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私の演劇の記憶-FRAGMENT- 中山麻聖

『FRAGMENT』の主人公が俳優であることにちなんで、実際に俳優である出演者一人一人の、演劇に関する「記憶」を深掘りするインタビュー企画、「私の演劇の記憶-FRAGMENT-」。
俳優として生きている人の考えを「断片」を集めていくと、
自ずと『FRAGMENT』という作品につながっていくのかもしれません。

十人目は神山光輝役、中山麻聖さんにお話をお聞きしました。
中山さんは体調不良のため、明日9/18(月)12:00開演の公演は作・演出の川名が代役で出演いたします。


中山さんの初めてのご観劇はなんだったのでしょうか?

小学校3年生の時に学校に劇団の方が来て鑑賞会みたいな行事があって、それが多分初めてです。作品名とか劇団の名前とかは忘れてしまったんですけど、内容と劇中にあった歌は今でも鮮明に覚えてるくらい、今思い返すとそれが強烈に自分の中に残っているなって感じます。確かその直後くらいに『ピーターパン』を母親と観に行って、それも印象に残ってます。元々ピーターパンは好きだったんですけど、実際に目の前をフライングしているピーターパンを観て。ティンカーベルが魔法の粉を客席に撒くんですけど、それを子供ながらにかき集めていたのを覚えてます。それで手に入る量しか持って帰らせてもらえなくて、母親にこれじゃ足りない、もう1回行きたいって言って、今度は麦わら帽子を持って行ってそれに詰めて持って帰りました(笑)。寝る時にそれを自分にかけて、僕の記憶はそこまでなんですけど、後で母親に聞いたら次の日僕が起きてきたら「ネバーランドに行けなかった」って拗ねてたみたいです(笑)。

とても純粋な経験ですね(笑)。それ以降も演劇には触れていたんですか?

子供だったので母親とよく観に行ってました。日本の舞台というよりかはブロードウェイ、例えばオペラ座の怪人とかキャッツとか、ミュージカルが多かったですね。海外の方の公演も観に行っていて、もちろん外国の言葉なので言語はわからなくて、出ている字幕も感じが多くて読めないんですが、楽しくて見ていましたね。

そんな中山さんの中で、今まで見てきた中で最も衝撃的だった作品を1本あげるとするならなんでしょう?

1本かぁ〜。なんだろうな。でも、ある意味衝撃的だったのは、それまでずっとエンタメ系のお芝居を観ていて、観ていて楽しい作品ばかり観ていたんですが、自分が出る側になって色々な作品を勉強して行く中で出会った、2017年にgood morning N°5っていう劇団が下北沢でやっていた『豪雪』(作・演出 澤田育子)っていう作品です。たまたま知り合いに勧められて観に行ったんですが、自分の中でものすごい衝撃でした。

どんなお話だったんでしょうか?

なんか自分の中に客席と舞台はある種隔離された空間で見えない壁があるっていう認識があったんですが、この作品はそういうものを取っ払っていて。紙吹雪がバァーって飛んできて、客席が真っ白になるんですよ。で、これは毎公演なのか僕が観た回だけなのかは分からないんですが、芝居を途中で止めたんですよ。紙吹雪が凄すぎて、「1回これ片付けるよ」って言って、いきなり芝居じゃなくてリアルになってお客さんを巻き込みながら会場を片付け始めて。今まで観てきたものとは全く違くて、なんだこれはって思いました。自分がこれまで観た演劇も面白いんですけど、それだけじゃなくて、演劇の答えっていうのは1つじゃないんだって思いました。それからとにかくいろんなものを観なきゃいけないって思って小劇場含めていろんな劇場に行くようになりました。観なきゃいけないっていうかとにかく色々観たくなって。

そんな中山さんから見て、劇団東京夜光はどんな印象ですか?

実際に作品に参加してみて、演劇に入る前のコミュニケーションを大切にしてくれているなって思いました。本読みの段階からたくさんディスカッションをしてくれて、役者同士のコミュニケーションも多くて。だから立ち稽古に入ってから芝居に活かされていって、たくさん共有できていることがあって嬉しかったですし、濃厚な稽古でした。

では東京夜光の作品性はどのように感じていらっしゃいますか?

