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私の演劇の記憶-FRAGMENT- 永田紗茅

『FRAGMENT』の主人公が俳優であることにちなんで、実際に俳優である出演者一人一人の、演劇に関する「記憶」を深掘りするインタビュー企画、「私の演劇の記憶-FRAGMENT-」。
俳優として生きている人の考えを「断片」を集めていくと、
自ずと『FRAGMENT』という作品につながっていくのかもしれません。

五人目は春日飛鳥役、永田紗茅さんにお話をお聞きします。


まず永田さんのお話を伺いたいのですが、永田さんはかなり早くから芸能活動をされているとお聞きしました。

最初は小学六年生から中学三年生まで子役事務所に所属していました。きっかけは親が勝手に応募してたっていう、あるあるのやつです(笑)。でも興味はすごくあったので乗り気ではあって。その子役事務所は週一回のレッスンで、何かテレビドラマに出るぞみたいな目標があるっていう感じはなかったですね。特別、舞台の子役っていうのでもなかったです。そんな中で、同じ事務所に所属してた子に母同士の仲がよかった子がいて、そのお母さんにいのうえひでのりさんの舞台が面白いよって言われて、中学三年生で観に行ったのが初めての観劇でしたね。舞台ってこんな面白いんだって思いました。

それはなんという舞台ですか?

いのうえシェイクスピアの『鉈切り丸』(脚本:青木豪 演出:いのうえひでのり)です。中学三年生の十一月二十三日。はっきり覚えてますよ。テイストは和物で鎌倉時代の人物とかが出てくるんですけど、シェイクスピアの『リチャード三世』と融合した世界観の作品でした。殺陣がめちゃめちゃカッコよくて、迫力に圧倒されて。それが衝撃的で、舞台俳優になろうって思ったんですけど、最初のうちはアクション俳優になりたいって思ってる時期もありました(笑)。

『鉈切り丸』の何がそれほど衝撃的だったんでしょう?

あらすじを何も知らずに母に連れて行かれて、主演がジャニーズの森田剛さんだったんですけど、当時の私は本当に失礼な話ですが「どうせジャニーズの演劇だから」なんて思っている部分もあって。それでシアターオーブっていうすごく大きな劇場で観たんですけど、私は三階席の後ろから何列目かっていうくらいの席で。そこからだと本当に舞台上の人が豆粒くらいにしか見えないんですよ。そんな感じで観に行ったのに、なんて言うんでしょう、それでもそこにいる人がむしろ実在する人間とは思えないくらい強烈な存在としてそこにいたんですよ。虚構なのに、でもちゃんと生きていて、私は劇の空間にのめり込んでいました。いまだにうまく言葉にできなくて、これからも言葉にするものでもないんだと思うんですけど、そんな経験でした。

それが舞台俳優になろうと思ったきっかけだったんですね?

そうです。それまで舞台には関心がなかったんですけど、その時観たものの衝撃が凄すぎて。よく分からないけど、すごいかっこいい、こうなりたいって思いました。それでこれから一生やっていくことを考えたんですよ。そう思うとその時所属していたのは子役事務所だったから、違うところに入ろうと思ってやめました。高校に入って、バイトしながらお金貯めて、ワークショップに通ったり、殺陣とかダンスのレッスンをしたり、オーディション受けたりしていました。

そんな経験が元になって、今舞台俳優をお仕事にされているんですね!ではそんな永田さんは、今どんな俳優を目指しているんでしょう?

最初は男性に混ざっても遜色がないくらい殺陣ができる女優になりたいと思っていました。やっぱり殺陣の舞台に出たかった(笑)。でも知れば知るほど、男女が混ざり合うのは体格の問題もあって難しい。
今は漠然と、芝居が上手いすごい役者になりたいなって思っています。主役になってキラキラ目立つっていうよりかは、この人にしかできないとか、良い意味で邪魔をしないで、でも記憶に残るような芝居ができる俳優になりたいですね。

名バイプレイヤーのようなイメージですかね?現在所属されている劇団「柿喰う客」では主役が多いイメージですが。

劇団の一員としての自分と個人としての自分とで、やっているモチベーションというか気持ちが少し違くて。私にとっての柿喰う客のイメージは「圧倒的な亜空間」というか、演劇でしか出来ないことをやっていて、それが好きで入るに至っているわけですが、だから柿喰う客では人間だけど人間ならざるものというか、一種の演劇怪物みたいになりたいなって思っています。よく「柿喰う客の人たち怖いと思ってた」って言われるんですけど、だからそれはある意味で嬉しくもあります。でも一方で個人の自分としては、もっと海外戯曲をやってみたいとか海外の演出家とやってみたいという思いがあります。アングラのお芝居にも興味があって、テント芝居も挑戦してみたいですし、淡々とした会話劇観たいなことにも挑戦してみたい。劇団の自分と個人の自分でやりたいことが全然違うけど、やりたいことがどっちにもたくさんある(笑)。

お話聞いていると、とても幅広く演劇に挑戦したいことをお持ちなんですね!

