras Uniteと価値観の一致した資本が、投資先となるゼブラ企業を探して名乗りを上げてくれていることを嬉しく思っています。

 2023年には、ベンチャーキャピタルだけでない手段、資金調達戦略、ゼブラ企業の価値観にあわせてたリスクとリターンの期待値の調整に関する一連の教育プログラムを提供する予定です。

このような機会に関する情報を得るには、こちらからご登録ください。財団の方で、ゼブラ企業への資金アクセスをお探しの方は、こちらをクリックしてCo-opメンバーシップについて詳細をご覧ください。

キャピタルイノベーター支援

キャピタルイノベーター、つまり新しい金融商品・サービスをこれまで十分なサービスを受けていないコミュニティの事業・起業家向けに生み出す起業家を支援します。

 私たちは、自社でゼブラ企業向けファンドを立ち上げるよりも、ゼブラ企業の考え方に沿ったファンドのマネージャーに対して資本とサポートを提供することで、より早く、より大きなインパクトを生み出すことができると信じています。 

Inclusive Capital Collective (ICC) は250以上のBIPOC(Black, Indignous and Other People of Color)コミュニティのファンドマネージャーと起業家支援組織からなるネットワークで、債券、株式、不動産など、さまざまなファンドやプロジェクトを通じてコミュニティに富を創出しています。Zebras Uniteは、スルドナ財団、ウェルズ・ファーゴ財団、JPB財団から200万ドル以上の資金提供を受け、米国経済開発庁の支援を受けながら、協同組合としてICCをインキュベートしています。

ICCは、不動産製造業、リレーションシップ・ベース・レンディングをコミュニティーの富のベースとするブラックペーパー(政府の現行を批判した文書) や、コミュニティマネージャーでCEOのNajaah Yasmine Danielsによる振り返りを出版しています。ICCへの参加は、こちらからお申し込みください。

キャピタル・エコシステムデザイン

創業者や投資家のニーズ、また事業展開する特定の状況に対応したキャピタル・エコシステムをデザインします。ICCはこのプログラムのフラッグ・シップです。参加型かつ協調的なアプローチを用いて、起業家、投資家、その他の民間および公的ステークホルダーが特定の地域、産業分野、年齢層において共に創造できるシステム的施策を特定し、実施しています。

複数の収益源を持つアーリーステージの協同組合としての経験を生かし、National Coop Bank、One Project、そしてZebras Uniteの組合企業であるSecond MuseとArmillariaと共に、コレクティブ・オーナーシップをサポートする資本機会を増やすための仕組みをデザインしています。

デザインする先としては、共存共栄を目指してはいるけれどまだ市場への参入方法が描ききれていないアーリーステージのベンチャー企業や、まだ利益の回収できるフェーズに至っていない、テクノロジーを活用したプラットフォームを展開する協同組合、もしくは従業員とコミュニティ所有への転換(Exit to Comunity)を行う可能性がある、より成熟したフェーズにある会社などが挙げられます。現在、私たちは、コレクティブオーナーシップのための金融資本やその他のリソースを集約し、展開するための最初のプラットフォームとプロダクトをデザインする最終段階にあります。

また、インドの文化経済、イスラム金融、ドイツの目的志向のスタートアップ・シーンなど、他の資本エコシステムにおける追加プロジェクトも開発中で、デザインを開始する予定です。キャピタル・エコシステムのデザインに関する最新情報を入手するには、こちらからサインアップしてください。

参加する準備はできていますか?私たちは、さまざまなタイプの創業者を支援する資本商品やコレクティブをさらに立ち上げています。capital@zebrasunite.com までご連絡いただければ、私たちが一緒にできることを検討します。

カルチャー

Start.Coopのグレッグ・ブロツキー氏の言葉を借りれば、ほとんどの人は協同組合とは何か、どのような仕組みなのかを理解していないのです。その結果、「伝統的な」オーナーシップ・モデルは、比較的「簡単」に導入し、実行できるように感じられるのです。

しかし、もうそんなことはありません。私たちは、協同組合のオーナーシップとガバナンスの構造を成熟させながら、私たちと同じようにこの「co-opreneurship」(協同組合型の起業)に興味を持っているエコシステムの仲間たちをサポートし始めています。私たちは、ゼブラ企業と一致する価値観を持っている組織に対し、以下のような様々なコンサルティングプロジェクトで、私たちのさらなる知見を提供することに喜びを感じています。

  • 大規模な財団、ファミリーオフィス、そして市民プロジェクトに、厄介な問題に対する「コーポラティブ」な解決策を提供する。

  • ハイブリッドでマルチステークホルダー的な協同組合の設立を支援する。

  • エコシステム構築のパートナーが、重要なガバナンスの問題で「立ち往生」しないように支援する。

  • 私たち全員にふさわしい経済のために、コミュニティ、キャピタル、カルチャーを用いることについて、共に学ぶ。

私たちはこれらの問いや、そしてそれ以上のことにも耳を傾け、実験と反復を通じて答えを出し始めました。私たちは社内文化とビジネス界全体のゼブラ企業化を目指しています。私たちは団結するほど強くなるのです。

2022 Zebras Unite Q&A 〜協同組合として、ゼブラ企業というコンセプトを社会実装するために〜

ーーZebras Uniteは今後どのように協同組合のカルチャーを築いていくのでしょうか?

この夏、私たちは初のメンバーミーティング、DazzleCampを開催し、6月には初の(バーチャルな)役員選挙を行いました。現在、私たちはシェアホルダーの皆様を代表して民主的に選出された役員を擁しています。これらの素晴らしいリーダーや代表者については、こちらでご紹介しています。さらに、社内のCo-governance構造をより成熟したものにするため、ソシオクラテス(すべての人の利益が等しくなるような社会形態)と「Do-ocracy」の原則に基づいた自律性と協調性のある、合意型、協議型、委任型サークルのマトリックスをテスト・反復し、ゼブラ企業らしさを体現するために成長させています。その詳細については、近々、またお話しします。

ーー知見をどのように他の人とシェアし、また他の人から学ぶことができるのでしょう?

このように、協同組合型のネクストエコノミー企業を築き上げた実体験をもとに、私たちはZebras Uniteでアドバイザリー・サービス業務を開始しました。

私たちのプロジェクトには、フィラデルフィア・メディア・ファウンダーズ・エクスチェンジの共同創設の促進、アメリカのバルチモア市の Intergenerational Initiative for Trauma and Youthと共同でのデータCoop立ち上げの支援、クレスゲ財団とのコミュニティ投資戦略についての深いディスカッション、グリーンバレーファームのガバナンス課題の解決、コミュニティ向けの実験的サマースクールの指導などが含まれます。私たちは、構造的な変化に取り組む企業や組織と密接に連携することに手応えを感じています。

私たちと一緒にこのような問いを立て、それに答えることに参加する準備はできていますか?advisory@zebrasunite.com までご連絡ください。日本語での問い合わせは東京チャプター(tokyo@zebrasunite.com)までどうぞ。

おわりに

マーガレット・ウィートリーの言葉を借りれば、「地域社会が自分たちの大切なものを発見すること以上に、変化をもたらす力はない」のです。この5年間の旅を振り返ると、文化や地域、企業の種類に関係なく、ゼブラ企業を結びつけているのは、世界にとってより良いビジネスを実現するために、未来の経済を共に築こうという深い、変わらぬ決意であることに何度も気づかされます。

休息と再生のためのダズリングシーズンとなることを祈ります。

マーラとダズル・ディストリクト・チーム


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