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私の演劇の記憶-FRAGMENT- 田中博士

『FRAGMENT』の主人公が俳優であることにちなんで、実際に俳優である出演者一人一人の、演劇に関する「記憶」を深掘りするインタビュー企画、「私の演劇の記憶-FRAGMENT-」。
俳優として生きている人の考えを「断片」を集めていくと、
自ずと『FRAGMENT』という作品につながっていくのかもしれません。

七人目は佐藤正樹役、田中博士さんにお話をお聞きします。


田中さんご自身の初めての観劇はいつですか?

すごい遡ると、小学校に入ったくらいのとき。親が公務員だったから、その関係で劇団四季とか地域の人形劇団のチケットをよくもらってきてて、それを観に行ったから、確か一番最初は劇団四季の『ライオンキング』です。

幼少の頃から舞台に触れていたんですね。その頃は俳優という今のご職業を意識してましたか?

全く。全くそんなことは意識してなかった。

いつ頃俳優という仕事を意識し始めたのでしょう?

当時はそんなこと考えてなかったけど、一個あるのは、高校の時の文化祭のクラス発表。2年生の時に演劇をやるんだけど、それで誰が出る?みたいな感じにクラスがなって。僕は全然興味がなかったんだけど、誰かが田中君いいんじゃない?みたいに言って、僕は別に出ても出なくてもどっちでもいいって感じでいたら、結局他に誰も出なくて、演劇に出ることになりました。それが意外と楽しくて(笑)。

なんの作品をやったんですか?

北野武の『座頭市』っていう映画のスピンオフをクラスの子が書いて、それをやりました(笑)。練習してる時にちょうどWOWOWで『座頭市』が放送されるってなって、録画で見てみようって思って番組表見たら、その前だったか後ろだったかの時間で野田MAPの『透明人間の蒸気』(作・演出 野田秀樹)を放送してて、勉強がてら一緒に録画して観たんですよ。今まで劇団四季とかしかみてなかったから、その『透明人間の蒸気』は衝撃でした。こんなに自分をさらけ出すものなのか、これが演劇かって感じたのを覚えています。それでクラス発表をやって、すごい面白くて、こういうのいいなと思って大学で演劇サークルに入りました。それからどんどん演劇にのめり込んでいきました。

文学座の研究所に所属されていたということですが、その経緯とその後を教えていただけますか?

大学を卒業するタイミングで、もう少し演劇のこと勉強したいって思いました。当時僕に演劇を教えてくれていた人が文学座の出身で、そのこと伝えたら、文学座っていうところがあるよって教えてくれて。それで東京に来て、研究所に入りました。それで演劇を学んでいって。文学座には研修生が終わる三年目に、なんて言うか選抜みたいなものがあって、それで準座員、座員ってなっていくんですけど、周りの人には「お前は上がるだろう」と言われていたんです。で蓋を開けてみたら落ちてて。それからは路頭に迷いました。

その時田中さんは何を思ったんでしょう?

この後どうしようって考えた時に、実家に帰ることが浮かんで。でも、今実家は農家をやっているんですが、それを継いでやっていく自分を想像したら「あ、そうなったら自分は死んじゃうな」と思ったんです。死んじゃうなっていうのも少し違うんですけど、なんて言うか、このまま辞めてしまったら、生きている意味を失ってしまうと直感的に思ったんです。もちろん農家は素敵なお仕事なんですけど、ここで俳優を諦めたら何も残らないって感じて、なんとかもう少し続けていこうと決めました。それからはオーディションを受けて、ご縁があったりして、なんとか続けてきています。

そんな田中さんにとっての重要な演劇の作品、一つあげるとするならなんでしょうか?

これは、忖度ではなく、東京夜光の『BLACK OUT』(作・演出 川名幸宏)かもしれないです。それまでもいろんな作品観て、感動したり凄いなぁって思ったりしたことあったんですけど、『BLACK OUT』観た時に、川名さんという演出家は演劇に対してものすごく真摯に向き合っている人だなって思って。派手じゃないけど、しっかり地に足を付けて「自分たちはこう思う、こう表現したい」っていうことを示していたように感じました。コロナがあって、自分もほとんどの仕事がなくなってっていう状況だから、すごく前向きになれた。

そうなんですね!ではそんな東京夜光、実際に稽古していてどのように感じますか?

これは川名さんの人物像になるんだけど、嫌味がない。何かやっていて、違ったらすぐに違うって言って変えていく。すごく柔軟で、良い意味でプライドがない。主体的に表現を考えることができて、やっていてものすごく心地がいいです。

では作品のお話に移りますが、田中さんは田中さん演じる佐藤正樹とご自身でどんな点が重なると感じていますか?

人と人の間に立って、仲をとり持つ感じみたいなところは、すごく共感する部分があります。これは同期の役である諸橋陸を演じている角田さんとよく話すことなんですが、普通に二人で話していて、「あ、きっとこういう話を正樹と陸はしてるんだろうな」って思う瞬間が結構あって。

白戸に対してはどんな印象をお持ちですか?

これはネタバレになるんで言えないですけど、白戸のセリフの中で僕がかつて言ったことがある言葉そっくりのものがあるんですよ(笑)。本当に白戸の気持ちがすごいよく分かる。みんな分かるんじゃないかなぁ。

最後にこの『FRAGMENT』、どんな人に観てもらいたいでしょう?

もちろん登場人物たちみたいに、クリエイティブに関わる仕事をしている人たちには観てもらいたいですけど、全然関係ないことをしている人たちにも観てもらいたいです。こういう業界に全く関わりのない人に観てもらって、俳優をやっている・演劇をやっている僕たちはこう思いますっていうのを伝えて、それでどう思いますか?って。やっぱり世界情勢とかもあって、あらゆる人に共通することだから、それについてのコミュニケーションの方法としてこの芝居があってほしいなと思いますね。


以上がインタビュー本編になります。
劇団東京夜光『FRAGMENT』、吉祥寺シアターにて上演中です!

劇団東京夜光 公演
「FRAGMENT」
作・演出:川名幸宏
2023年、戦争が起きたら、俳優はどう生きるか。
その記憶は、誰の真実か—
2022年の本多劇場公演から1年半。
劇団東京夜光は”劇団とはいったい?”に勝手に向き合いながら1年間の創作を積み重ね、
劇場のある吉祥寺の1944年と2023年を繋いでみます。

1944年、B29東京空襲の最初の標的となったその場所に、2023年、あまりにも先が見えない 30 代俳優の男女ふたり。 広大な原っぱのベンチに座って、男の雑なプロポーズを皮切りに始まる痴話喧嘩。
その刹那、航空機の轟音。
地下壕に逃げ込んだ人々は、戦中の少女の日記を見つけ、“少女の記憶の真実”をとりとめもなく探しはじめる。
【出演】
丸⼭港都
草野峻平
笹本志穂(以上劇団東京夜光)

永⽥紗茅(柿喰う客)
阿久津京介(もあダむ)
堀⼝紗奈(劇団4ドル50セント)
⾓⽥萌果(劇団⻘年座) 
⽥中博⼠(東京タンバリン)
都倉有加(C-PLUS)
ししどともこ
中⼭⿇聖
【チケット料金】
一般前売=5,000円 U-25前売=3,500円
一般当日=5,500円 U-25当日=4,000円
アルテ友の会会員=4,500円(武蔵野文化生涯学習事業団でのみ取り扱い)
*全席指定・税込*U-25は当日引換券のみでの販売。当日受付にて要証明書提示《チケット取扱》
▼ローソンチケット▼
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【お問い合わせ】
劇団東京夜光
info@tokyoyako.com


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