『ユスリカ』と『奇跡を待つ人々』は劇場で観たんですが、ものすごく遠慮のないリアルさがあるなと。これはすごく不思議に思っていることなんですが、川名さんは演出される時はとても丁寧に言葉を選んだりとか、どうやってものを伝えるかをすごく考えていらっしゃるなっていう印象なんですが、『ユスリカ』を観た時はダイレクトにいろんなことが伝わってきました。それは僕の個人的な経験と作品が重なる部分があったことも理由の1つなのかもしれませんが、その相反する印象を持っていますね。つい人って感情的になってしまったり、言葉を選ばずにものを言ってしまったりすることがあると思うんですけど、川名さんは常に冷静に言葉を選んでるなって感じます。

『FRAGMENT』に関してはどんな印象ですか?

一番初めに台本をいただいた時に、おそらく観る人によって、これはリアルだって感じたり、いやこれはSFだ、フィクションだって思う人がいるんだろうなって思いました。それで僕はこれはリアルだって感じて。それは俳優っていうテーマもあって、戦争についてもとてもフィクションには思えなくて。

配信企画の方で白戸についてお話しされてましたよね?

僕は自分の役である神山として舞台に立つので、そういう感情はブロックするようにしてるんですけど、ふと客観的に白戸を見た時に自分と重なるところがあったり、自分が思ってることが白戸の口から出てきたりして。武に「言い当てようか?」って言われるシーンがありますけど、自分が言い当てられている気にもなってくる(笑)。これは僕が思うにですけど、役者さんは少なからずわかるっていう気持ちになるんじゃないかなぁ。それは役者だけじゃなくて、今の時代に生きている人はこの舞台の言葉で言う「思想」によって感じ方は反発したり、シンクロしたり違うと思うけど、思うところがあるんじゃないかとと思います。だからいろんな人の感想を聞きたいですね。

『FRAGMENT』のもう1つのテーマとして「戦争」というものがありますけど、こちらはいかがでしょう?

こっちもやっぱりフィクションとは思えない部分があって。僕は世代的にも戦争の当事者ではなくて、自分のこととは考えてなかったところがあるけど、『FRAGMENT』は僕たちの話だなって感じる。僕たちにとっての、この令和を生きる人たちにとってのリアルな戦争の話になってると思います。


以上がインタビュー本編になります。
劇団東京夜光『FRAGMENT』、吉祥寺シアターにて上演いたします!

劇団東京夜光 公演
「FRAGMENT」
作・演出:川名幸宏
2023年、戦争が起きたら、俳優はどう生きるか。
その記憶は、誰の真実か—
2022年の本多劇場公演から1年半。
劇団東京夜光は”劇団とはいったい?”に勝手に向き合いながら1年間の創作を積み重ね、
劇場のある吉祥寺の1944年と2023年を繋いでみます。

1944年、B29東京空襲の最初の標的となったその場所に、2023年、あまりにも先が見えない 30 代俳優の男女ふたり。 広大な原っぱのベンチに座って、男の雑なプロポーズを皮切りに始まる痴話喧嘩。
その刹那、航空機の轟音。
地下壕に逃げ込んだ人々は、戦中の少女の日記を見つけ、“少女の記憶の真実”をとりとめもなく探しはじめる。
【出演】
丸⼭港都
草野峻平
笹本志穂(以上劇団東京夜光)

永⽥紗茅(柿喰う客)
阿久津京介(もあダむ)
堀⼝紗奈(劇団4ドル50セント)
⾓⽥萌果(劇団⻘年座) 
⽥中博⼠(東京タンバリン)
都倉有加(C-PLUS)
ししどともこ
中⼭⿇聖
【チケット料金】
一般前売=5,000円 U-25前売=3,500円
一般当日=5,500円 U-25当日=4,000円
アルテ友の会会員=4,500円(武蔵野文化生涯学習事業団でのみ取り扱い)
*全席指定・税込*U-25は当日引換券のみでの販売。当日受付にて要証明書提示《チケット取扱》
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【お問い合わせ】
劇団東京夜光
info@tokyoyako.com


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