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私の演劇の記憶-FRAGMENT- 都倉有加

『FRAGMENT』の主人公が俳優であることにちなんで、実際に俳優である出演者一人一人の、演劇に関する「記憶」を深掘りするインタビュー企画、「私の演劇の記憶-FRAGMENT-」。
俳優として生きている人の考えを「断片」を集めていくと、
自ずと『FRAGMENT』という作品につながっていくのかもしれません。

四人目は大宮桐子役、都倉有加さんにお話をお聞きします。


この企画で皆さんにお聞きしていることなんですが、都倉さんが初めて見た演劇はなんでしょうか?

本当の初めては、幼稚園のお遊戯会です。お遊戯会って言っても、ホールを貸し切ってやるような会で、それぞれの学年とかでグループになって発表をするの。ほとんどはダンスだったんだけど、それで何個かのグループが演劇やってて、それが初めての観劇ですね。と言ってもセリフは音声で、動きを合わせるくらいのものだったんだけどね。

では最も印象に残っている演劇はなんでしょう?

夢の遊眠社の「半身」(原作・脚本:萩尾望都 演出:野田秀樹)。これは映像で見せてもらったんだけど。

どんなお話なんでしょう?

身体がつながっている結合双生児の姉妹のお話で、元々萩尾望都さんの短編漫画だったのを野田秀樹さんが舞台にしたんですよ。なんと言えばいいか、姉妹のうち、妹はすごい可愛くて、姉はすごく醜いの。それで、身体がつながっているから姉が食べたご飯の栄養とかを妹に吸われちゃって。妹は何をしても可愛い可愛いって言われて、それを姉は横で聞かされて、蔑まれて。最終的に身体を切らないと、つまりどちらか一人しか生きていけないってなって、どうなるんだろうっていう物語。

都倉さんにとって、どんな点が印象的だったんでしょう?

なんていうかね、まぁ姉の方はさ、言葉がすごく難しいんだけど、簡単に言ってしまうと見た目が醜いのよ。そういう設定の物語だしね? なんだけど、それがびっくりしたって言うか、そういう人が主役になってもいいんだって思った。自分は結構刷り込みがあるっていうか、テレビ見てても若くて可愛くて、清楚で無垢で、みたいな人が出てて、それが女性の理想であるみたいな思いが自分にはあって。そういう意味で、自分にはそういう人になりたくてもなれないっていうコンプレックスみたいなものがあったし、主役をやるのがいつもそういう人たちだなって思ってたから、なんていうか怒りみたいなものもあって。いつも主役に対しての憧れと怒りが同時にあった。だけど俳優がやりたくてって思っていたから、そういう人が主役になって、しかもそういう人の物語があって、そういう人たちの悲痛な気持ちをまっすぐに伝えてくれる演劇があって、私はすごく救われたっていうか。単純に「そのままでいいじゃん」みたいなことじゃなくて、自分のことを醜いと思っているのであれば、それはそのままあって、で、それはそれでいいみたいな。言葉にするのが難しいんだけど、すごく感銘を受けた。自分もそういう芝居をしたいなって思ったなぁ。その頃には大学のサークルで演劇を始めてたんだけど。

もう既に演劇を始めていたんですね。では一番最初、俳優になりたいと思ったのはいつなんでしょう?

具体的には覚えていないんだけど、強いて言うならさっきの幼稚園の頃のお遊戯会(笑)。年長さんの時に『キャンディ♡キャンディ』(原作:水木杏子)のダンスを踊ったんだけど、すごい綺麗な真っ白のお洋服を作ってくれて、それを着て、本番の幕が開いた瞬間に客席から「うわー!」って拍手と歓声が起こったのよ。それで「気持ちいー!」って(笑)。

とてもピュアな経験、感覚が根底にあるんですね。

多分そうだと思う。それ以来テレビとか見ると、ずっとそっち側に行きたいって思うようになって。大学卒業してから、普通に働いてる期間もあったんだけど、ずっと演劇やりたい、俳優やりたいっていう思いがあったかなぁ。

では俳優になってみて、辞めたいとか辛いとかを思うことはなかったんでしょうか?