元々好きなジャンルみたいなのは、それこそ殺陣がある時代ものとかあったんですけど。なんか演劇に関して、知らないものがあるのがすごい悔しくて。演劇人と話してる時に、これ観たことある?これ知ってる?ってなって、知らないって答えるのが本当に悔しいんですよ(笑)。だから何でも食わず嫌いせずに観ていたら、演劇全部面白いって思えるようになってきて。現実で生きるのつら〜ってなっても、演劇作品はたくさんあって、やりたいものも観たいものもたくさんあるから、そのために生きてよ〜って思えます。

なんと言うか、すごい、オタクですね!演劇オタク(笑)!

あ、そうだと思います!元々観劇オタクから入ってるので!

ではそんな演劇オタクの永田さんから見て、劇団東京夜光はどんな印象でしょうか?

すごい仲良しっていう感じはしないんですけど、話してると、本当に長い仲で演劇観の奥の方で繋がっているんだなって感じます。表で分かりやすくそういうことしなくても、本当に劇団というもので繋がっているんだなって。

今回の『FRAGMENT』に関して、ご自身の役である春日飛鳥の印象はいかがでしょうか?

この役、稽古始めの読み合わせからかなり変わったじゃないですか。で、噂によると川名さんが「他の役はいいんだけど、飛鳥だけなんか永田さんに合わなかった」っておっしゃってたらしくて。それが、台本が変わって、この一回読み合わせで川名さんに何を見抜かれたんだろうって思うくらい役が自分と近くなっていて(笑)。なんて言うか、怒るポイントとか怒った後の言動とか、似ているところがあります。

そうだったんですね!ではそんなご自身と近いところがある飛鳥を演じる上で難しいところはありますか?

できるだけ力を抜いてやろうと思っているんですけど、抜きすぎると役と自分が近くて、演劇にならなくなってしまうんですよね。観てもらうものにしないといけないっていうギアの入れ方を探っています。そうしないと役の飛鳥ちゃん嫌いかもじゃなくて、永田紗茅嫌いかもってなっちゃう(笑)。それもいいんですけど、近いからこそ役になれたらなと思います。

この作品、どんな方に見ていただきたいでしょうか?

演劇に遠くはなく、でも近くはない人が観てどうなんだろうって気になります。例えば学生時代に演劇をやっててやめた人とか演劇をやってる友人がいる人とか、それこそ演劇やってる学生とか!そういう人たちが観るとどこか懐かしさと、あるいは未来の自分を感じるのかも知れません。演劇に近い人、例えばほんとに主人公の白戸みたいに俳優やってる人はイライラしちゃうかもしれない(笑)。それはそれで絶対面白いんですけど、作品を客観的に見られなくなってしまう作品かなと思います。

最後にコメントをお願いいたします。

まずはこれを読んでいただき、ありがとうございます。今この作品ではいろんな企画がSNS上で生まれていて、重いのかなって思う人が多いかなと思うのですが、私の中では重すぎず軽すぎず、近すぎず遠すぎず、程よい距離感で観れる作品になるんじゃないかと思っているので、好き嫌いせず、吉祥寺という街とともにこの作品を味わっていただければと思います。是非是非、お散歩がてら吉祥寺に観に来てください!


以上がインタビュー本編になります。
劇団東京夜光『FRAGMENT』、吉祥寺シアターにて上演いたします!

劇団東京夜光 公演
「FRAGMENT」
作・演出:川名幸宏
2023年、戦争が起きたら、俳優はどう生きるか。
その記憶は、誰の真実か—
2022年の本多劇場公演から1年半。
劇団東京夜光は”劇団とはいったい?”に勝手に向き合いながら1年間の創作を積み重ね、
劇場のある吉祥寺の1944年と2023年を繋いでみます。

1944年、B29東京空襲の最初の標的となったその場所に、2023年、あまりにも先が見えない 30 代俳優の男女ふたり。 広大な原っぱのベンチに座って、男の雑なプロポーズを皮切りに始まる痴話喧嘩。
その刹那、航空機の轟音。
地下壕に逃げ込んだ人々は、戦中の少女の日記を見つけ、“少女の記憶の真実”をとりとめもなく探しはじめる。
【出演】
丸⼭港都
草野峻平
笹本志穂(以上劇団東京夜光)

永⽥紗茅(柿喰う客)
阿久津京介(もあダむ)
堀⼝紗奈(劇団4ドル50セント)
⾓⽥萌果(劇団⻘年座) 
⽥中博⼠(東京タンバリン)
都倉有加(C-PLUS)
ししどともこ
中⼭⿇聖
【チケット料金】
一般前売=5,000円 U-25前売=3,500円
一般当日=5,500円 U-25当日=4,000円
アルテ友の会会員=4,500円(武蔵野文化生涯学習事業団でのみ取り扱い)
*全席指定・税込*U-25は当日引換券のみでの販売。当日受付にて要証明書提示《チケット取扱》
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【お問い合わせ】
劇団東京夜光
info@tokyoyako.com

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