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スタートアップ企業の第3の選択肢,「Exit to Community」

今回はゼブラ企業が社会的インパクトと利益を両立するための一つの方法論として注目されている、Exit to Community について取り上げた University of Colorado Boulder の記事を翻訳したものをお届けします。原文はこちらです。

スタートアップ企業には、「Exit to Community」という新しい選択肢が必要とされている


起業家がスタートアップを設立する理由は様々です。設立する際の創業者のモチベーションは、多くの場合、自分自身のために成功したいという願望と他人のために価値のあることをしたいという願望が入り混じっています。偉業を成し遂げたいという夢もあるかもしれませんね。ただし、多くの人から不要と思われる会社を作るという目的で起業するという人はいません。しかしながら、現在の多くのスタートアップはそうなるように構築されているのです。

スタートアップ企業が早期投資を受けるとき、一般的にはどの企業も、企業へ事業を売却するか、IPOするかの2つの「Exit」に向けて動いていることが定石であり、そのどちらを選択しても、そのスタートアップ企業はホットポテト(爆弾ゲームの爆弾のようなもの)に例えられます。ある投資家グループは、別の投資家グループに売却するために購入し、その別の投資家グループはその先のカモに売却するために購入....。投資市場にはこのようなピラミッド型のスキームのようなものがあります。また、Exitというタイミングは、その会社が持っていたかもしれないポジティブな社会的ビジョンやミッションが崩れ始める瞬間であることが度々あります。

もしスタートアップが投資家の無意味なラットレースに巻き込まれることなく成熟する事ができる選択肢を持っていたらどうでしょうか?

今後数ヶ月の間に、私はスタートアップのための新たな選択肢を生み出すのに示唆深い戦略やストーリーを考えていきたいと思います。コミュニティというExitの選択肢「Exit to community」です。「Exit to community」(以下E2C)では、会社は投資家が所有するものから、会社を最も信頼している人々に所有されるものへと移行します。ここでいう会社を最も信用している人々とは、ユーザー、労働者、顧客、参加組織、またはそのようなステークホルダーグループの組み合わせかもしれません。共同所有には、協同組合、信託、またはクリプトトークンなどのメカニズムを利用すること考えられます。Exit to communityをした結果、コミュニティが会社全体を所有することもあれば、事足りる部分だけを所有する場合もあります。

スタートアップがコミュニティへと移行する際には、創業者は、自分たちのリスクとハードワークに見合う価値があったと感じるだけの十分な報酬を得る必要があります。投資家もまた、リスクに対して公正なリターンを得るべきです。最も重要なことは、主要なステークホルダーは、会社を共同で所有しているからには、その会社が彼らの信頼と継続的な投資に値することを知るべきである。たとえばソーシャルメディア企業の場合、ユーザーが自分のプライベートデータがどのように使われているか、使われていないかについて、意味のある発言権を持つことかもしれません。ギグワーカーのプラットフォーム事業の場合は、ギグワーカーが労働条件を共同で決定すること、また事業が生み出した利益の扱い方を決めることかもしれません。これらの方法によって、現在多くのスタートアップが直面している、「説明責任を果たせない事態」を防ぐことにも役立つかもしれません。

E2Cの方法論を検討しはじめるうえで、ベンチャーキャピタルのポートフォリオの中で、「ゾンビ」と呼ばれる領域、つまり失敗と呼ばれる事業でもなく大成功と呼ばれExit準備をする企業でもないスタートアップ企業を特定することが一つの方法としてあります。投資家は、休眠状態となってしまった投資資金を清算する新しい方法により利益を得ることができます。コミュニティは、特に後に貯蓄や利益として還元されることを勘案すれば、現金で会社を購入することも可能です。また、将来の成長を期待して外部から資金を調達することもできます。加えて、スタートアップ企業は、初期の資金調達を行う際に、将来的にこういった方法でExitする可能性を踏まえた特別な条件を設定しておくことで、E2Cのための計画を立てることもできます。過去にESOP(従業員による株式所有計画)やベンチャーキャピタル業界がそうであったようにに、こういった新たな資金調達を実現可能かつ魅力的なものにするためには政策介入が必要かもしれません。私はこれまでこれらが持つさまざまな可能性について考えてき、またぜひみなさんとも考えていきたいと思っています。

なぜ、スタートアップを最初からコミュニティが所有する形で始めないのか、とお聞きになる方がいるかもしれません。それも確かに選択肢の一つであり、みなさんのご意見を聞きたいと思っていますが、#PlatformCoopコミュニティやStart.coopアクセラレーターの共同設立を通じて多くのスタートアップをサポートしてきた実体験からは、多くの場合、最初からコミュニティを所有した形で事業を始めることは、正しいアプローチとは言い難く感じます。

スタートアップ経営というのはリスクの高い取り組みであり、そのリスクを初期段階で他の参加者に転嫁するのはフェアではないと思いますし、また、スタートアップは通常、早い段階で何回か大きな決断を要するピボットを行う必要があり、大規模なコミュニティである共同所有者を持つことは、小規模で信頼性の高い創業者のグループよりも、そのような大きな決断を行いにくくなります。初期段階のスタートアップ経営においては、リスクと責任を集中させておくことが合理的な戦略となるのです。後々、スタートアップ事業を確立して、ある程度安定した後に共同経営するコミュニティオーナーシップに移行することは、事業の性質により適したものになるでしょう。つまり、E2Cという選択肢によって、ダイナミックなスタートアップかつ社会的責任をもち持続可能性のある公共資産という2つの側面を持つことができるのです。

ここで話したE2Cについてのビジョンは、社会的企業に詳しい弁護士であるJason Wiener氏(今までに何度かE2Cに参加していただきました)との対話や、Zebras UniteLouis Kelsoplatform cooperativismsteward-ownership との交流の中でインスピレーションを受けて生まれてきました。よりこれから多くの人とこの考えについて意見を交わしていきたいと思っています。

コロラド大学ボルダー校のメディア・エンタープライズ・デザイン・ラボのチームは、起業家、活動家、投資家、政策提言者、研究者などを対象に、この取組に協力してくれる方を探しています。是非ご参加いただき、あなたの考えるE2Cについて教えてください。

Nathan Schneider 

Zebras Uniteは、昨年カウフマン財団の支援を受けて、Nathan SchneiderとMedia Enterprise Design Lab の協力を得て、Exit to Community をどう実現するかを追求しています。

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