学校警備員をしていた頃 その11
以前、学校警備の仕事をしてた頃のことについて振り返って思い出せることを書いています。
※ ひとつ前の話→学校警備員をしていた頃 その10
※ 最初から読みたい方は、学校警備員をしていた頃から読むことをおすすめします。
似たようなことは続くものだ
その後1週間くらいして、同じように出て行こうとする女の子がいた。
今まで1年くらいこの仕事をしていて、こういうことはなかった。似たようなことというのは続くものなのだろう。
今度は少し小柄で、3年生くらいだったのだろうか。男の子だった。
前に言われていることがあるので、今度は呼び止めて職員室に連れて行ったら、ちょうど近田副校長先生がいた。
近田先生は、その子に「どうしたの」「担任の先生は誰」等々話しかけ夢中になって対応し始めたが、私には何も言わなかった。
「私に一言もないというのもなんか変だなあ」とも思ったが、「まあ、これでよかったんだろな」と思い持ち場に戻った。別の2校の副校長だったら「ご苦労様。後はこちらで対応するので持ち場に戻ってください」くらいのことは言うだろう。
この仕事を始める時の引き継ぎで前の警備士から言われたのは「あの人はざあますおばさんみたいな外見だけど結構いい人だよ」ということだった。
確かにいい人で、悪気があるわけではないのかもしれない。でも、どうも視野が狭く、不器用で状況判断が偏っているように思った。教員時代に、出入りの業者と対応するような機会は少なく、そして、慣れていないことはあまりうまくできないのだろうか。
ところで、その半年くらい後のことなのだけど、私が学校警備を辞めてすぐの時期に、支社の学校警備担当の内勤者から電話があった。
「T小学校には、警備士が休む場所はあるんですか」と聞かれ、「T小学校にはないんですよ」と答えた。
新しい警備士とその内勤者が初めてT小学校に行き、近田先生に挨拶をしてから、「警備士が休む場所はどこですか」と聞いたところ「そんなことはそちらで引き継いでください」といって怒られ、その後少し言い合いになったそうだ。
確かに、それはこちらで引き継いだ方がいいことではあるが、そんなにすぐに言い合いになるようなことでもないと思う。他の2校の副校長だったら、「それは悪いけどこっちでは聞いてない。前の警備士に聞いてみて下さい」「はい、わかりました」くらいのことで済んでしまうだろう。
なお、O小学校には、警備士が休む場所(道具小屋)はあるし、他の警備士が行っている学校でもあるところが多いようだ。T小学校は、あまり警備士に気を使っていないのかもしれない。「それを指摘されているように思って、近田先生は不愉快になり怒り出した」というところか。
話は変わるが、副校長というのは、雑用係のような仕事ばかりで、一般教員よりも年収が100万くらい増えるがあまりなり手がいないらしい。
確かに、副校長の仕事は教員の仕事とはかなり違うところがある。委託業者などの外部の人間(われわれ警備員もそれに含まれる)との対応も、やってみると公務員同士とは勝手が違うところもあって、それなりに気を使って大変なのかもしれない。近田先生は、女性の教員や生徒のお母さんと話す時はとても楽しそうだが、私と話をするときは少し緊張しているようにも見えた。
近田先生も今頃、「なんで副校長なんかになったのだろうか。あんまり自分には向かないなあ」なんて、少し後悔しているかもしれない。と、恐縮なのだけど、大変勝手な推測をしてしまいたくなる。
フォークリフトの無免許運転
学校だけでなく、他の施設警備や工事現場などでも、「請負契約だが、現場に雇い主側の人間がいる」という場合がほとんどで、そして「どこまでが仕事なのか」ということは時々問題になる。コーンを並べたり、フェンスやバリケードを設置したり撤去したりするのは、もともと警備の仕事の中に含まれているので、問題になることはないが、いろいろと微妙なこともある。
研修では、「業務外行為の禁止」ということが言われるが、厳密にそれを守っている人はたぶんいないだろう。
工事現場などでは、簡単にそうじをしたりするのが事実上警備員の仕事となっているところも多い。これなどは、やったからといって事故につながる可能性はほとんどないので、やって問題になることはまずない。
だが、そうではないこともある。最近では、警備士が現場の作業員からフォークリフトの運転をやるように言われ、無免許で運転し、誤作動によりどっかを壊して弁償させられた。という事件があった。だれが弁償したのかまでは聞いていないが、会社が弁償したのかもしれない。その隊員はその現場ははずされたという話である。
これは、非常にわかりやすい極端なケースで、無免許でフォークリフトを運転するのは悪いことに決まっているので、別に微妙でもなんでもない。頼む方も引き受ける方も両方問題がある。
でも、もっと微妙な場合もある。
例えば、学校警備でもあることなのだが、道を聞かれた時にどう対応するか、という問題はいろいろな場面でよく出てくる。
警備員は警察官と違って、一般市民の税金から給与が支払われているのではなく、あくまでもお金を払う雇い主から言われたことをするのが仕事である。
例えば、動物園の警備だったら、「虎がどこにいる」とか、「出口やトイレなどがどこにある」とか、入園者の質問に答えるのが仕事の主要部分である。これは、動物園側がそういう役割を期待して警備会社にお金を出しているのだから、わかりやすい。質問に答えられるように、警備員一人ひとりに地図が配布され、どんな質問が多いか、事前にベテランの警備士から説明を受ける。
それでは、学校の前を通る学校と関係のない人が道を聞いてきた場合はどうか。警察官に似た制服を着ているので、警備員に聞きたくなるのもわかるような気もするが、それに答えるのは、本当は仕事には含まれてない。
でも、道を聞かれて丁寧に教える、ということは、警備員という仕事が世の中で認知されるためには、必要なことではある。だから、どんな場合にも絶対にやらなければならない仕事というわけではないが、もちろん答えられる場合は答えたがよいのだろう。
それ以上に細かく決まっていたり、慣習のようなものがあったりするわけではない。
※ 次の話→学校警備員をしていた頃 その12
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