見出し画像

まっくらの運動会

「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」というのが竹芝にある。

純度100%の暗闇の中に身を置き、視覚障害者のスタッフによるアテンドに導かれ、暗闇の中で誰かと対話をしたり、何かイベントごとを行うソーシャルエンターテイメントである。

初めての体験でドキドキしながら中に入ろうとしたら、
いきなりこんな看板が出迎えてくれた。

まっくらやみの中でやることといえば
寝ること以外何も考えられないなかで
対話をこえて、まさかの運動会。

ビジネススクールの仲間たちと一緒に8人で、
視覚障害者の方が使う杖を渡されて中に入った。

写真も撮りようがないし、スマホもない。
あるのは1本の杖と、五感から視覚を取り除いた四感だけ。「5ー1=∞」の可能性が広がるというのがコンセプトらしい。普段、「映像」を生業にしている人間からすれば、もっとも重要な感覚を奪われたような気分だ。

実際、中に入ってみると、本当に何も見えない。
「そうはいっても、中はどんな感じだったんですか?」
と問われたら、「下記のような感じでした」としか伝えようがない世界だ。

目を開けても閉じてもまったく同じなのに、僕は必死で目を見開いた。そして、入った直後に襲われたのは「閉所恐怖症」のような感覚だ。1時間以上ここにはいれないと思って、すぐにギブアップしそうになったが、仲間たちの声がけに少しずつ落ち着いた気持ちを取り戻し、さまざまな競技をやっていくなかで、楽しさも味わえた。
「そうか、これが全盲の人の世界なのか」と気づいた。

「人の声」がどれだけ心の頼りになるのかと強く思った。
そして触覚で、人に触れることの安心感が強かった。
特に両サイドに人がいてくれたり、前後にいてくれるときの安心感はすごかった。人間はその字が示すように、人と人との間にいるのが一番落ち着くのかもしれないと思った。

最後にフォークダンスを踊ったが、人生初の「ダンサー・イン・ザ・ダーク」はあまりにもたどたどしく、滑稽だった。

終わった後、特別プログラムとして、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」を日本で立ち上げた代表の志村夫妻の話を聞く機会があった。

グッドデザイン賞も受賞し、社会的な名声もあり、さぞ華やかな経歴なのかと思いきや、僕でさえ想像を絶する波乱の人生であり、波乱の経営だった。

現実の世界では視覚を奪われているわけじゃない。何でも見えているように思えても、人の上辺だけをなぞって羨ましがるうちは、何にも見えていないのかもしれない。

一時期、非常にピンチに追い込まれた時に関わっていた人がいたらしく、代表の方はその人が原因であることに気づいていなかったようで、視覚障害者のスタッフは「あの人は足音がよくない」と言っていたという。足音で人の善悪まで判断できることに驚いたと言っていた。

また真っ暗闇の館内で迷っている人がいても「迷子の足音」だとすぐに識別できるみたい。足音も僕らが耳をすませば、たくさんのことを教えてくれるようだ。

ダイアログ・イン・ザ・ダーク代表の志村真介さんが
最後のメッセージとして言っていたのが印象的だった。

「障害者の方を法定雇用率を守るために
 義務的にコスト部門で雇うのではなく、
 第一線で活躍できる社会であってほしい」

ダイアログ・イン・ザ・ダーク代表 志村真介

「まっくらの運動会」は11月27日までやっているそうなのでご興味があるかたは是非、お楽しみください!これは百聞は一見、いや一体験にしかずなので、是非、一度は味わってみてほしいです!

世界元気塾の皆さん、米倉先生、志村ご夫妻、
今日は貴重な機会をありがとうございました!!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?