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令和5年に山道で味噌田楽をこぼす

先日、友人からこんな話をきいた。

「仕事の業績がどう頑張っても厳しそうな時、経営者がよく行くところで有名な三峯神社(みつみねじんじゃ)を参拝したら、その後たくさん受注が舞い込んで達成できた」

この手の話はまぁよくある。

もちろんご加護もあるだろうが、わざわざ遠くまで参拝しに行くのだから、もう思考が「やってやるぜ」モードになっている。そんな時はいろんなことが上手くいく。

僕は三峯神社を知らなかった。
埼玉県の秩父市にある。

友人がさりげなく言った「経営者がよく行くところで有名な」という修飾部分が気になった。

僕も経営者の端くれだった。
そして影響を受けやすいタイプだった。

数日後、秩父行きの電車に乗っていた。

黄色いソファに広い窓。

風水のことは知らないが、縁起が良さそうだと思った。

長い間、電車に揺られ、バスに揺られ、たどり着いたのは、とても立派な神社だった。

本殿の近くにこんな看板がある。

なるほど。龍ね。わかるよ。いい顔してるね。

奇しくも三連休の一粒万倍日と言われる日で、人がありえないくらいごった返していた。

御神木を撮影したら虹がかかっていた。

風水のことは知らないが、縁起が良さそうだと思った。

神社の中には大きな銅像が手を振っていた。

よく見ると日本武尊(やまとたけるのみこと)だった。日本武尊が三峯の美しい景色を気に入り、日本神話の伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と、伊弉册尊(いざなみのみこと)を祀ったことがこの神社の始まりと伝えられている。

たしかに美しい。そしてここから見える手前の山の頂上に「奥宮」があると知る。「ちょっと歩いていける」というレベルではない。登山だ。

せっかくだから「奥宮」を目指す。旅のともに、いや登山のともに、味噌田楽を買う。ジャガイモのほくほく感と味噌の匂いが香ばしい。

「奥宮」の参道に入ると急に人が少なくなる。ほとんどの人が登山姿だ。僕はスニーカーにショルダーバッグ、味噌田楽1つを携え、場違い感ハンパない状態だ。

そしてハプニングは起きた。
20分くらい山を登っていたその時だ。

ふとした拍子で、味噌田楽をこぼしてしまった。

AIだのチャットGPTだのが騒がれる令和5年に、山道で味噌田楽をこぼした。一体、いつの時代のハプニングか。きっと江戸時代にも室町時代にも同じことをした人がいたに違いない。

砂まみれのジャガイモに悠久の時を思った。

何より山を登りながら味噌田楽を食べるべきではなかった。当たり前のことだ。しかし当たり前のことが一番難しい。

こぼれたジャガイモを拾い上げ、袋に入れ、山を登った。道中、いろんなキノコに出会った。

味噌田楽で満たされるはずだった胃袋が寂しさを覚えはじめていたが、道端のキノコに手を出すわけにはいかなかった。安全面でも倫理面でも生態系保存の面でも。

最終コーナーに差し掛かると、参拝というか、アスレチックみたいな雰囲気になってきた。

鎖を手にかけよじ登る。どう考えても味噌田楽を頬張りながら登れる雰囲気ではない。早々にこぼしたのも神様のご加護かもしれないという謎の結論に至っていた。

そして、1時間くらい山を登り、ついに「奥宮」に到着。

頂上は心地よい風が吹いていた。

note上でも心地よい風を共有できる「スマホ送風機能」があれば読者の皆さんにも届けられたが、残念ながら令和5年には、まだその機能がなかった。

上の写真から心地よい風を想像してみてくださいね、と言いたいが、あまりに無風っぽい写真だ。

下山して休憩所で「山菜ぶっかけうどん」を注文した。

上の写真から美味しそうな味を想像してくださいね、と言いたいが、それより、いつか機会があれば是非皆さんも三峯神社を訪れてみてくださいね、とお伝えしたい。

そこはとても縁起の良さそうな心地よい場所でした。

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