うーん。普通に社会的信用を失うっていうか、社会に認められる人間ではなくなるかもしれないっていう恐怖が最初はあった(笑)。俳優になってみて実際そんなことは感じなかったけどね。なってみてからは辞めたいって思うことはないかな。ずっと演劇やってたいって思ってるね。稽古中に色々言われたりとかうまくいかないこともあるけど、そういう問題は本番までにはどうにかするし、それよりは演劇をできる嬉しさ、楽しさみたいなものの方が大きいと思う。

ずっと演劇がお好きなんですね! そんな都倉さんが思う俳優をやっていて楽しい瞬間はどんな時なんでしょう?

これは私の考えなんだけど、なんて言うか、作る側が観てる人の人生変えてやろうなんて、なんかおこがましいことだなって感じることがあって。もちろん観に来てもらうお客さんには楽しんでもらえるよう取り組んでいるし、結果的に舞台が終わって、お客さんに良かったなって思ってもらえたり感想頂けたりっていうのはとても嬉しい。でも、もう一つあって、私が楽しいなっていう瞬間は自分にとってのことっていうか、演劇やってるとすごく世界が広がっていくんだよね。今回で言うと桐子は脚本家の役で、それに関して色々リサーチすると、当たり前だけどそれに関してたくさんのことを知っていく。舞台上にある全てのものにそれができて、そういう作業が楽しい。

では、今回の『FRAGMENT』に話を移して、作品を通してどんな印象でしょう?

私は、すごく白戸くんに共感しちゃうというか、一緒というか(笑)。だからセリフの中で白戸くんに向けられている言葉を聞いてると、辛い(笑)。だからこれは作品を通じてなんだけど、役たちはみんな何かしらの表現者たちでそれぞれのことを話していて、それが難しくて。セリフで役たちが何か表現に関すること言ってるけど、それを演じているお前自身はそれ出来てるのかって、私がお客さんだったら思っちゃう。自分自身に返ってくるんだけど、その難しさに挑まなきゃいけないなって。

役と出演者の皆さんが重なっていって、セリフが自己言及になっている部分があるということでしょうか?

だからある意味で俳優をやっているからこそ、俳優の役は難しくて。でも、だからこそ、そういう表現者とか演劇関係者とかに見てもらって、挑戦したいなって。

最後に『FRAGMENT』を見ていただく人にコメントをお願いします。

この『FRAGMENT』の結末が、観客の皆さまにはどう映るのかなって思います。希望的なのか、絶望的なのか。だから、ぜひ、劇場でご覧になっていただければと思います!!


以上がインタビュー本編になります。
劇団東京夜光『FRAGMENT』、吉祥寺シアターにて上演いたします!

劇団東京夜光 公演
「FRAGMENT」
作・演出:川名幸宏
2023年、戦争が起きたら、俳優はどう生きるか。
その記憶は、誰の真実か—
2022年の本多劇場公演から1年半。
劇団東京夜光は”劇団とはいったい?”に勝手に向き合いながら1年間の創作を積み重ね、
劇場のある吉祥寺の1944年と2023年を繋いでみます。

1944年、B29東京空襲の最初の標的となったその場所に、2023年、あまりにも先が見えない 30 代俳優の男女ふたり。 広大な原っぱのベンチに座って、男の雑なプロポーズを皮切りに始まる痴話喧嘩。
その刹那、航空機の轟音。
地下壕に逃げ込んだ人々は、戦中の少女の日記を見つけ、“少女の記憶の真実”をとりとめもなく探しはじめる。
【出演】
丸⼭港都
草野峻平
笹本志穂(以上劇団東京夜光)

永⽥紗茅(柿喰う客)
阿久津京介(もあダむ)
堀⼝紗奈(劇団4ドル50セント)
⾓⽥萌果(劇団⻘年座) 
⽥中博⼠(東京タンバリン)
都倉有加(C-PLUS)
ししどともこ
中⼭⿇聖
【チケット料金】
一般前売=5,000円 U-25前売=3,500円
一般当日=5,500円 U-25当日=4,000円
アルテ友の会会員=4,500円(武蔵野文化生涯学習事業団でのみ取り扱い)
*全席指定・税込*U-25は当日引換券のみでの販売。当日受付にて要証明書提示《チケット取扱》
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【お問い合わせ】
劇団東京夜光
info@tokyoyako.com

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